便秘に効果的な漢方にはどんなものがある?妊娠中に飲んでも大丈夫?

2018/5/8 記事改定日: 2018/10/17
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

便秘を解消する薬としては、下剤や便秘薬が処方されることが多いですが、近年では漢方によるアプローチも注目を集めています。ここでは便秘に効果的な漢方について、主に病院でよく処方されるものをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

便秘に漢方が効くって本当?

慢性的な便秘は、腸内に蓄積された便が有害物質を発生させることで、腹部の膨満感やガス、食欲不振、吹き出物など他の不快症状を誘発します。しかし漢方は体質そのものに働きかけるため、便秘だけでなく、これらの随伴症状も併せて改善させる効果があるとされます。

東洋医学では、便秘は「気」(目には見えない生命エネルギーのこと)、「血」(全身を巡って各組織に栄養を与えるもの。主に血液を指す)、「水」(尿や分泌液などの体液全般のこと)の異常から起こるものと捉えます。どのタイプの異常が原因かによって、適した漢方薬は異なります。

便秘の漢方、病院で処方されるものは?

病院で処方される便秘の漢方薬のうち、代表的なものをいくつかご紹介します。

大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)
慢性的な便秘やお腹の張りに効果を発揮します
桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
便秘と共に起こる腹痛や下痢、腹部膨満感、食欲不振に効果を発揮します
大柴胡湯(だいさいことう)
慢性的な便秘、脇腹からみぞおちにかけての不快感、吐き気に効果を発揮します。肥満や高血圧気味の方におすすめです
麻子仁丸(ましにんがん)
「水」の不足が原因の、コロコロした硬い便による便秘や腹部膨満感に効果的です
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
便秘に加え、頭痛やめまい、のぼせなどを併発している人に効果的です。「血」の異常による便秘に処方されることが多く、特に女性に効果を発揮します

慢性的な便秘には「大建中湯」も効果的

大建中湯(だいけんちゅうとう)は、慢性的な便秘に効果を発揮する漢方の一種です。腸内環境を整えつつ便通を通りやすくし、イレウスや大腸がんを予防する効果もあるとされます。

大建中湯には、以下の4つの生薬が含まれています。

人参
冷え性やむくみに効く生薬。血液を循環させる作用もあるので、老廃物が排出されやすくなり、併せて蠕動運動も活発になります
山椒・乾姜
胃腸の機能を安定化させ、突如起こる腸の蠕動運動や下痢を防ぐといわれています
麦芽糖
麦芽糖は善玉菌のエサとなるもので、善玉菌が増殖することで便が柔らかくなり、自然に排便されやすくなります。また善玉菌の増殖により、腸内環境を整える効果もあります

以上の生薬の効果から、大建中湯は根本的に便秘を解消する効果に優れているといえるでしょう。特に慢性便秘や、腸の機能低下による弛緩性便秘に効果が期待できます。
ただし、これらの生薬が効果を発揮するまでに3日程度かかるため、そこまでの即効性はありません。すぐに便秘を解消したい場合は、刺激成分が配合された便秘薬を服用する必要があります。

妊娠中に漢方薬を飲んでも大丈夫?気づかずに飲んでしまった場合は?

漢方薬は西洋薬に比べて母体や胎児に対する影響が少ないため、妊娠中でも比較的安全に服用することができます。しかし、安易な自己判断での服用は思わぬ副作用を引き起こすこともあるので注意が必要です。服用する場合は必ず医師に相談してからにしましょう。
妊娠中の段階によって漢方薬の服用が及ぼす影響は以下の通りです。

妊娠超初期(~妊娠4週)

妊娠超初期の段階では、妊娠していることに気づかない人がほとんどです。着床が完了して間のない時期であり、受精卵は活発に分裂を繰り返して日々成長していますが、母体の服薬によって胎児に影響があることはほとんどありません。

しかし、大黄剤を含む漢方薬は過度な下痢を引き起こすことがあるため、ホルモンバランスが大きく変化する妊娠超初期から避けた方がよいでしょう。また、紅花や牛膝などの成分を含むものは子宮収縮を引き起こすことがあるので注意が必要です。

妊娠初期(妊娠4~15週)

妊娠初期は、心臓や神経、目など胎児の様々な器官が形成される非常に重要な時期です。また、薬の影響を最も受けやすい時期ですので、漢方薬を含めてなるべく薬は服用しない方がよいでしょう。

妊娠中期(妊娠16~27週)

いわゆる安定期と呼ばれる時期です。胎盤が出来上がるため流産の危険も少なくなり、多くの妊婦さんはつわりが終わるころです。この時期に注意したい漢方はエフェドリンが含まれる麻黄湯ですが、エフェドリンの効果で血管収縮が生じ、胎盤の血流が低下します。また、乾姜のように利尿作用のある成分は脱水症になりやすいため服用しないようにしましょう。

妊娠後期(妊娠28週~)

妊娠中期と同様、早産のリスクは少ないですが、子宮収縮を促す成分が含まれている漢方薬は切迫早産の原因となりますので服用を控えるようにしましょう。

おわりに:体質や症状によって適した漢方は異なる。今の状況を細かく医師に伝えよう

ご紹介したように、便秘に効果的とされる漢方にはさまざまな種類があります。体質や原因、併発する症状によって適した薬は異なるので、医師にしっかり状態を伝えることが大切です。とくに妊娠している、妊娠の可能性がある場合は必ずその旨を伝えましょう。

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