記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/2/27 記事改定日: 2020/4/10
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
生理前にイライラや激しい抑うつ症状が見られる場合「PMDD(月経前不快気分障害)」の可能性があります。今回の記事ではPMDDの症状や治療法、PMSとの違いについて解説していきます。
PMDD(月経前不快気分障害)とは、月経が始まる1〜2週間前くらいから、始まった直後くらいまでの期間に発生する日常生活に支障をきたすほどの気分障害のことです。
おもな症状として
などがあります。
気分障害のなかでも拒絶や批判に対する反応が強くなったり、理由のない強い焦燥感があったり、強い絶望感を感じたりするのがPMDDの特徴です。
以前は、月経前に気分が落ち込んだりイライラしたりする症状が現れた場合はPMS(月経前症候群)と診断されていました。
PMDDとPMSには、以下のような違いがあります。
PMSとPMDDの厳密な区別は難しい場合もありますが、精神障害による症状が精神科での治療が必要なくらい重症の場合は、PMDDと判断されます。
PMDDの原因はまだ解明されていません。いまのところは環境的な要因や女性ホルモンの変動など、さまざまな要因によるものと推測されています。
月経前には、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが大量に分泌されることで、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質を変化させることが分かっていますが、これが原因で抑うつや不安症などの精神障害が引き起こされると考えられています。
PMDDでは月経の一週間ほど前から次のような症状が現れます。当てはまるものが多い場合は、産婦人科や心療内科などの専門の医療機関を受診して診察を受けましょう。
PMDDは、産婦人科だけでなく精神科や心療内科で治療をすることになります。治療法は、薬物療法と、認知行動療法やカウンセリングの2種類に分けられます。
薬物療法においては、低用量ピルや超低用量ピルが有効な場合があります。ピルを服用しただけで症状が改善しない場合には、漢方や抗うつ薬、安定剤を使用する場合もあります。特に、抑うつやイライラの症状が強い場合は抗うつ薬が有効な場合が多いです。
認知行動療法は精神療法の一種で、医師や心理士などとカウンセリングを重ねることで、自分が抱えている誤った感情や感覚を正すよう導く治療です。
治療の効果には個人差がありますが、PMDDやPMSの諸症状に対する恐怖によって引き起こされる様々な症状を改善していく効果が期待されています。
PMDDの発症メカニズムは明確に解明されていない部分も多く、確実に予防できる方法は分かっていないのが現状です。
しかし、PMDDはストレスや疲れなど精神的な不調が続くと発症・悪化しやすいといわれています。PMDDに悩んでいる人は、日頃から規則正しい生活を心がけ、休養や睡眠をしっかりとって精神的にゆとりのある生活を送るようにしましょう。
また、ピルを服用してホルモンバランスを安定させると、PMDDの発症を予防できることがあります。生活改善をしても症状が良くならない場合は、できるだけ早めに婦人科で相談するようにしましょう。
PMDDは、月経前に日常生活に支障をきたすほどの精神障害が起きてしまう病気です。原因はまだ解明されていませんが、月経前の女性ホルモンの変化が影響していると考えられています。治療には専門家のサポートが必要ですので、一人で抱え込まず病院を受診するようにしましょう。