卵巣嚢腫の原因がわかるものとわからないものがあるって本当?

2018/7/2

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

卵巣の一部にできた袋状の腫瘍内に、液体が溜まってしまう「卵巣嚢腫」。この卵巣嚢腫の原因とは一体何なのでしょうか?卵巣嚢腫の一種「チョコレート嚢腫」の解説を中心にご紹介していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

卵巣嚢腫の原因は?

卵巣嚢腫とは、液体や脂肪が卵巣内に溜まった袋のような良性腫瘍のことで、発生する原因は、未だはっきりとは解明されていません
卵巣嚢腫は以下の4種類に分類されるます。

漿液性嚢腫
卵巣から透明の漿液が分泌されることにより起こり、年齢に関わらず発症します。
粘液性嚢腫
ゼラチン状の粘液が溜まることにより起こり、年齢に関わらず発症します。
成熟嚢胞性奇形腫(皮様嚢腫)
生殖細胞が分裂した時に、成熟と途中のものが混入することで、脂肪・歯・毛髪などの組織が混じり合った物質が出来る症状です。20~30代の女性に多く発生します。
チョコレート嚢腫
子宮内膜症が進行すると、卵巣内に嚢胞が形成されるのですが、その内腔に古くなった血液が溜って変色するとチョコレート色に見えることがあります。これをチョコレート嚢腫といいます。エストロゲンに関係して起こる疾患のため、初経~閉経までの生殖可能な女性に発症するとされています。

卵巣嚢腫の発症原因は未だはっきりとは解明されていません。ただし、体質や生活習慣の如何に関わらず、誰にでも発症する可能性がある病気だということを知っておきましょう。

卵巣嚢腫のひとつ、チョコレート嚢腫とは?

チョコレート嚢腫とは、通常は腟から体外へ排出するはずの月経血が、卵管を逆流することにより、月経血に含まれている子宮内膜が腹腔内や卵巣で増殖・出血を繰り返す症状のことです。この、卵巣内部にできた子宮内膜(子宮内膜様組織)をチョコレート嚢胞といいます。月経時に卵巣嚢胞に溜まった血液は、時間が経過すると酸化してどろどろの状態になることから、チョコレート嚢胞と呼ばれるようになりました。

チョコレート嚢腫になるとどんな症状が出てくる?

チョコレート嚢腫の代表的な症状は、以下の通りです。

月経痛
嚢腫の癒着が進行することにより、月経のたびに月経痛が酷くなります。
下腹部、腰痛
嚢腫の癒着がさらに進行すると、月経時以外の時でも下腹部や腰に痛みを感じるようになります。
排便痛
嚢腫が直腸と癒着することにより、排便時に痛みを伴うようになります。
不妊
嚢腫の癒着が進行すると卵胞の成長が妨げられるため、妊娠しにくくなることがあります。
茎捻転
水風船のような状態になった嚢腫が、何らかの原因で捻じれてしまう症状です。
重症の場合は、ショック状態になり命に危険を及ぼすこともあります。
嚢腫破裂
月経時に嚢腫の中身が増える、炎症を起こすなどにより、卵巣内部の古い血液が骨盤内に流出する症状で、酷い痛みを伴います。

チョコレート嚢腫をほうっておくとどうなる?

チョコレート嚢胞はがん化することがあるため、以下のような場合は注意する必要があります。

  • 高齢である程度の大きさの嚢腫がある
  • 年齢に関わらず、嚢腫が古くなっている場合

がん化する原因ははっきりとは解明されていませんが、酸化ストレスや上皮間葉転換などが関係していると考えられています。がん化する確率は1000人中7人(0.7%ほど)といわれているため、チョコレート嚢腫と診断された人は、3ヶ月~半年に1度は診察を受け、がん化の有無を確認する必要があります。

また、年齢によっては卵子の質や量に影響を及ぶ可能性があるため、妊娠を希望している人は、なるべく早めに専門医の診察を受けましょう。チョコレート嚢腫患者の不妊の確率は35~50%といわれています。

なお、以下のようなリスクが高まることにも注意する必要があるでしょう。

嚢腫の破裂、感染
チョコレート嚢腫は、破裂や感染を引き起こすことがあり、破裂を起こすと腹部にじわじわとした痛みを感じます。そのため、腹部に痛みがある場合は早急に婦人科を受診しましょう。
細菌感染
卵管造影、子宮体がん検査、人工授精、体外受精、肺移植などを行った際に、腹膜炎などの細菌に感染することがあります。施術後に腹痛や発熱などが現れた場合は、すぐに担当の医師に相談しましょう。
前置胎盤
子宮内膜症(特に重度の場合)の人が妊娠した場合、前置胎盤(胎盤が子宮口を覆う症状)になりやすくなるとされています。その発症率は内膜症が軽度の人と比較すると約11倍ともいわれているため、妊娠した場合は経過観察をしっかりと行う必要があります。

ひどい月経痛があれば病院で検査を!

月経痛が酷い人は、子宮内膜症になる確率が、痛みが軽度の人の約2.6倍になるといわれており、子宮内膜症が起因となり発症するチョコレート嚢胞になる確率も必然的に高くなります。月経痛、下腹部痛、排便痛、性行痛などがある人は、子宮内膜症およびチョコレート嚢胞の有無を調べるため、婦人科クリニックや子宮内膜症の専門外来などで診察を受けましょう。

また、子宮内膜症の有無は、子宮頸がんの健診などで軽く診るくらいでは確認できないことが多いので、検診を受ける際には必ず、問診票や医師の問診時に「内膜症の有無を調べてほしい」ことを伝えるようにしましょう。
検診センターや検診バスで検診を受けたことがある人も、改めて婦人科で診てもらいましょう。

おわりに:月経痛が酷い人は婦人科や専門医の受診を

卵巣嚢腫とは、液体や脂肪が卵巣内に溜まった袋のような腫瘍のことで、発生する原因は未だはっきりとは解明されていません。ただし卵巣嚢腫の一つであるチョコレート嚢腫は、通常は腟から体外へ排出するはずの月経血が、卵管を逆流することにより起こ流とされます。月経痛、下腹部痛、排便痛、性交痛などがある人は、子宮内膜症およびチョコレート嚢胞になる確率が高くなるため、婦人科クリニックや子宮内膜症の専門外来などで診察を受けましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

腰痛(107) 月経痛(7) 原因(608) がん(94) 子宮内膜症(35) 卵巣嚢腫(9) 生理痛(21) わからない(2) チョコレート嚢腫(5)