インフルエンザの治療法とは!?子供や妊婦は方法が違うの?

2018/4/23 記事改定日: 2018/10/30
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

毎年冬に流行するインフルエンザですが、治療法としては、どんな選択肢があるのでしょうか?子供や妊婦の場合、治療法は違うのでしょうか?以降で詳しく解説していきます。

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インフルエンザの早期治療のため、症状の特徴を理解しておこう!

インフルエンザと風邪はどこが違うのか、よくわからないという方は少なくないようですが、風邪は、何らかのウイルスによって、鼻や喉の炎症が起こるような様々な病気をまとめているグループ名のようなものです。一部の症状だけでみると、インフルエンザも風邪のひとつと言えなくもありません。

しかし、インフルエンザには強い感染力と、積極的な治療を行う必要のある激しい症状がみられることがあり、原因も明らかであることから、別の病気として扱われています。

インフルエンザは、インフルエンザウイルスが原因であると明らかになっています。また、感染力は非常に強く、飛沫感染や接触感染で急激に広がります。重症化する可能性があり、肺炎や脳炎を合併することもあり、ときには命に関わることもあります。特に基礎疾患のある人や高齢者での死亡率は高くなります。

B型インフルエンザは、微熱しか出ないこともある!?

インフルエンザは、鼻水や喉の痛みから徐々に症状が悪化していくような、いわゆる風邪とは異なり、急な悪寒と高熱、関節や筋肉の傷みが特徴的とされていました。しかし、近年では微熱であったり、腹痛や下痢が主な症状であっても、インフルエンザであったという事例が報告されています。

では、インフルエンザであるか、異なるかはどのように見分けたら良いのでしょうか?--結論としては、「検査をしないとわからない」のです。

インフルエンザが流行している時期や、家族や同僚、友達といった身の回りにインフルエンザに感染した人がいるときに風邪のような症状があるならば、インフルエンザかもしれないと疑ってみましょう。早めの受診と治療の開始で、回復も早くなると考えられます。

インフルエンザの治療方法

インフルエンザの治療方法は、大きくわけると3つの選択肢があります。

抗ウイルス薬を飲む

インフルエンザには、ウイルスに対して効果があると現在承認をされている薬があります。たとえば、「タミフル®」や「リレンザ®」は一度は耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。抗インフルエンザ薬は発病から48時間以内に服用することで十分な効果が得られるとされているため、インフルエンザを疑ったら早めに受診しウイルス検査を受けることが必要です。また、どの承認薬もそれぞれ適切な用法や用量があります。医師の指示のもとで服用することが大切です。

症状緩和のための薬を飲む

発熱や頭痛や鼻水、咳など現れている症状に対しての薬を飲むことです。ただし、こういった症状は人間の身体がウイルスと闘っている免疫反応でもありますから、無理に症状を抑え込むことが良いとは限りません。インフルエンザは重症化する可能性もありますから、自己判断で服薬をせず病院を受診し、医師の指示のもとで服用をしましょう。

ウイルスが活動しづらい環境で療養する

インフルエンザの回復には、十分な休養が必要です。また感染の拡大を防ぐためにも、外出は避けましょう。インフルエンザウイルスは、寒さに強く乾燥を好みます。療養する部屋では加湿器などを用いましょう。また、発熱と発汗にともなう脱水症状にも注意が必要です。経口補水液などで水分の補給が大切です。

入院治療が必要な状態は?

インフルエンザの治療は、多くの人は外来で受診をし、自宅で療養することになるでしょう。しかし、中には、入院が必要になるほどの重篤な症状の人もいます。

  • 人工呼吸管理などの全身管理が必要
  • 肺炎などによる呼吸状態の悪化
  • 心不全の併発
  • 意識障害
  • 臓器障害
  • 著しい脱水

以上のように、インフルエンザの主症状の他にさまざまな症状が併発し、生命の危険があると判断された場合は、入院して継続的な治療が行われる可能性があります。

子供のインフルエンザの治療

子供のインフルエンザの治療にも、タミフル®、リレンザ®、イナビル®などの抗ウイルス薬が用いられます。どの薬を用いるかについては、年齢や体格、状態などによって、医師が見極めて処方します。タミフルは0歳から処方される薬ですが、10代に限ってはリレンザ®やイナビル®といった吸入薬の処方が優先されます。

薬で異常行動は起こらない?

タミフル®が10代に使用されない点については理由があります。過去にインフルエンザに感染しタミフル®を服用していた10代のお子さんに、飛び降りなどの異常行動がみられたという報告があったからです。ただ、薬を服用していないケースでも異常行動が報告されており、タミフル®が明らかな要因かどうかは不明です。

現在は予防的措置として、10代の患者には別の抗ウイルス薬が優先されると共に、療養中は状態を見守ることが求められています。ただし、合併症や既往歴などを踏まえて、タミフル®を処方をしないことによるリスクが高いと判断された場合は、処方される可能性もあります。

学校や保育園はいつまで休ませればいい?

インフルエンザは、順調に回復をすると2〜3日で熱が下がります。しかし、熱が下がったからといって、ウイルスがいなくなったわけではなく、感染力も持っています。そのため、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで登校しないこと」としています。たとえ1日で熱が下がっても、発症した日から5日は外出はできません。また、もし5日間熱が続いたとしたら、さらに2〜3日は外出をしない、ということです。集団での感染拡大を防ぐためには大切なことです。

妊娠中にインフルエンザの治療薬を使ってもいいの?

妊娠中であっても、タミフル®やリレンザ®の処方は行われます。ただし、妊娠初期にタミフル®を服用した母体から、先天異常のある赤ちゃんが生まれる確率についての調査報告があります。その結果では、タミフル®を服用した母体から先天異常の赤ちゃんが生まれる確率は、出産全体の中で先天異常の赤ちゃんが生まれる確率と比べて低くなっています。

抗ウイルス薬の使用や予防接種についても、心配になる方もいるでしょう。まずリレンザ®は吸入して部分的に作用するため、母体の血液中にはほとんど移りません。また日本で予防接種に用いられるワクチンは生ワクチンではありません。そのため、一般的にどの妊娠期においてもほぼ安全であるとされています。

授乳中は大丈夫?

もし母体がインフルエンザになり抗インフルエンザ薬を処方されたら、赤ちゃんへの授乳を続けるかどうか迷ってしまう人もいるでしょう。しかし、抗インフルエンザ薬は母乳に移行するとしてもごくわずかです。吸入タイプのリレンザ®やイナビル®は、吸入後局所的に作用し、血液中にはほとんど移りません。そのため、授乳中のお母さんに処方される薬として適していると言われています。またタミフル®も、血中に含まれる濃度はごくわずかで、赤ちゃんへの影響はほとんどないとされています。

インフルエンザの新薬「ゾフルーザ®」について

ゾフルーザ®とは、2018年3月に発売されたインフルエンザの新薬です。これまでの抗インフルエンザ薬は発症後48時間以内に使用を開始し、5日ほど使用を続ける必要がありました。しかし、ゾフルーザ®は一回服用するのみでよくなったことで、飲み忘れなどを防ぐことができるようになったのです。

これまでの抗インフルエンザ薬は、ノイラミニダーゼ阻害薬と呼ばれるタイプの薬剤であり、インフルエンザウイルスが人の細胞内に侵入し、細胞内で増殖を行って体外へ排出される段階をブロックする作用がありました。しかし、ゾフルーザ®は体内に侵入したインフルエンザウイルスの増殖自体を阻害する作用があります。このため、ゾフルーザ®は従来の抗インフルエンザ薬よりも症状が消失するまでの時間が短く、一度の服用でしっかりとインフルエンザの増殖を抑えることが可能なのです。

ただし、抗インフルエンザ薬は小児を中心に、使用すると異常行動が現れるとの報告もあり、ゾフルーザ®を始めて服用する場合でも、必ず周囲に誰かがいる状態であることが望ましいです。また、蕁麻疹や呼吸苦などのアレルギー症状が現れた場合には速やかに病院を受診するようにしましょう。

おわりに:インフルエンザかも?と思ったら早期検査&治療を

毎年のように流行するインフルエンザは、感染力も強く、身体への負担も非常に大きい厄介な感染症です。高熱が出ないタイプもあるため、自分が感染源となって広めないように早期に検査することが求められます。特に小さなお子さんや妊娠中の治療については不安が大きくなることもあるでしょう。しかし自己判断で症状を悪化させては元も子もありません。医師や薬剤師に相談をしながら、症状に合った治療を受けていきましょう。

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