低血圧の処方薬と市販薬の種類とは?それぞれ、どんな特徴がある?

2018/5/15 記事改定日: 2018/12/11
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山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

立ちくらみやめまいなどを引き起こす「低血圧」は、薬でも治療することができます。
この記事では、低血圧の治療で使われる処方薬や市販薬の種類と、それぞれの特徴について具体的にご紹介していきます。

低血圧は薬で治せる?

まず低血圧とは、血圧が低い状態のことを指します。明確な定義は決まっていないものの、WHO では世界共通の基準として、収縮期血圧100mmHg以下、拡張期血圧60mmHg以下を低血圧としています。

低血圧の症状はめまい・立ちくらみ・頭痛・全身のだるさ・動惇・頻脈などがあり、重症の場合は失神を起こすこともあります。精神症状には朝の目覚めがよくない・起きられない・不安感・不眠・食欲不振などがあり、男性よりも女性の方が低血圧になりやすい傾向にあります。

低血圧は高血圧と比べて有効な治療薬が少ないことや、時間によっては高血圧の場合もあるため、薬での治療が非常に難しく、医師の間でも薬の調整や処方が困難とされています。しかし、自覚症状が見られている場合や低血圧によって各臓器に影響を及ぼしている場合には、薬物を使用した治療も必要となり、生活習慣の改善と合わせて治療薬や漢方薬で治療が行われます。

低血圧の治療薬の種類

低血圧の治療には、昇圧薬というお薬が使用されます。昇圧剤とは、血管のα受容体という受容体を刺激することによって末梢の血管の緊張を高めて血管を収縮させる薬です。これによって心臓のβ受容体を刺激し、結果として心臓から出る血液量を増加させて血圧を上げるという仕組みになります。

ただし、低血圧の治療薬は過量投与により過度に昇圧されてしまったり、頻脈、不整脈を引き起こすリスクがあります。また、中枢神経刺激作用によって、不眠、興奮状態といった副作用を生じることがあるため、投与は慎重に行うことが必要です。

昇圧剤

昇圧剤は降圧剤に比べて種類が少なく、低血圧の治療には以下のような昇圧剤が用いられます。

メトリジン®

動脈系であるα受容体に直接作用して血管を収縮させて血圧を上昇させます。一方、心臓や脳の血管には作用しないことが特徴であり、昇圧剤の第一選択として使用されることの多い昇圧剤です。

甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫のある患者には投与できないお薬で、副作用として、過敏症、嘔吐、悪心、腹痛、動悸、胸が苦しい、頭痛、不眠、発疹等が起きることがあります。

リズミック®

交感神経機能を間接的に亢進させることによって、血圧を上昇させます。高血圧症、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、狭隅角緑内障、残尿を伴う前立腺肥大のある方では使用することができず、昇圧薬の中でも持病によってお薬が使えない、適応外となる人が多い薬です。

副作用として、食欲不振、腹部膨満感、動悸、頭痛、不眠、発疹等が起きることがあります。

エホチール®

交感神経であるα1受容体とβ受容体を刺激することによって血圧を上昇させます。心不全の人は使用することができません。

副作用として、嘔吐、悪心、胸が苦しい、動悸、頭痛、発疹等が起きることがあります。

ジヒデルゴット®

静脈系に作用して血管を収縮させることが薬です。末梢性・閉塞性血管障害、狭心症、緑内障のある方、そして妊婦は使用することができません。副作用として、発疹、悪心・嘔吐、不眠、口の渇き等が起きることがあります。

抗不安薬

抗不安薬は低血圧の原因となる自律神経の緊張性を緩和し、自律神経の乱れを整えることで低血圧の改善につながる可能性があります。また、全身倦怠感、頭痛、めまいなどといった症状の改善にも効果があります。

低血圧の市販薬は漢方が中心

市販の薬で低血圧の治療をしたいと考えている場合には漢方薬が中心となります。中医学的に見た低血圧の原因は3つのタイプに分類されます。

気血両虚による低血圧
「気血両虚(きけつりょうきょ)タイプ」の低血圧とは、長い期間栄養不足状態が続いて心臓のポンプを押すエネルギーである「気」が不足することでポンプ力が落ちる、または貧血や月経過多、けがや慢性病、ストレスなどによって「血」の量が減り、血管への圧力が低くなることで低血圧となるタイプです。
気陰両虚による低血圧
「気陰両虚(きいんりょうきょ)タイプ」は、虚弱体質、慢性病、加齢、過労、ストレスなどが原因でポンプ力になる「気」が消耗し、さらに「血」が減少することで血管への圧力が減り、低血圧となるタイプです。
脾腎陽虚による低血圧
「脾腎陽虚(ひじんようきょ)タイプ」は、虚弱体質によって運動不足になり、肺の働きが弱くなることで、酸素の代謝が落ちたり、生命エネルギーそのものである「腎」が低下することでポンプ力となる「気」を生む力が弱まり、全身に栄養を運ぶ「血」を作る胃腸が弱まって低血圧となるタイプです。

これらのタイプ別に、使える漢方は異なります。例えば、「気」や「血」を作り、血流を改善する漢方には婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)が有効とされます。
「脾」(胃腸)を強くして、「気」「血」を生み出す力を高めたいときには、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、四君子湯(しくんしとう)が役立ちます。
「腎」を高めて、生命エネルギーを回復したいときには、瓊玉膏(けいぎょくとう)、参馬補腎丸(じんばほじんがん)、亀鹿二仙丸(きろくにせんがん)などが効果的とされています。

また、タイプが不明な場合には「柴湖桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)」が使われることもあります。飲み続けるほど、気の流れを良い方向に整え、新しい気を補ってくれるので低血圧の症状が緩和できます。
そのほか、「五苓散(ごれいさん)」、「苓桂朮甘湯(れいけいじゅつかんとう)」も、胃腸機能を高めて気の流れも良くすることで、低血圧の症状の緩和に役立つといわれています。

どの漢方薬が自分には合っているのか、気になる方は薬局で一度相談してみてもよいかもしれません。また、漢方薬は飲み続けることで効果の改善が期待できるため、ある程度継続して服用する必要があることは理解しておきましょう。

薬以外でできる低血圧対策は?

低血圧は不適切な生活習慣が原因のことがあり、生活習慣を改善することが症状の緩和につながることも少なくありません。

薬の服用以外でできる低血圧の対策方法としては、食生活と運動習慣、睡眠の改善が挙げられます。低血圧の人は摂取カロリー不足、栄養バランスの悪化、不規則な食事時間・回数などの問題を抱えているケースが多く見られます。低血圧を改善するには、適正な摂取カロリーを維持し、栄養バランスよく一日三食をしっかり摂ることが大切です。特にタンパク質は身体を作る元になりますので、しっかり摂取するようにしましょう。また、水分や塩分もしっかり取って血液量を増やすことも大切です。

一方、適度な運動は全身の血行を改善し、筋肉を維持することで血管の収縮を促す力をつけることができます。低血圧の人はめまいやふらつきなどが起こりやすいため、無理のない範囲でウォーキングなどの有酸素運動を始めてみましょう。
さらに、十分な睡眠や規則正しい生活リズムは低血圧改善効果につながることができます。特に朝の低血圧に悩んでいる人は、早寝早起きを心がけてしっかりと睡眠を確保するようにしましょう。

おわりに:低血圧の治療は服薬だけでなく生活習慣の改善も大切

低血圧は薬で治療することもできますが、高血圧の薬と比べて種類は少なく、また生活習慣の改善と併せて服薬することが重要です。市販の漢方薬でも低血圧の改善は見込めますが、体質によって合う薬は違うので、詳しくは専門の薬剤師に相談するようにしてください。

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