記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/9
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
健康診断で糖尿病の「境界型」あるいは「予備軍」と言われた場合、特に自覚症状がなければ放置しても大丈夫でしょうか?リスクや糖尿病に移行しないための方法について解説します。
糖尿病はいきなり血糖値が高くなって糖尿病と診断されるのではなくゆっくりとした経過を経て糖尿病と診断されます。糖尿病の「境界型」とは、正常値より血糖値が高くなってきた状態のことで「糖尿病予備軍」ともいわれたりします。
糖尿病の境界型の人の検査の値は、HbA1c6.5%未満、空腹時血糖110~125mg/dL、75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)の血糖値が140~199mg/dLのいずれかを満たしている場合のことをいいます。
境界型は糖尿病への悪化率が高く、糖尿病発症率は年間4~6%程度とされており、特に75gOGTT1時間後の血糖値が180mg/dLを超える場合では糖尿病への移行率が高くなるとされています。また、動脈硬化などの合併症の頻度が増加することが特徴です。
妊娠糖尿病という言葉をご存知でしょうか。妊娠糖尿病とは、妊娠していない時は血糖値が正常であるものの、妊娠をしたことによって糖代謝異常が現れて血糖値が高くなることを言います。一般的には産後、インスリンの抵抗性が解除されて糖代謝が正常化することが多く、自然と血糖は正常に戻っていくことが多いです。
しかし、出産後にいったん正常化したとしても、妊娠糖尿病の妊婦さんは正常血糖であった妊婦さんと比べて7.4倍程糖尿病になるリスクがあると言われています。また、19~87%が分娩後に境界型もしくは糖尿病になっていたという海外のデータもあります。したがって妊娠糖尿病も境界型に移行するリスクがあるということなのです。
妊娠糖尿病の診断基準は一般の糖尿病よりも厳しめですが、妊娠糖尿病と診断された場合はその後の血糖値を注意して見ていくことが必要となります。
まだ完全に糖尿病に移行していない段階ではありますが症状は何かあるのでしょうか。
糖尿病の境界型である場合にはまだ自覚症状はでてきません。そのため症状が無いからまだまだ大丈夫と思う方も多いですが、血糖値を下げるホルモンであるインスリンはすでに分泌されにくくなったり、インスリンそのものが分泌しづらくなったりしています。さらに、血糖値が高い状態が続くと血中に含まれる糖が血管を傷つけてしまいます。そのため、動脈硬化は予備軍のうちから進行するものとされています。
特に75gOGTTの2時間値が高くなるタイプの境界型の場合は正常型と比べて、心血管病による死亡率は2.2倍も多いと言われているため、特に注意が必要です。
糖尿病の境界型の場合は、2型糖尿病とならないために予防していくことが可能です。ここでは、どうすれば2型糖尿病の予防ができ現在の状況を改善できるのかについてご紹介します。
1つ目は食事の摂り方を見直していくということです。早食いは血糖値を上昇させるだけでなく満腹になりにくいために食事摂取量が増えてしまいます。そのため、食事はゆっくりと食べ、腹八分目程度となるように調整しましょう。
また、食事回数が少なくなると一度に食べる量が多くなりこちらも血糖値の上昇を引き起こしてしまうので毎食欠かさず、3食しっかりと食べるようにしましょう。その際には品数が少なく栄養バランスが偏らないようにさまざまな食材を取り入れて少しずつ食べるという習慣をつけるようにしましょう。特に野菜やきのこ・海藻、精製度の低い穀物などは、食物繊維が豊富なため血糖値の急な上昇を抑えてくれるので意識して摂ると良いでしょう。
間食や食後のデザート、アルコールの摂りすぎにも注意が必要です。身体に良いとされる果物も果糖といって糖分が含まれていますので食べすぎには注意が必要です。
2つ目は身体を動かす習慣をつけて、体内のブドウ糖を処理することです。無理にスポーツを始めなくても通勤や買い物などで少し遠回りして歩いていくというだけでも十分な運動となります。工夫して積極的に歩く癖をつけていきましょう。
糖尿病に罹患している人の8割は太りすぎあるいは肥満であったりします。肥満や体重増加を避けることも糖尿病に移行しないことのポイントとなるので、食事の見直しや運動を行って肥満を避けられるように生活していきましょう。
3つ目はストレスの緩和です。精神的なストレスは血糖値を上げる要因となります。上手に気分転換をしてストレスをためないようにしていきましょう。
妊娠中に妊娠糖尿病と診断された場合には、産後にも必ず検査を受けるようにしましょう。次回の入院まで糖尿病になり、そのまま気づかずにいると先天性異常をもった赤ちゃんが生まれてきてしまう可能性があります。また、自身の腎臓や網膜へ異常が出てしまうこともあります。
妊娠中に妊娠糖尿病と診断された場合には、産後1~3か月以内に75gOGTTを行い、血糖値が正常に戻っているかどうかを確認するようにしましょう。
「糖尿病の境界型=まだ糖尿病ではない」と安心しきっていると糖尿病に移行してしまう可能性があります。症状が出ていないためなかなか意識しにくいものですが、糖尿病へ移行した方がもっと辛い治療が待っています。境界型のうちに食生活や日常生活を意識して糖尿病へ移行しないようにしていきましょう。
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