B型肝炎の原因「B型肝炎ウイルス」の特徴とは!?予防法はある?

2018/2/22 記事改定日: 2018/5/11
記事改定回数:1回

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスへの感染が原因で発症します。では、このB型肝炎ウイルスはどういった経路で感染するのでしょうか?感染を防ぐにはどうすればいいのでしょうか?
リスクを避けるための参考にしてください。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

B型肝炎の原因はウイルス?どんな症状が現れるの?

B型肝炎は、B型肝炎ウイルスの感染で起こる肝臓の病気です。
初めてB型肝炎ウイルスに感染すると急性B型肝炎を引き起こし、すでにB型肝炎ウイルスに感染している人は慢性肝炎に移行することがあります。

主な症状は、全身の倦怠感、食欲不振、悪心や嘔吐です。急性B型肝炎の場合は、黄疸などもよくみられる症状です。また、肝臓の腫大がみられることもあります。

倦怠感や黄疸などは自覚症状として気づきやすいですが、中には不顕性感染という目立つ症状が何もあらわれないケースもあるので注意が必要です。
慢性肝炎の場合は特にこの傾向が強く、自覚症状がない患者さんが多るといわれています。

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど痛みなどを感じにくい部位です。放置することで病気が進行して、肝硬変や肝臓がんへ進展する場合があるので、自覚症状がなくても定期的に病院を受診し、肝臓の状態を把握することが大切です。

B型肝炎の劇症化

B型肝炎ウイルスに感染すると、20~30%の人は急性肝炎を起こし、まれに劇症肝炎に進行することがあります。劇症肝炎の発症率は1~2%とされていますが、劇症肝炎は非常に重篤な病態であり発症すると半数の人は死に至るとされています。

劇症肝炎の症状は、発熱や全身倦怠感、黄疸などの肝障害によって生じる一般的な全身症状が現れた後に、急激な肝不全を引き起こし、出血傾向や腹水貯留、むくみなどを生じ、最終的には意識障害や脳浮腫による呼吸停止などの重篤な症状へと移行していきます。
劇症肝炎への進行を食い止めるには、急性肝炎の段階で適切な治療を行うことが重要です。発熱や全身倦怠感、黄疸などがある場合には放置せずに早めに病院を受診しましょう。

B型肝炎ウイルスの感染経路について

B型肝炎ウイルスは汚染された食物や水などで感染することはありません。感染源となるのは血液や血液製剤、精液などの体液の接触です。ですから、B型肝炎ウイルスに感染している人との性交渉や、血液が付着した注射針の共有などが主な感染経路になります。医療関係者は、注射針や血の付着したガーゼなどの取り扱いに注意が必要です。

また、日本ではB型肝炎ウイルス抗体スクリーニングが行われていますが、この検査をしていない血液や血液製剤の輸血などによっても感染は起こります。ただ、B型肝炎ウイルス感染者との握手や軽いキス、食器の共有や入浴などでは感染しません。キスの習慣のない日本では、日常生活において感染する危険性はほとんどないといってもいいでしょう。

母子感染のリスク

B型肝炎ウイルスは出産時に児が母体の血液に触れることで感染することもあります。
特に体内のウイルス量が多いHBe抗原が陽性の妊婦から生まれた児は約95%以上がB型肝炎ウイルスに感染しているといわれており、妊婦がB型肝炎ウイルスに感染している場合には出生後すぐに適切な処置を行い、子供への感染を防ぐ必要があります
B型肝炎ウイルスに感染してしまった子供がすぐに肝障害などの症状を起こすことはまれですが、感染が持続した状態となり慢性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと移行する恐れがあります。

B型肝炎ウイルスへの感染を防ぐ方法とは?

B型肝炎ウイルスの感染を防ぐためには、血液に触らないことが大切です。他人の血液に触れる機会の多い医療関係者はあらかじめ予防接種を受け、人の血液に触るときはゴム手袋を着用するなど、直接触らないことを徹底しましょう。

そして、カミソリや歯ブラシなど日常で使うものの中には、血液が付着している可能性のあるものがたくさんあります。これらは共有せず、自分専用のものを使うようにすることが、自分が感染しないだけでなく、感染を広げないためにも重要です。

性交渉の際はコンドームを使用するのも忘れないようにしてください。また、これは法律でも禁止されていることですが、注射器や注射針を共用しての注射は絶対にやめてください。

母子感染を予防するには

B型肝炎ウイルスに感染している妊婦が出産した場合には、出生後12時間以内に児にB型肝炎免疫グロブリンとHBワクチンを接種することで90%以上が感染を予防できるとされています。その後、生後1か月後と6か月後にもHBワクチンを接種します。

B型肝炎の予防接種の必要性 ― 大人も受けた方がいいの?

B型肝炎ウイルスは血液や体液によって感染するもので、成人の場合では性行為による感染が最も多いと言われています。
しかし、特定のパートナーだけとしか性行為を行わず、人の血液や体液に触れる機会の多い医療従事者や介護職員以外の人ではまず感染する機会はないと考えてよいでしょう

医療従事者や介護職員、パートナーや家族にB型肝炎ウイルスの感染者がいる人、性産業従事者は予防接種をできるだけ受けた方が良いですが、成人の予防接種は公費負担とならず自費で行うこととなりますので、三回の接種で2万円程度の費用がかかります。

おわりに:血液や体液に触れないよう、日常的に注意し、なるべく予防接種を受けておこう

B型肝炎ウイルスは、主に他人の血液や体液を通じて感染します。予防のためには日頃から、血液が付着している恐れのあるものは共有しない、性行為の際はコンドームを必ずつけるといったことを徹底することが大切です。
B型肝炎ウイルスは感染力が強く、日常的な接触でも感染する可能性がないわけではありません。大人のB型肝炎予防接種は自費になりますが、なるべく受けるようにすることをおすすめします。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

B型肝炎(21) 嘔吐(92) 黄疸(26) 性行為(27) 母子感染(18) 急性肝炎(10) 慢性肝炎(8) 食欲不振(28) 倦怠感(27) 輸血(3) B型肝炎ウイルス(2)