記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
うつ病の治療薬は、SSRIとSNRI、NaSSAなどがあり、その他にもさまざまな種類があります。この記事では、うつ病の治療薬「抗うつ薬」の効果や副作用をまとめています。正しい使い方や、授乳中のアドバイスなども紹介しているので参考にしてください。
うつ病治療によく使われる抗うつ薬は、以下の5種類に分類できます。
抗うつ薬は、うつ病の原因の1つといわれている神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の減少に働きかけることで、うつ症状を改善させる目的で使われています。
通常、神経伝達物質は神経細胞から分泌されて別の神経細胞に伝達されますが、この伝達がうまくいかないと、神経細胞上に取り残されてしまいます。
このまま放っておくと、余ったと判断された神経伝達物質は神経細胞に戻って取り込まれていきますが、このときに抗うつ薬が作用すると、この再取り込みを阻止できます。
抗うつ薬は、神経伝達物質の再取り込みを防止させることでうつ症状改善に必要な神経伝達物質の増加に貢献し、うつ病の改善に作用しているのです。
神経伝達物質に作用してうつ病の改善を助ける抗うつ薬ですが、他の神経系にも作用してしまうため、副作用が現れます。
代表的な副作用としては
などがあります。
また、自己判断で1回に服用する薬の量を増やしたり減らした入りすると、不安や焦り、衝動的になるなどの症状が出るケースがあることも報告されています。
抗うつ薬のなかには、副作用として太りやすくなる種類のものもあります。
特に、セロトニンは満腹中枢を刺激する作用があるため、セロトニンの取り込みを阻害するSSRIは満腹中枢への刺激が阻害されて食欲が増加することが知られています。
また、抗ヒスタミン効果のあるタイプの抗うつ薬もグレリンという摂食中枢を刺激するホルモンの放出が増えるため、食欲が増加します。
このように抗うつ薬はそれ自体が肥満を生じるのではなく、副作用として「食欲増大」が生じるものがあり、結果として太りやすくなることがあるのです。
抗うつ薬によって太らないようにするには、カロリーを抑えた食事を心がけ、適度な運動を行うことが効果的です。また、自分の体重を把握するために定期的に体重や腹囲を測るようにしましょう。
このような対策を行っても、体重増加が改善しない場合には抗うつ薬の変更も踏まえて主治医に相談するとよいでしょう。
抗うつ薬は母乳に移行しますが、安全性が高いため乳児への影響は少ないと考えられています。特に、広く用いられているSSRIは母乳への移行が極めて少なく、乳児が口にしたとしても微量などで心配する必要はありません。
しかし、クロザピンと呼ばれる種類の抗うつ薬は乳児に鎮静や無顆粒球症などの副作用を生じることが知られており、種類によっては授乳中に服用しない方がよいタイプのものもあります。授乳中の人は必ず医師と相談して薬を選ぶようにしましょう。
また、乳児への影響をより少なくするには、抗うつ薬の服用後3時間以上経過した後に授乳するなど、母乳中の薬剤濃度が低いタイミングで授乳するようにしましょう。
抗うつ薬は長期にわたって服用した後に突然服用を中止すると、吐き気やめまいなどの症状やうつ病の症状悪化が見られることがあります。
これを離脱症状と呼び、特にSSRIで生じやすいとされています。明確な発症メカニズムは解明されていませんが、抗うつ薬服用者の20%ほどに生じ、不快な症状や1~2週間で治まります。しかし、性欲減退やEDなどの長期的な症状を呈するとの報告もあり、離脱症状は可能な限り避けるべきであると考えられています。
離脱症状を起こさないようにするには、抗うつ薬を突然中止するのではなく、医師の指示に従って少しずつ量を減らし、体を慣らしていく必要があります。
抗うつ薬は、用法・容量を間違えると、重篤な副作用を引き起こすリスクがあります。
服用にあたっては、インターネットなどからの情報を鵜呑みにして自己判断することは絶対にしないでください。必ず医師から指示された用法、容量を守って使用し、薬の変更や増減は必ず医師の判断のみによって行い、薬に関して希望がある場合は、すぐに医師に相談しましょう。
よくわからない、依存性が高そうというイメージを持たれがちな抗うつ薬ですが、医師の指示を守って服用すれば、うつ病治療に効果があると考えられています。
一方で、用法や容量を守らなければ重篤な副作用のリスクもありますので、必ず医師の処方と指示に従って服用するようにしましょう。