記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
ロタウイルスと言えば、ノロウイルスと並び嘔吐や下痢の症状を引き起こすウイルスとして知られています。乳幼児の感染が多く、大人は感染とは無関係に思えるかもしれませんが、実際はどうなのでしょうか?ロタウイルスの感染経路や症状、治療、対策などについて解説します。
ロタウイルス感染症は急性胃腸炎を引き起こす感染症で、乳幼児をはじめ子供に多くみられ、2〜3月にかけて最も多く発生します。下痢や嘔吐の症状がはげしいことが多く、入院が必要になる小児急性胃腸炎の原因のうちおよそ50%がロタウイルスとされています。
ロタウイルスが体内に入り感染すると、ロタウイルス胃腸炎になり、主に以下のような症状が起こることがあります。
症状として下痢がある場合は、脱水症状に陥りやすくなるので注意が必要です。
ロタウイルスは遺伝子型が異なってもある程度の交差免疫が成立するため、感染を繰り返すごとに症状は軽くなっていきます。乳幼児以降も感染を繰り返すと、重症化に対する防御効果がみられるとされています。
一般的に新生児は、母体由来の免疫により不顕性感染に終わることが多く、乳幼児期以降や年長児期以降の再感染ではさらに不顕性感染(感染しても症状が出ない)が多くなります。 また、ロタウイルスに感染している子供と接触した成人のうちおよそ30~50%が感染するとされていますが、ほとんどの場合はそれ以前の感染で免疫があるため、不顕性感染に終わることが多いです。
ロタウイルスは大人も感染する可能性がありますが、多くの場合は既に免疫ができているため、不顕性感染か、軽い症状で済む場合が多いです。
ロタウイルスは感染力の高いウイルスですが、乳幼児の期間に繰り返し感染することによって、徐々に免疫がつくられて感染のたびに症状が軽くなっていきます。そのため、成人では感染しても症状がほとんど現れないことが多いです。
しかし、大人の場合は症状が出ないというわけではなく、抵抗力の低下している高齢者などは重症化しやすく、介護施設などでの集団感染が起きることも度々あります。
ロタウイルス感染症は、1~3日間の潜伏期間の後に症状が現れ、発症して2~7日間ほどで症状は治まります。ただし、まれに痙攣(けいれん)や脳症などの合併症を引き起こすこともあるので注意が必要です。
ロタウイルス胃腸炎に対する抗ウイルス療法はないため、主な治療としては、下痢や嘔吐などによる脱水症状を防ぐことが中心になります。脱水症状がひどい場合には輸液(点滴)が必要となる場合もあり、入院治療が必要になることもあります。
ロタウイルス胃腸炎にかかる多くは子供(乳幼児から5歳まで)のため、抵抗力が弱く脱水症状になりやすいです。こまめに水分補給を行うようにしましょう。場合によっては、乳酸菌製剤などの整腸薬を用いることもあります。なお、強い下痢止めを使用するとウイルスが腸内に留まることにより、治りが遅くなるので注意が必要です。
さらに、嘔吐の症状がある場合は、嘔吐物で気管が塞がれ、窒息する恐れもあります。ロタウイルス胃腸炎になった際にはよく状態を観察して放置しないようにしましょう。
汚物(嘔吐物や排泄物)には、ロタウイルスが大量に排出されている可能性があるので、感染の拡大を防ぐために、以下のポイントを守り「すばやく」「適切に」処理しましょう。
ロタウイルスの予防には、手から口への感染を防ぐために、石鹸を使って、指の間や爪のすき間、手首などをしっかり洗うことが大事です。また、便や吐しゃ物で汚れたものは、次亜塩素酸ナトリウムで消毒しましょう。一般的に消毒にはアルコールがよく使われていますが、ロタウイルスにはあまり効果が無いので注意してください。