中絶手術は妊娠初期のいつまでに行なうべき?

2017/3/21 記事改定日: 2018/3/19
記事改定回数:3回

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

望まない妊娠をした場合や母体の健康上の理由から出産が難しい場合には、中絶手術という選択肢があります。
この記事では、中絶手術を行うのに適した時期や手術の流れをお伝えします。

中絶手術はいつまでに行うべきなの?

人工妊娠中絶ができる期間は母体保護法で定められていて、その期間は最終月経初日を妊娠0週1日として計算して「妊娠21週6日」までとされています。
しかし、中絶手術を行う時期は早いほど良いというわけではありません。
個人差はありますが、妊娠4~5週目までは子宮頚管が固いことが多くて手術操作が難しくなるため、妊娠6週~9週までが適切な時期であるといわれます。妊娠10週を超えると胎児が成長しているため、母体への負担とリスクが高くなります。

また、妊娠13週以降では通常の中絶手術ではなく入院して薬剤で陣痛を起こすという出産に近いような方法で中絶する必要があります。手術を行う時期については担当の医師にきちんと確認してください。

中絶手術の種類

中絶手術には「ソウハ法」と「吸引法」という2種類の方法があります。
手術方法によって成功率に差はありませんが、日本では伝統的に「ソウハ法」を行う医師が多いです。

ソウハ法

特殊なハサミ状器具(胎盤鋏子)を用いて、手で子宮から内容物を取り出す方法です。
ソウハ法は日本では一般的に行われる方法ですが、子宮の筋肉に傷をつけてしまうため癒着胎盤(分娩の際に胎盤が剥がれにくくなる)や子宮内の癒着による不妊につながる可能性が考えられるため、海外では敬遠される傾向にあります。また、母体に子宮筋腫や子宮の変形がある場合は手術に時間がかかる可能性があります。

吸引法

陰圧のかかる金属やプラスチックの棒を子宮内に入れ、吸引をかけることで内容物を吸い出す方法です。
先述のように子宮筋層に傷をつけづらいことがメリットであり、慣れればソウハ法と同等の成績で手術を施行することができます。しかし、日本では今現在も行われている施設はそう多くありません。

中絶手術に使われる麻酔について

中絶手術には静脈麻酔が使用されることが多いですが、麻酔科医のいる病院とそうでない病院では使用される麻酔の種類や投与方法が異なります。
(※使用される麻酔薬は、患者の体質やアレルギーの有無を診て決定されます)
静脈麻酔は点滴によって鎮痛薬や鎮静剤を注入されることで、完全に意識を失うことはないもののうとうとと眠って居る間に手術を施行する、小手術に適した麻酔法です。

専門の麻酔科医がいない産婦人科の場合

どの麻酔薬を使うかは医師の判断によって異なりますが、一般的には鎮痛剤である「ペンタゾジン」と鎮静剤の「ジアゼパム、ミダゾラム」の2種類の麻酔薬が選ばれます。

麻酔科医がいる産婦人科の場合

専門の麻酔科医が投与する場合は、同じ静脈麻酔でもより短時間で身体から排出され、強力な催眠作用がある「プロポフォール」や、より鎮痛作用の強い「フェンタニル」という麻酔薬を使うこともあります。これには手術後の目覚めも早く、手術後の鎮痛効果も期待できるというメリットがあります。

中絶手術はどのような流れで行われるの?

ここでは一般的な中絶手術の流れと手術後の注意点をご紹介します。
(※手術の流れは医師の判断や母体や胎児の状態によって異なるため、今回ご紹介した内容がすべてのケースに適応されるわけではありません)

〈妊娠検査、手術前処置〉

まずは尿検査や超音波検査などで、妊娠をしているかどうかの診断と正確な妊娠週数を調べます。その後、手術日を決定して術前検査(採血)や手術の説明が行われます。
場合によっては手術前日に子宮への負担を少なくするために子宮口を広げる術前処置(細い棒のような医療機器を子宮口に入れる。一晩おくことで吸水し棒が太くなる)を行うことがあります。
ラミナリア挿入後は入浴はできないので注意してください。

〈中絶手術当日〉

当日は絶食かつ飲み物も手術の数時間前から避けるように指示されることが多いです。
手術当日に病院に行く場合は手術の時間に合わせて病院に向かいましょう。

〈手術後〉

手術後には妊娠組織の遺残などがないかを確認するために再診が行われます。
子宮収縮によって痛みが生じることがあるので、痛みがある場合は医師に伝えて痛み止めを処方してもらうようにしましょう。
また、再診の後に激しい痛みや発熱があった場合はすぐに医師に連絡して病院を受診してください。

番外編:緊急避妊薬「モーニングアフターピル」について

モーニングアフターピルは避妊薬の種類に応じて、避妊していないセックスを行った後、72時間または最大120時間の間に医師に相談したうえで服用する緊急避妊薬です(※セックス前にモーニングアフターピルを服用しても妊娠を防ぐことはできません)。

これは日本では未承認の中絶薬として知られているミフェプリストン(商品名:Mifeprex®)とは作用が異なります。
ミフェプリストンは妊娠の初期の週に妊娠を終わらせるために服用されますが、それに対して緊急避妊のために使用されるモーニングアフターピルは、受精卵が子宮の壁に着床してしまうと妊娠を止めることができません。

そのため、妊娠を予防したい場合は避妊していないセックスの後、できるだけ早く服用してください。
ほとんどのものは1回1錠の単回投与で十分ですが、2回の投与(1回目に飲んだ12時間後に2回目の薬を投与する)が必要なものもあるといわれています。
毎日内服するタイプの避妊薬を大量に服用することで緊急避妊する方法もありますが、緊急避妊薬と比較して効果が劣るうえ、より多くの副作用を引き起こす傾向があるので自己判断でそのような使い方をすることはやめ、必ず医師に相談してください。
また、緊急避妊薬で100%妊娠を防げるとは限りません。
内服することで月経周期がずれることはありますが、予定日を1週間以上過ぎても月経が来ない場合は妊娠の可能性がありますから、妊娠の有無を確認したり、心配な場合は必ず病院を受診するようにしましょう。

※妊娠していることが分かっている場合は緊急避妊薬を使用しないでください。
また、授乳中の場合はウリプリストールアセテートを含むピルを使用しないことを推奨します。

おわりに:望まない妊娠に気づいたら、早めに妊娠検査を受けよう

人工妊娠中絶ができる期間は、最終月経初日を妊娠0週0日として計算して「妊娠21週6日」までと母体保護法で定められています。
できるだけ母体に負担の少ないタイミングで中絶手術を検査を受けるためにも、早めに妊娠検査を受けて妊娠の有無を確認することが大切です。

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