記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
不注意優勢型ADHDにはどのような症状や治療法があるのでしょうか?また、自分の子供がADHDの場合、どのような事に気をつけて接すればいいのでしょうか?不注意優勢型ADHDの症状や治療法などについて解説していきます。
ADDとは、日本語訳で「注意欠陥障害」と呼ばれる、1987年までのADHDの呼び名です。
診断名の変更は、アメリカ精神医学学会が発行する国際的な診断基準「DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)」の改訂に従い行われました。現在の発達障害の呼び名はADHDの「不注意優勢型」に相当しており、その特徴として「注意の持続と衝動性の制御に問題が生じる障害」とされています。
結論から言うと、ADDとADHDの表記の違いは、「多動性」が付随しているかいないかの違いとなります。注意欠如=Attention Deficit、多動=Hyperactivity、障害=Disorder
・ADD(Attention Deficit Disorder)=注意欠如障害
・ADHD(Attention Deficit Hyperactivity Disorder)=注意欠陥多動性障害
不注意とは、一定時間集中することが難しく、注意力がすぐに他事に向いてしまう症状のことです。
以上ような症状は、外からの情報を整理・保存・活用を司る、脳の「前頭前野」が弱いことが原因だとされています。前頭前野がうまく働かないと、記憶力に影響が及ぶので物忘れが多くなるとされています。
ADHDの人は、感情や欲求をうまく制御することが難しく、衝動的に発言・行動してしまう傾向があります。そのため、周囲の人の怒りを買いトラブルになってしまうこともあるのです。
以上のように、衝動的に感情を表に出してしまう傾向があるので、自分の思うようにいかないと癇癪を起こしてしまう場合があります。そのため、集団行動やチームプレイを苦手とする人もいます。
自分の障害を周囲にあまり理解されていないことで、ミスを責められたり厳しく指導されると、本人の自尊心に傷がついてしまう場合があります。
そして自尊心が低下すると、不登校、ひきこもり、うつ病、非行などをおこしてしまう場合があり、このような症状を二次障害と呼びます。
ADHDの人の脳は、ドーパミンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質が不足している傾向があり、病院では主にその神経伝達物質の増加・活性化作用のある薬が処方されます。
現在、日本で主に処方されている薬として、「アトモキセチン」「メチルフェニデート」「グアンファシン(小児のみに適応)」があります。
これらの薬の副作用については、処方されたときに医師や薬剤師に確認しておきましょう。
まず初めに病院で問診を受ける際には、本人が抱えている困りごとや症状などについて詳しく医師が確認していきます。そうすることで、その後の療育や投薬治療の方針が決まるので、質問された際には正直に答えるようにしましょう。
困りごとを改善していく上で大切なのは、「本人の状態を正しく理解する」「安心して過ごせる環境を作る」「症状に対する適切な対処法を理解する」ことなのです。
ADHDには不注意や多動性の症状があり、本人がどんなに努力しても改善できない特徴があります。しかし、専門の医師に診てもらい自分の症状を詳しく知ることで、その後の対処法や方針などを決めることができます。また、ADHDのお子さんがいる場合は、具体的な接し方のポイントなどを知ることで、お子さんとコミュニケーションがとりやすくなる可能性があります。困りごとや聞きたい事などがある場合は、専門の医師に相談しましょう。