肝臓の検査方法ってどんなもの?自覚症状がなければ放置していい?

2018/10/15

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

健康診断で、肝臓に何らかの異常を指摘される人は約8割といわれています。しかし、肝臓の疾患は自覚症状に乏しいものが多く、検査で異常を指摘されても実感がわかない人も少なくありません。
では、肝臓の検査方法とはどのようなものなのでしょうか?また、自覚症状がなければ、放っておいてもよいのでしょうか?

肝臓の検査方法ってどんなものがある?

肝臓の検査方法には、以下のようなものがあります。

  • 血液検査
  • 腹部超音波検査
  • CT検査
  • MRI検査

それぞれの項目について、詳しく見ていきましょう。

血液検査とは?

血液検査で肝機能をチェックする場合、「GOT(AST)」と「GPT(ALT)」の2つの値を主にチェックします。GOTはグルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ、GPTはグルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼという酵素で、いずれも通常は肝臓の細胞内にある酵素です。肝臓の細胞が壊れると血中に漏れ出てくるため、肝臓の細胞が破壊されていることがわかります

近年、GOTはAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)、GPTはALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)と名称が変えられたため、ASTやALTと表記する施設の方が多くなってきました。名称が変わっただけでどちらも同じ酵素を指しており、単位も同じものを使用しています。

GOT(AST)の正常値は10〜40IU/L、GPT(ALT)の正常値は5〜45IU/Lで、低い場合は特に問題はありません。健康診断で指摘されるのは100IU/Lぐらいからで、この場合はたいてい脂肪肝が指摘されます。また、まれに慢性肝炎や肝硬変が見つかることもあります。

ウイルス性の慢性肝炎では、100〜500IU/Lの数値が最も多く見られます。急性アルコール性肝炎や自己免疫性肝炎などの可能性もあります。ウイルス性の急性肝炎の極悪期には、500IU/L以上の数値が見られます。まれに1000IU/L以上の数値を示すこともあります。

ウイルス性肝炎の場合でも急性のもので、ウイルスを除いたのち正常値に戻れば問題はありませんが、ウイルス性肝炎が治りきらずに慢性化し、100〜500IU/Lの値が続いてしまう場合には医療機関での治療が必要です。

腹部超音波検査とは?

超音波検査(エコー検査)とは、体内に一定の振動数の超音波を送り、臓器に当たって反射する波をモニターに画像として表示して異常の有無を目視で確認する検査方法です。腹部にプローブという超音波を発生させる装置を体に軽く当てて移動させながらモニターで観察します。このとき、プローブにゼリーを塗布して体との間に隙間ができないようにします。

超音波検査では、肝炎や脂肪肝、肝硬変や肝腫瘍などの肝臓疾患を発見することができます

CT検査とは?

CTとは、コンピュータ断層撮影法の略です。体にX線を当て、臓器のX線の吸収率の差をコンピュータ処理することで、人体を輪切りにしたような画像を得ることができます。検査時間は短いため苦痛もほとんどなく、組織や骨などの内部構造を鮮明な画像で得ることができますが、安全の範囲内とはいえX線の被曝を受けるため、妊娠中または妊娠の可能性がある人には検査を行っていないところが多いです。

肝臓を観察するためのCT検査では、造影剤を用いて撮影することがあります。造影剤が腫瘍などの病変部位に吸収されることで、肝臓がんなどを診断することができます。

MRI検査とは?

MRIとは、磁気共鳴映像法の略です。磁気と電波を利用し、見たい断面を縦・横・斜めなど自由な角度で撮影して画像にすることができます。これは、MRI法が人体の大部分を占める水分の中の水素原子に働きかけることで体内を撮影する撮影法であることによります。磁気を利用しているため、入れ歯やペースメーカーを含め、金属類を身に着けて検査を受けることはできません。

MRIによる検査では、CTで見つけられなかった病変に気づくことができます。MRIでも造影剤を使って撮影を行うことがあり、CT同様、正常な細胞と腫瘍での吸収の差を利用して撮影を行います。

検査で異常が見つかった場合、考えられる病気は?

一般的に「肝機能障害」という場合、血液検査でGOT(AST)、GPT(ALT)の値が基準値を上回っている状態であることを指します。血液検査の項目でもお話したとおり、この両方の酵素が血中に多く検出されるということは、肝臓の細胞が破壊されていることを示します。また、AST/ALT比という、どちらがより高いのかも診断には重要な指標となります。

AST値<ALT値の場合
慢性肝炎の疑いが強い
AST値>ALT値の場合
肝硬変や肝がんの疑いが強い
AST値、ALT値どちらも数千IU/L以上の高値の場合
急性ウイルス性肝炎の疑いが強い
ASTのみが高値の場合
心筋梗塞など、肝臓以外に疾患がある疑いが強い

特に、AST値、ALT値のどちらも高い場合、ウイルス性急性肝炎である可能性が高くなり、早急に肝炎ウイルスの検査を行う必要があります。そうでなくても、検査でAST・ALT値の異常を指摘された場合は決して放置せず、医療機関で詳しい検査を受けましょう。

血液検査でγ-GTP値の異常を指摘されたら?

γ-GTP(γグルタミルトランスペプチダーゼ)は、肝臓の解毒作用に関係している酵素で、アルコールの解毒にも関わっています。つまり、γ-GTPの値の異常のほとんどは、アルコール性の脂肪肝に起因しています。この値が高い場合、脂肪肝のほかにもアルコール性肝炎や胆石症などを発症している可能性があります。

γ-GTPの正常値は男性で50IU/L、女性で32IU/Lです。この値を超えても、100IU/L以下であれば、飲酒を控えることですぐに正常値に戻すことができます。しかし、100IU/Lを超えた場合は脂肪肝が進行していると考えられ、医療機関で詳しい検査を受けることが望ましいです。

また、非アルコール性脂肪性肝炎という、飲酒の習慣がないのに脂肪肝が発症する場合にもこの数値が高くなります。そして、非アルコール性脂肪性肝炎は肝硬変や肝がんへと症状が進行していくため、アルコール性脂肪肝よりも注意が必要です。非アルコール性脂肪性肝炎の場合、γ-GTP値やAST・ALT値の上昇のほか、血小板の減少やフェリチン値という鉄の代謝を示す数値の上昇が見られることがあります。

自覚症状はないなら、放っておいていいんじゃないの?

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。これは、肝臓に何らかの異常が起こり、細胞が破壊されていても自覚症状に乏しいことによります。肝臓は非常に予備能力が高く、一部が破壊されても正常に機能することができてしまうのです。逆に言えば、症状が出るほどの状態であれば、病状はかなり進行していると考えることもできます。

そこで、健康診断での検査値が重要になってきます。自覚症状がなくても、検査で異常値が出ていれば、それは肝臓からのサインともいえます。検査で異常値が出ているのに放置しておいてしまうと、気づかない間に症状が進行し、肝硬変や肝がんなどの生命に危険を及ぼす疾患になってしまう危険性が高くなります

ですから、健康診断などで再検査や治療が必要と診断された場合、自覚症状がなくても医療機関で適切な治療を受けましょう。肝臓は再生力が高い臓器で、約70%を切除されても十分に機能することができるともいわれているため、病変を早期に発見して原因を取り除くことができれば、十分に日常生活に支障がないレベルまで回復することができます。

また、アルコールや脂肪肝による症状で比較的軽いものは、手術などの外科的療法をしなくても、生活習慣の指導を受けることで改善が見込めます。ウイルス性肝炎は、内科的な抗ウイルス療法を行うことになります。いずれも、早期発見によって病状の進行を食い止め、正常な状態に近づけることができます。

おわりに:検査での異常値は「沈黙の臓器」肝臓からのサイン

肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるほど、異常が起こってもなかなか自覚症状として察知することの難しい臓器です。ですから、検査での異常値は肝臓の疾患に気づく数少ないチャンスであると考えられます。

肝臓が発しているサインを見逃さず、自覚症状が出ていなくても、異常値があれば詳しく検査を行い、病変の早期発見と治療を行いましょう。

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