記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/5/24 記事改定日: 2020/8/18
記事改定回数:2回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
ヘルペスウイルスに感染すると脳炎になる可能性があり、早期治療が必要です。また後遺症にも注意が必要で、発症後の生活に影響を及ぼすことがあります。この記事では、ヘルペス脳炎について解説していきます。正しい知識を身につけることで、早期受診に役立てましょう。
脳炎には、ウイルスや細菌、カビの仲間である真菌、寄生虫など外部から感染して起きる感染性脳炎と、自己免疫のトラブルで起こる自己免疫性脳炎などがあります。
自己免疫のトラブルとは、攻撃する必要のないはずの自分自身の細胞や組織まで攻撃してしまうことです。
小児の感染性の急性脳炎・脳症の約6割が単純ヘルペス脳炎という報告もあります。
ヘルペス脳炎の症状は他の感染性脳炎の症状と似ていますが、脳そのものに炎症を起こすため急性で重篤な症状を示します。
他の脳炎と同様に首が前に曲がらなくなる首の硬直や、脳が障害されることによる幻覚や妄想、言語症状などの症状も現れることがあります。
ヘルペス脳炎の人に、これら全ての症状が見られるということではありませんが、発症後に何もしなければ早ければ数時間単位で症状は悪化していきます。
単純ヘルペス脳炎は、かつては命を落とす人が非常に多い病気でしたが、抗ウイルス薬の開発で命は助かることが多くなりました。しかし、それでも重篤な後遺症を残す人もおり、早期に適切な治療が必要な病気です。
ヘルペス脳炎は早期治療が非常に重要な病気です。治療が遅れることで神経障害などの重篤な後遺症をのこすだけでなく、死に至ることもあります。
ヘルペスに特徴的な皮疹と共に以下のような症状が見られる場合にはなるべく早めに病院を受診しましょう。
ヘルペス脳炎は「単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)」または「単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)」が原因で発症するといわれています。
小児期から成人期の場合は、単純ヘルペスウイルス1型の感染が主で、感染している人の唾液やくしゃみ、咳などが感染ルートと考えられます。
一方で、新生児の場合は1型に加えて2型での発症がみられます。新生児の場合は出産後に感染するだけではなく、出産時に母体の産道から感染することもあります。
ヘルペス脳炎の治療では、できるだけ早く抗ウイルス薬での治療を開始することが大切です。
ヘルペス脳炎では、まずアシクロビルという薬剤が第一選択肢となります。点滴による投与が行われ数週間の治療となります。効果の検討はPCR法を用います。PCRは微量のDNAであっても増幅させることで検出が可能となる方法です。治療後の体内に微量のウイルスが存在していないかどうかを確認します。
もしアシクロビルでの効果が得られないときに選ばれるのがビダラビン(Ara-A)という薬です。ビダラビンも点滴による投与が行われ、10日間を1単位として効果を確認します。副作用として、白血球と血小板の減少や肝機能の異常に注意が必要な薬剤です。
ヘルペス脳炎は意識障害や痙攣などの症状を引き起こし、放置すると命を落としたり、重篤な神経障害が後遺症としてのこることもあります。
ヘルペス脳炎と診断された場合は原則的に入院した上で点滴治療を行い、経過を慎重に観察していく必要があり、飲食ができないような場合には点滴によって水分や栄養を補給する必要もあります。
ヘルペス脳炎は、命の危険性がある病気です。また、たとえ治療の効果が得られ一命を取り留めたとしても、脳の炎症によるダメージの影響で後遺症が残ることがあります。
後遺症としては、てんかん発作や身体の麻痺が残ったり、人間が的確に判断をしたり、人とコミュニケーションをとりながら、すこやかに生活していく上で欠かせない力が障害されてしまうことがあります。
具体的には、上記のような「高次脳機能障害」が残ることがあり、子供の場合は学習にも影響を与えます。
ヘルペス脳炎は、過去には7〜8割程度の人が命を落としていたという重大な病気でした。抗ウイルス薬の開発によって命を落とす人は減少しましたが、それでも命の危険があり、重度な後遺症を残す可能性のある病気です。気になる症状が現れたら、ためらわずに受診をすることが大切です。