心不全の治療の目的と詳細 ― 薬、手術、食事療法の違いとは?

2018/2/8 記事改定日: 2019/6/25
記事改定回数:3回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

心不全とは、何らかの原因で心臓のポンプ機能が正常に働かなくなる病気です。原因や病状によって、食事療法、薬物療法、手術療法のいずれか、もしくは複数の治療法が選択されます。この記事では、心不全の食事療法・薬物療法・手術療法について、その詳細と目的を解説しています。

心不全の原因と急性・慢性での治療の違い

心不全においては、心機能の低下により、血液や酸素を全身に送る力が弱まっています。そのため、運動時の息切れや動悸などの症状がみられます。加えて、息苦しさや足のむくみ、肝腫大、肝障害、腹水の貯留などの症状もみられることがあります。

心不全は、心筋梗塞や心筋症、心筋炎などにより、心臓の筋肉が障害されることによるものや、僧帽弁・大動脈弁などの心臓弁膜の機能低下による、心臓弁膜症などが原因で発症します。

急に発症する心不全を「急性心不全」と呼びます。また、慢性的な心機能の低下により、比較的安定しているものの継続的に症状のある心不全を「慢性心不全」といいます。

急性心不全の場合、その原因によってさまざまな治療が行われます。急性心不全の原因として最も多いのは、心筋梗塞などの冠動脈疾患(約3割)で、次いで弁膜症(約2割)、心筋症(約2割)です。

急性心不全の方は、医療機関で速やかな対応をしなければ命に関わる場合があります。原因や病状に応じて、薬物療法やカテーテル治療、手術療法が選択されます。

慢性心不全の治療も同様に、基本的には心臓の機能低下を招いた原因に対する治療が必要となります。高血圧や狭心症、過去の心筋梗塞、心筋症、弁膜症、過労、ストレスなどが主な原因として挙げられ、病状に応じて食事療法や薬物療法による治療がすすめられます。カテーテル治療や外科的手術が慢性心不全の改善に有効である場合もあります。

心不全の薬物療法

薬物療法では、強心薬や利尿薬、血管拡張薬を病状や症状に合わせて服用します。

強心薬
心臓の機能を高め、身体に送り出す血液量を増やす薬です。薬の過剰な摂取は、食欲不振や吐き気、視力障害や動悸などの副作用が起こる可能性があります。
利尿薬
尿を増やして体内から水を排出することで、むくみや呼吸困難を改善します。電解質異常(体内のイオンのバランスが崩れてしまう)や、脱水症などの副作用が生じることがあります。
血管拡張薬
心臓に張り巡らされた冠動脈の血流を改善させ、心臓自身の血流を改善させる目的で使用されます。摂取量が多すぎると脈が遅くなり、症状悪化をもたらす可能性があります。

いずれの薬においても、医師の指示通り服薬することが大切です。自己判断で服薬期間を短くすると、症状が悪化することもあります。

心不全の食事療法

薬物療法だけでなく、普段の食生活から心臓への負担を軽くすることができる場合があります。たとえば、塩分や水分量のコントロール、良質なたんぱく質の摂取、脂質の適度な摂取、体重の適正化、アルコールやコーヒーを控えるなどは、心臓の負担軽減につながるので、日常生活に取り入れていくことをおすすめします。

特に、塩分量の制限が重要とされています。新鮮な食材を使用したり、だしを有効活用することで塩分使用量を抑えたり、料理は適温で食べるようにするなど、塩分を控えても食事が楽しめるように工夫しましょう。

手術が必要な心不全の治療

弁置換術

心不全を引き起こす弁膜症のほとんどが、僧帽弁、もしくは大動脈弁の異常によるものです。いずれも心臓から全身に血液を送る際に、逆流が起こらないように働く「弁」ですが、この弁の出口が狭くなることで流れが悪くなったり、弁の構造が壊れて逆流するようになると、心臓が十分な血液を全身に送ることができなくなります。

薬物療法やカテーテル治療では治療が難しい場合、異常な弁を取り除き、人工的に作った人工弁を心臓に取り付ける手術を弁置換術と呼びます。リスクを伴う治療ですが、弁の働きが良くなることで、心不全が劇的に改善することもあります。

冠動脈バイパス術

心不全を引き起こす狭心症や心筋梗塞は、心臓に張り巡らされた冠動脈が血栓などで狭くなり、心臓の筋肉に十分な血液・酸素を送ることができなくなった状態です。心臓に十分な量の血液・酸素を送るため、カテーテル治療により狭くなった冠動脈を広げる処置を行うことがありますが、カテーテル治療による治療が難しい場合や、冠動脈の複数の部位が狭くなっているような患者さんは、冠動脈バイパス手術が行われることがあります。

この手術は、胸骨の裏の内胸動脈や腕に走る橈骨動脈を採取し、冠動脈の狭い部分を迂回するように接続します。すると、冠動脈の血流が改善し、心臓に十分な血液と酸素が供給されるようになります。心臓の状態がよくなり、心不全が改善される可能性があります。

心臓再同期療法(CRT)

心臓は心電図で示されるような電気の流れで効率よく動く事ができますが、心不全が悪化すると、心臓がいびつに肥大し、電気の流れも悪くなることがあります。すると、心臓が左右バラバラのタイミングで収縮するようになり、効率よく全身に血液を送ることができなくなる場合があります。カテーテルを用いて心臓の中に電極を埋め込み、左右の心臓が同じタイミングで収縮できるようにすることで、心不全が改善することがあります。これが心臓再同期療法(CRT)です。

しかし、適応となる患者さんの中でも約3割程度の方が無効である事も知られています。治療の適応については専門医の判断を要します。

植込み型除細動器(ICD)

心不全患者さんの死因として最も多いものの一つが、心室細動などの致命的な不整脈です。心室細動の発作時に、周りに救助者がいて、AEDによる電気ショックを受けることができれば救命できますが、常にこのような環境があるわけではありません。

致命的な不整脈を起こしうる心不全患者さんには、突然死を予防するため、カテーテル治療により心臓に電極を埋め込み、前胸部に除細動器(ICD)を埋め込むことがあります。致命的な不整脈が生じると、埋め込んだ除細動器が自己判断で電気ショックを行い、AEDなしで蘇生できる場合があります。

しかし、除細動器が判断を誤り不整脈のないときにショックをかけてしまう事もあり、患者さんに害を為すこともあります。まだまだ改善の余地がある点も議論されています。こちらも治療の適応については専門医の判断を要します。

心不全の予後について

心不全の治療後の予後は、心不全の重症度や全身の状態によって大きく異なります。軽度な息切れや動悸、呼吸苦などがあるものの日常生活に大きな支障を来たさない程度の軽症な場合には、適切な治療を行うことで心機能を維持し、良好な予後が期待できます。

一方、安静にしていないと強い症状が出るような重症な心不全では、適切な治療を行っても年間で20~30%が死亡するとのデータもあります。また、高齢者の場合では心不全治療のために入院を繰り返したり、安静にしている時間が増えることで筋力や認知機能の低下が見られるようになり、全身状態が悪化する原因にもなります。

このため、心不全は発症したとしても軽症の段階で治療を開始して重症化を予防することが大切なのです。

おわりに:心不全の治療はその人の状態にあった方法で進められる。医師と相談しながら治療計画を!

心不全を発症すると、最悪の場合死に至る可能性があります。原因となる病気を持っていたり、心不全になりやすい環境で過ごしている場合は、早めに対処し心不全の発症を予防しましょう。食事療法と薬物療法、手術療法のいずれも重要な治療であり、どのように治療を進めていくかには個人差があります。必ず医師と相談しながら治療計画をたてていきましょう。

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