肝硬変の非代償期の食事の注意やレシピのおすすめは?

2018/6/21 記事改定日: 2020/6/26
記事改定回数:3回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

肝硬変が進行して非代償期に入ると、肝機能の低下に伴い、腹水や黄疸、肝性脳症といった症状がみられるようになります。非代償性肝硬変では症状に合わせて薬物治療と食事療法を行う必要があります。塩分やたんぱく質の摂取についての注意点やおすすめレシピを紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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肝硬変の代償期と非代償期の違いとは?

肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるように、肝硬変を発症したとしても目立った自覚症状が現れず、気づいたときには進行した状態に陥っていることも少なくありません。
肝硬変は進行の程度によって「代償期」と「非代償期」に分かれます。

代償期

肝臓がダメージを受けて組織の線維化が進んでいるものの、肝臓の機能自体はかろうじて保たれている状態です。疲れやすさや食欲不振などの症状がみられることはありますが、目立った症状がないため発症に気づかないケースも多々あります。

非代償期

肝臓の機能が著しく低下し、腹水や黄疸などの症状を引き起こす状態のことです。非代償期にまで進行してしまうと肝機能の回復は期待できません。肝不全に陥ったり、肝臓がんに進行することがありますので、予後は極めて悪いと考えられます。

肝硬変の非代償期は塩分控えめの食事を

非代償期の肝硬変に見られる代表的な症状に、腹水とむくみがあります。

腹水
お腹の内臓と内臓の隙間に溜まった水のことで、肝臓が硬くなるのに伴い肝臓への血流が妨げられ、門脈圧が亢進したことなどが原因で生じるようになります。
むくみ
腹水が溜まるとお腹がぽこっと張ったようになり、下肢にもむくみが生じるようになります。

こうした腹水やむくみが見られる場合は、1日あたりの塩分摂取量を5〜6g程度に制限する必要があります。これは、塩分を摂取すると体に水分を溜め込みやすくなるためです。
調理時は出汁や酸味をうまく活用する、汁物の汁は飲まないなどして、塩分をとりすぎないようにしましょう。

肝硬変の非代償期はたんぱく質の制限が必要

非代償期の肝硬変の症状に、肝性脳症というものがあります。普段の肝臓はアンモニアなどの毒素を解毒・分解する役割を担っています。しかし、肝硬変が進行するとその機能が低下し、血中にアンモニアなどの毒物が増えることで意識障害や昏睡に陥ることがあります。これが肝性脳症です。

このアンモニアは、たんぱく質が消化される過程で発生するものなので、肝性脳症の症状が出た場合はたんぱく質の制限が必要になります。脳症が出ている間は禁食が基本で、症状が落ち着いてきた頃から0.5g/体重(kg)のたんぱく食を開始し、徐々に1g/体重(kg)まで増やしていきます。

動物性よりも植物性たんぱく質

肉類の過剰摂取で肝性脳症が出やすくなるともいわれているため、植物性たんぱく質を主体に摂取することが重要です。

食物繊維で便秘改善

便秘によってアンモニアが発生しやすくなるので、食物繊維も併せて積極的に摂るようにしましょう。

刺激物や硬い食べ物は避ける

肝硬変によって門脈の血液が停滞し、門脈圧が亢進すると、血液が胃や食道に逆流することで胃腸の静脈の血液量が増え、コブのように膨れる静脈瘤が形成されることがあります。

こうした静脈瘤が確認された場合は、刺激の強いものや硬い食べ物(小骨のある小魚やフランスパン、おせんべいなど)の摂取は避けてください。大きな塊を丸呑みするようなことも避け、おかゆやうどん、ヨーグルトなど柔らかいものを中心に食べるようにしましょう。

糖質コントロールで血糖値上昇を防ぐ理由

肝硬変患者は、肝臓で糖を調整する機能が低下するために肝性糖尿病を発症することがあります。

この場合は食後の血糖値の上昇を防ぐために、一気に大量のものを食べるのはやめる、お菓子や果物など吸収率のいいブドウ糖の過剰摂取は避ける、炭水化物の多い食品を摂りすぎない、といった点に注意する必要があります。

肝硬変の非代償期におすすめのレシピ

肝硬変の非代償期には、次のような食事のポイントを抑えましょう。

  • 肝臓への負担を極力減らすためにたんぱく質を制限する
  • 食道静脈瘤などが破裂する危険を避けるために塩分を控える
  • 固い物や刺激物を避ける
  • お菓子や果物など吸収率のいいブドウ糖を摂りすぎない

ポイントがいくつかあるため、何を食べればいいか迷うこともあると思います。ここでは、肝硬変の非代償期におすすめのレシピを3つご紹介します。

具だくさん野菜スープ

じっくり煮込んだ野菜はのど越しがよく、加熱すると失われがちなビタミン類もスープと共に飲むことで十分に補うことができます。さらに、野菜はたんぱく質が少ないので、肝硬変の非代償期にはメインに取り入れるようにしましょう。

  1. キャベツや白菜、大根、ニンジンなどお好みの旬の野菜を小さめにカットする
  2. カットした野菜をひたひたのお湯でじっくり煮込む
  3. 野菜が箸で崩れる程度の硬さになったら、コンソメや塩コショウで味付けして完成

野菜をじっくり煮込むことで味が出るので、塩分を最小限に抑えることができますよ。

ブロッコリーとトマトのサラダ

ブロッコリーには体内の水分を排出する作用のあるカリウムが豊富に含まれていますので、むくみがある時に積極的に摂りたい食材です。さっぱりとしたサラダにすることで、たんぱく質摂取も抑えることができます。

  1. ブロッコリーは小分けに切って、しっかり茹でる
  2. 皮むきをしておいたトマトはくし切りにする
  3. 鰹節や昆布でとっただし汁に塩コショウを加えてお好みに味付けしてドレッシングを作る
  4. トマトとブロッコリーを盛りつけたお皿にドレッシングを回し入れたら完成

フルーツスムージー

厳密な食事制限中でも、甘みのあるおやつや飲み物は摂りたくなるものですよね。肝硬変の非代償期の人には、食道への刺激が少なく、甘みを抑えたスムージーがおすすめです。

  1. リンゴやバナナなどお好みのフルーツを細かくカットする
  2. カットしたフルーツを、適量のヨーグルトと牛乳に投入し、はちみつで味付けする
  3. ブレンダーやミキサーで一気に撹拌すれば完成

非代償期に運動してもいいの?

肝硬変は代償期だけでなく、黄疸や腹水、肝性脳症などの症状や破裂の可能性がある食道静脈瘤が見られるときなどを除けば、非代償期であっても適度な運動を行うことが勧められています。

これは、運動を制限すると、筋肉量が減少し、血中アンモニア濃度の上昇やインスリン作用の低下することで高血糖や便秘が引き起こされ、肝性脳症など重篤な状態を引き起こすリスクが高くなることが関係しています。

どの程度の運動をしてもよいのかはそれぞれの症状や状態によって異なりますので、自己判断で運動をせず、医師の指導に従って取り組むようにしましょう。

おわりに:非代償期の肝硬変では塩分、たんぱく質、糖分などを管理する食事療法が必要

非代償期の肝硬変では、腹水や肝性脳症、食道静脈瘤などさまざまな症状が起こるようになるため、それぞれの症状に応じた食事療法が必要になります。症状を改善し、肝機能を悪化させないためにも、おすすめレシピも参考にしながら日常生活からできる予防を続けていきましょう。

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