記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2023/5/17
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
突然の腹痛や下痢は辛いですよね。特に血が混じっていたら、余計に不安になるかもしれません。カンピロバクターによる食中毒は、日本国内でもみられやすい食中毒といわれています。この記事では、カンピロバクターによる食中毒の症状や感染経路の特徴と、治療内容、予防対策について解説していきます。
カンピロバクターは食中毒を引き起こす細菌で、牛や鶏などの家畜や犬・猫などのペット、鳥類など多くの動物がもっています。汚染された食品や動物の便、飲料水を通して人に感染します。1978年にアメリカで飲料水を通して約2,000人が感染し、世界的に注目を浴びました。
カンピロバクターは乾燥に弱く、動物や人の腸管内でのみ増殖すること、また熱に弱いため、加熱調理で死滅することが特徴です。少しだけ酸素があるような環境を好むため、酸素が十分な環境や全く酸素がない環境では増殖することができません。また、数百個程度の少ない量と接触することで、人に感染することが知られています。
カンピロバクターに感染して食中毒を起こすと
などが現れ、下痢では血便が出ることもあります。他の感染型細菌性食中毒や、風邪の初期症状と間違われる場合もあります。
その多くは数日~1週間で軽快しますが、幼児や高齢者などの場合には重症化するケースもみられます。
ギランバレー症候群とは、神経に炎症が生じて神経を保護する髄鞘と呼ばれる部位が脱落することで、神経麻痺が生じる病気です。突然発症することが多く、神経の炎症は全身のさまざまな部位に起こりますが、特に下肢に生じやすいのが特徴です。ギランバレー症候群は、カンピロバクターに感染した後に発症することがあります。感染後二週間ほど経過してから発症することもあるため、突然足に力が入らなくなったなどの症状が現れた場合は注意しましょう。
感染経路は、主にペットの便や感染した人が原因になっている「感染症」の経路と、汚染された食品が原因になっている「食中毒」の2つにわけられます。
犬や猫などのペットに触れることで汚染されて感染します。ペットに症状がなくても腸内にカンピロバクターをもっている場合もあるので、注意が必要です。また、感染している人の便を処理するときや、感染した人が触れたテーブルなどに触れることにより汚染され、感染する場合もあります。
加熱が不十分な食品や汚染された食品を食べたときに発症します。原因となるおもな食品として、牛の生レバーや鶏肉などが挙げられます。また、綺麗に洗浄されていない手や調理器具で調理した場合に発症することもあります。
多くの場合は自然に回復するため、食事療法や水分補給など、症状に合わせた治療を行い、安静にすることが基本となります。症状を和らげるために整腸剤や解熱剤を使うこともあり、重症の場合には、病院で抗生物質をすすめられる場合もあります。
また、嘔吐や下痢などが何日も続き症状が改善されない場合には、脱水症状を防ぐため点滴で水分や栄養を補給することもあります。以下のような脱水が疑われる症状がみられたら、早めに病院を受診しましょう。
カンピロバクターを予防するには、鶏肉などカンピロバクターが潜んでいる可能性のある肉類の生食は避け、75度で1分以上中心部までしっかり加熱するようにしましょう。また、生肉を扱った後はしっかり手を洗い、使用した調理器具のこまめに洗浄することで野菜などの生食する食材への汚染を防ぐことができます。
なお、カンピロバクターは感染者の便を介して接触感染を引き起こすこともあります。普段から、用便後や外出後の手洗い・手指消毒を徹底するようにしましょう。
カンピロバクターによる食中毒になった場合は、脱水症状にならないためにも水分補給が大切です。1週間以内に自然回復するといわれていますが、あまりにも症状がよくならない場合には早めに病院を受診しましょう。また、カンピロバクターが原因のギランバレー症候群は重症化しやすいといわれています。感染予防のために、鶏肉は十分加熱調理し、生食は控えるようにしてください。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。
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