記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/3/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
スーパーで買ったものを袋に詰めて持ち上げた瞬間や、赤ちゃんをだっこしたときに、うっかり漏らしてしまった経験はありませんか?出産中、骨盤まわりの筋肉や神経が伸びたり切れたりすると、出産後しばらくの間、腸や肛門の働きに支障が出てしまうことがあります。ここではそのトラブル(尿失禁、便失禁)とその原因、トラブルの改善方法についてご紹介します。
出産後に起きる可能性がある腸のトラブルとして、以下のようなものがあります。
くしゃみや咳をしたときや、何かを持ち上げたりしたときに尿が漏れてしまう症状です。産後、膀胱周辺の筋肉(骨盤底筋)の筋力が弱ってしまうために起こります。
出産後に排便をコントロールしたり、おならをしたりするのが難しくなる症状です。トイレに間に合わなかったり、気づかないうちに腸から漏れたり、おならと便意とを区別できないといった症状が現れます。出産時に肛門括約筋が緩んだり傷ついたりしたために起きると考えられます。
出産によって、女性の体はダメージを受けます。骨盤まわりの筋肉が伸びたり、膀胱の働きをコントロールする神経が傷ついてしまうことで、体内の老廃物をいつ、どのように排出するかをコントロールするのが難しくなります。
また、鉗子分娩(かんしぶんべん:出産時に赤ちゃんがなかなか出てこないとき、鉗子という器具で赤ちゃんの頭部をはさんで引き出すこと)や吸引分娩(赤ちゃんを取り出すために、シリコンもしくは金属製のカップを頭部につけ、吸引力で引き出すこと)をした場合、あるいは出産時に会陰(膣と肛門の間の部分)を切開した場合、その傷が治るまで、腸のトラブルが起こることがある、と言われています。
体が産後のダメージから回復し、正常に戻るにつれて、こうしたトラブルは解消します。ただ、治癒には少し時間がかかります。肛門や骨盤まわりの筋肉はほぼ毎日使うため、ギプスなどで固定して休ませる、といったことができないためです。
ほとんどの場合、時間の経過とともに自然に回復しますが、場合によっては手術が必要な場合もあります。もし、産後しばらく経っても回復しないようでしたら、経過観察が必要かもしれないので、恥ずかしがらずに医師の診察を受けてください。
そのほか、自分でできる対処法として以下のようなものがあります。
ふすま、豆、ブロッコリーなどは消化が悪く、ガスを発生させやすいと言われています。産後しばらくの間はこのような食べ物を食べないようにして、排便やガスをコントロールしてください。
物を持ち上げると骨盤の筋肉に負担がかかるので、できるだけ避けてください。子どもやショッピングバッグなど、何かを持ち上げなければいけないときは、持ち上げる前とその間は骨盤の筋肉を締めましょう。
医師に止められていないなら、1日に6~8杯の水分を飲んでください。特に尿失禁の人は、トラブルを避けるために水分を摂るのを避けがちですが、飲む量が少なくなると膀胱の筋力が低下し、失禁が悪化するためです。
ジョギングやエアロビクスといった衝撃の多い運動は、骨盤底筋に圧力をかけ、失禁を悪化させる可能性があります。骨盤底筋を強化したいときは、ピラティスがお勧めです。穏やかに芯の筋肉を伸ばして強化するピラティスは、尿失禁の治療として一般的になりつつあります。
尿や便が漏れてしまう症状は、恥ずかしさから誰にもいえないと、ひとりで抱え込みがち。でも、出産した女性の多くが経験する症状のひとつですから、必要以上に悩んだり、不安になったりする必要はありません。自分でケアをしても症状が改善していないように感じたら、お世話になった産婦人科の医師や看護師に相談したり、骨盤底筋セラピーについて理学療法士に相談したりすることを検討してください。