記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
肝炎としてはC型肝炎やB型肝炎が比較的有名ですが、この他にも急性肝炎には、A型、D型、E型も存在します。これらの特徴や原因などをご紹介します。
A型急性肝炎は、A型肝炎ウイルスに感染することで起こる病気です。慢性化することはなく、急性ウイルス性肝炎の中でも最も多いタイプと言われています。
A型急性肝炎は、ウイルスに感染してから1カ月前後の潜伏期間の後、急な発熱が出る人が多いです。続いて黄疸、食欲不振、倦怠感、吐き気などの急性肝炎の症状がみられます。また、非常に稀ではありますが、高度の肝機能不全と意識障害をもたらす劇症肝炎を引き起こすことがあり、注意が必要です。
A型急性肝炎の原因は経口感染で、流行地域への渡航や、汚染された生牡蠣や貝の生食、汚染された水や野菜を食べることで起こります。日本ではそれほど流行していませんが、時には唾液や糞尿を介して集団感染が起きることもあります。
予防するためには手洗いを徹底し、生水を避けるようにしましょう。また、A型急性肝炎のワクチンもあります。治療の場合は2週間ほどの入院が必要になりますが、点滴と安静にすることで回復する場合がほとんどです。
D型急性肝炎は、D型肝炎ウイルスに感染することで起こりますが、単独で発症することはありません。なぜなら、D型急性肝炎の原因となるD型肝炎ウイルスが増殖するためには、B型肝炎ウイルスが必要だからです。そのため、B型肝炎ウイルスの感染者が数%の確率でD型急性肝炎も発症することになります。
D型急性肝炎は単独での症状はありませんが、B型肝炎の重症化や劇症化に関与していることが分かっています。具体的には、食欲不振や嘔吐といった肝炎の症状に加えて、右上腹部痛、上腹部膨満感などが起こるようになります。
血液や唾液などの体液を介して感染するため、性行為で感染する人が多いです。他にも医療従事者による針刺し事故や入れ墨などで感染することがあります。
D型急性肝炎に感染すると、B型肝炎の症状が進んでしまう恐れがあります。B型肝炎患者は、D型急性肝炎ウイルスに感染しないように特に注意が必要です。
E型急性肝炎は、E型肝炎ウイルスが原因で起こります。
経口感染するウイルスで、上下水道が未整備な地域などで飲料水を介して集団的に発生します。E型肝炎ウイルスはブタ、イノシシ、シカなどの野生動物からも検出されており、人間以外もE型急性肝炎に感染することが分かっています。増殖したウイルスは糞便を通して広がるので、流行地では生水などは避けて、特に上記の動物の肉を加熱することが予防につながります。基本的には東南アジア、北アフリカ、メキシコなどの熱帯地域で発生することが多いですが、日本では渡航歴のない人が発症することもあります。
E型急性肝炎になると、2~9週間の潜伏期間の後、黄疸や食欲不振といった症状が見られます。E型急性肝炎は慢性化することはないのが特徴で、胆汁うっ滞を起こしやすいです。
治療としては、入院して安静の状態を保ったまま、点滴を続けることで回復します。
A型、D型、E型急性肝炎は、いずれも感染ルートがはっきりわかっている分、予防もしやすい病気です。特に海外旅行では食べ物に気をつけ、これらの肝炎ウイルスに感染しないようにしましょう。