記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/5/14 記事改定日: 2018/7/24
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記事監修医師
前田 裕斗 先生
不妊は女性に問題があると考えられがちですが、本当にそうなのでしょうか?実は、不妊の半数以上の原因は男性側になんらかの異常があるとされており、このような不妊を男性不妊といいます。ここでは男性の不妊治療や検査について解説します。
精液・精子検査では、採取した精液で精子の量や状態を検査する検査です。
一般的に、1回の射精で放出される精子の数は約1億~4億個とされ、その中で卵子と結合できる精子は、たったの「1つ」です。そのため、受精には精子の「質」が肝心となります。精子の質が高くないと、いったん妊娠ができても継続しにくという結果を招いてしまうからです。
妊娠には、男性と女性両方の妊娠力が必要となるため、女性だけでなく、男性の不妊検査も同時に行なうことで、原因の特定がしやすくなります。
男性不妊の原因として、以下の項目があげられます。
男性の不妊症の原因においては、ホルモンの一種であるテストステロンが関係しているとされています。
ストレス等により、性器がうまく反応せず、性行為がうまくいかなかったり、勃起障害(ED)や性交渉はできても腟内射精が困難など、さまざまな射精障害があります。
精巣での精子形成や、精巣上体での運動能獲得過程に異常があると、精子の数が少なくなったり、精子の動きが悪くなったり(精子運動率低下)、奇形率が多くなるため、受精力が低下してしまいます。
精液中の精子の数が極端(通常の1/100以下など)に少ない場合や運動率が極端に低い(20~30%以下)場合、無精子症と呼ばれる射精された精液の中に精子が全く見られない状態などがあります。
ホルモン療法、漢方薬、ビタミン剤などの治療を行いますが、効果がみられないときには、人工授精、体外受精などがすすめられることがあります。
※乏精子症とは、精子数が少ない(1500万/ml以下)場合のことを指します。
※精子無力症とは、運動精子が40%以下の場合のことを指します。
膿精液症とは、精液中に白血球が多く認められる状態(100万/ml以上)で、精路のどこかに炎症がある場合が多いです。白血球は受精率を低下させ不妊症の原因となります。治療として抗生物質を一定期間内服します。
ED等の性器に問題がある場合や、夫婦生活が上手くもてないなどの場合は医師に相談しましょう。治療として漢方薬、バイアグラをはじめ、薬物療法などを行います。また、希望により腟内精液注入法、人工授精の適応などが受けられます。
男性不妊の検査は、主に精液検査と前立腺肥大や精索静脈瘤などの射精の障害となる泌尿器科的な病気に対する検査を行います。
検査費用は医療機関によって異なりますが、精液検査はカウンセリング料などを含めて1~3万円前後が相場です。泌尿器科的な検査で腹部超音波検査や内診などが行われますが、多くは健康保険の対象となるため、3~5千円程度のことが多いでしょう。
また、不妊治療に関しては、精子の数が少なかったり、運動率が悪い場合には人工授精や体外受精を行いますが、これらはそれぞれ3~5万円、30~60万円ほどが相場です。
さらに、精子の数が少なかったり、射精障害がある場合には精子を取り出したり、精巣静脈瘤や前立腺肥大に対する手術が必要となることがあります。精子を取り出す手術には、精子の通り道を再建する術式や精巣自体を切り開いて精子を採取する手術が行われます。これらの手術は健康保険が適応になりますが、入院を必要とするため医療費は10~30万円ほどかかるでしょう。
女性にたいする不妊治療の助成金は全国の自治体で広く行われていますが、男性に対する不妊治療には助成金がないことがほとんどでした。しかし、今では不妊の半数は男性側に原因があることが分かっており、精子を取り出す手術を行った場合には、その費用の一部を助成する自治体が増えています。
男性が不妊治療で手術などを行う場合には、自身の医療費が助成金の対象になるかどうかをお住いの自治体に問い合わせてみましょう。
男性が不妊治療で精液検査をするメリットとして、専門医師が検査結果を総合的にみてアドバイスや治療ができるところにあります。また、検査は体調やストレスによって大きく値が変化しますので結果によっては、別のタイミングで再度、精液・精子チェックをしてみることをおすすめします。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。