記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
いぼ痔や切れ痔など痔には色々な名前がありますが、具体的にはどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、痔の種類やそれぞれの治療法について解説していきます。
痔には、痔核(いぼ痔)・裂肛(切れ痔)・痔瘻(あな痔)があります。
痔の治療は、以下のように痔の種類ごとで方法が違ってきます。
内痔核はその症状の程度により、4種類に分類されます(Goligher分類)。分類は下記のようにⅠ度からⅣ度までに分けられ、数字が上がるにつれ症状の程度が悪化します。
Ⅰ度 | 排便時にうっ血、膨隆(局部的な盛り上がりやふくらみ)する |
Ⅱ度 | 排便時に内痔核の脱出が見られるが、排便後に自然に元に戻る |
Ⅲ度 | 排便後の脱出を納めるために、自分で戻す必要がある |
Ⅳ度 | 痔核が外痔核まで及んでいるため、自力でも完全に元に戻すことはできない |
手術は上記のGoligherⅡ度以上の内痔核の場合に行われ、腰椎麻酔や仙骨硬膜外麻酔(肛門付近のみの麻酔)が施された後、3ヶ所の痔核切除手術を行います(結紮切除術)。治る確率の高い手術ですが、術後に痛みや出血が起こる可能性があるため、10日前後の入院が必要となります。
硬化療法とは、硬化剤を注射して痔核を小さくする治療法で、下記の主に2種類があります。
GoligherⅡ度以上の内痔核の場合に行われます。内痔核の根部に医療用のゴムの輪をかけることにより周囲の血行を遮断し、壊死に至らせる治療法です。ゴムの輪は1週間前後ではずれます。日帰りでの治療が可能です。
GoligherⅠ度~Ⅱ度の内痔核の出血に対して行われます。坐薬・内服薬の使用、排便習慣や食生活の改善、肛門部の衛生管理などを行います。
痛みを伴わない場合は、薬物治療で対処可能ですが、急性期の強い痛みを伴う場合は、局部麻酔下で血栓を除去する手術を行います。日帰りでの治療が可能です。
裂肛は、基本的には薬物療法と保存的療法を中心に治療が進められますが、症状が長期化したなどの場合は手術が検討されることもあります。
排便習慣や食生活の改善、肛門部の衛生管理などを行います。
裂肛は、肛門括約節の過度の緊張状態(攣縮:れんしゅく)が原因となり、強い痛みを感じるため、その緊張を緩和する薬(ニトリグリセリン軟膏薬など)を用いて痛みを軽減する治療を行います。
保存的治療や薬物療法で効果が見られなかった場合、症状が慢性化している場合などには手術を行うことがあります。用手拡張、側方内括約節切開、根治的切除術、皮膚弁移動術などがあり、日帰りもしくは数日~7日前後の入院が必要になります。
保存的治療や薬物療法で効果が見られなかった場合、再発した場合などは、手術が必要になることがあります。肛門周囲膿瘍の場合は、患部を切開し膿を出す手術が行われますが、症状が進行している場合は後日、痔瘻に対する手術が行われます。
痔の種類には、内痔核・外痔核・裂肛・痔瘻などがあり、それぞれ治療法が異なります。治療期間も日帰りから数日間入院が必要なものまでさまざまです。医師と相談しながら、自分の症状に合わせた治療法を受けましょう。