胸部大動脈瘤の手術方法とは!?手術が適応になる条件とは?

2018/2/20 記事改定日: 2018/12/12
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

胸部大動脈瘤とは、胸の大動脈にできる動脈瘤です。小さいうちは自覚症状がありませんが、破裂すると命に危険が及ぶ可能性があります。
この記事では。胸部動脈瘤の治療の流れと手術のリスク、早期発見のポイントについて解説しています。

胸部大動脈瘤はどんな病気なの?

大動脈とは、人間の身体で最も太い血管で、胸部大動脈瘤とは、胸部にある大動脈がなんらかの原因で膨らんでしまった状態になる大動脈瘤の一種です。

大動脈は、心臓から全身へ血液を送るため常に高い圧力がかかっていますが、動脈硬化などで血管がもろくなると、その部分の血管が徐々にふくらみ「こぶ」ができ、大動脈瘤になっていきます。

一般的に直径が通常の1.5倍を超えた場合に大動脈瘤とみなされ、胸部大動脈の場合は通常の太さ3センチの1.5倍、4.5センチを超えて膨らんだ場合に胸部大動脈瘤と診断されます。

大動脈瘤には、動脈の壁は保たれている真性大動脈瘤と、壁の一部が避けて血の通り道が2つあるような状態になる解離性大動脈瘤があります。
原因としては動脈硬化が最も多く、その他梅毒などの感染症、血管炎などの病気、ケガ、生まれつき血管の壁が弱いことなども要因となります。

胸部大動脈瘤の症状の特徴

胸部大動脈瘤のおよそ6割は、破裂するまで症状がありません。そのため、自分では気づかず、健康診断や他の病気の検査でのCTやMRI、エコー検査など際に発見されることも少なくありません。

自覚症状が出てくるのは、胸部大動脈瘤が大きくなって周囲の臓器を圧迫するようになってからです。
声がかれる、食べ物などを飲み込みにくくなるという症状が出てきて、胸や背中の痛みや、淡に血液が混ざる、息苦しいなどの症状が出てくることもあります。
これらの症状が現れた場合、大動脈瘤の破裂が差し迫っている可能性があるため、早急に病院を受診し検査してもらいましょう。

胸部大動脈が大きくなり破裂すると、激しい痛みが起こり、喀血や吐血を引き起こすこともあります。胸の中へ出血するとショック状態となり命に係わる状態に陥るおそれがあります。

胸部大動脈瘤の治療はどうやって進められるの?

大動脈瘤は、薬によって小さくすることはできません。
そのため、胸部大動脈瘤が破裂すると命にかかわるため、まだこぶが小さく破裂しにくい場合は血圧を下げる薬などを服用し、破裂を予防します。

手術適応の条件

胸部大動脈瘤が大きくなったり、破裂しやすい形状の場合は手術を行います。

手術のタイミングは、大動脈瘤の大きさや形状、拡大速度、年齢、全身状態などを総合的に見て判断されます。大きさは最も太い箇所が5.5㎝を超えている場合は破裂の危険性が高いとみなされ手術が選択されることが多いです。

また、半年で5ミリ以上拡大した場合や、形が嚢状である場合も手術がすすめられることが多いといわれています。その他、ケガが原因となる仮性大動脈瘤は、発見された時点で手術が検討されます。

手術には、太くなった血管を人工血管に置き換える「人工血管置換術」と、大動脈瘤の中に人工血管を入れて破裂を予防する「ステントグラフト治療」があります。

人工血管置換術

人工血管置換術は、胸部を切開して大動脈瘤の部分を取り除き、その部分を人工血管で補います。人工心肺装置を使用し、心臓を一時的に停止して手術を行うため、術後に脳梗塞や脊髄麻痺などの合併症を引き起こすリスクもあります。また、破裂が起こってからの緊急手術では死亡率が19.4%から50%と非常に高くなります。

ステントグラフト治療

ステントグラフト治療では、細い筒の中に入ったステントグラフトという特殊な人工血管を、足の付け根にある太腿動脈から大動脈瘤の部分まで挿入し、大動脈瘤の内側でステントグラフトを拡張させる治療法です。大動脈瘤を切除せず、かかる圧力を減らすことで破裂を予防します。

危険性の低い治療法として注目されていますが、合併症リスクは外科手術と同様にあるほか、外科手術に比べて再発の確立が高いなどの問題点もあります。

胸部大動脈瘤の手術の後遺症や合併症のリスク

胸部大動脈瘤の手術は、一時的に心臓を止めて人工心肺を使用して行われます。胸骨を縦に切開して胸部を大きく開いて行われるため、身体への負担が大きく様々な後遺症や合併症を生じるリスクがあります。
手術による合併症としては、術中に脳への血流が減少することによる脳梗塞や人工心肺を使用することによる脳出血や腎機能障害などが挙げられます。また、術後に細菌感染を引き起こして心膜炎などを発症することも少なくありません。

これらの合併症によって、運動・感覚麻痺や腎不全などの後遺症をのこすこともあります。
胸部大動脈瘤は破裂すると致死率が高く、破裂のリスクが高いと考えられる場合には手術が勧められていますが、手術によるリスクも大きいです。術前に、手術の必要性やリスクなどをしっかり担当医と話し合うようにしましょう。

手術後の生活の注意点

胸部大動脈瘤の手術後は、血栓ができやすくなるため、血が固まりにくくする薬剤を飲み続ける必要があります。また、動脈硬化の原因となる高血圧や糖尿病、高脂血症などを放置すると、腹部など別の部位に大動脈瘤ができる可能性があるため、確実な治療を行っていくことが大切です。

また、術後は心機能の低下が見られることもありますので、運動や食事などに制限がかかることもあります。術後の生活の注意点は、それぞれの状態によって異なりますので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。

おわりに:胸部動脈瘤は早期の発見で破裂を予防することが重要!

胸部大動脈瘤は破裂してしまうと命にもかかわる大きな病気です。
手術にはリスクが伴いますし、再発の可能性もあります。
手術が必要にならないようにするためにも、早期発見が大切です。自覚症状がほとんどないので、発見には定期健診などを怠らないことが大切になってきます。
また、動脈硬化が原因となることが多いことから、食生活など日ごろの生活習慣に気をつけましょう。

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