記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/7/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
一度習慣化してしまうと、なかなかやめられないのがお酒。実際アルコール依存症の患者さんは、病院でせっかく入院治療をしても、その後断酒継続に失敗してしまう方も少なくありません。
そこで今回は断酒を成功・継続させる方法や、近年新しく登場した「断酒」ではない「減酒」という選択肢についてご紹介していきます。
アルコール依存症の治療では、多くの場合、病院での入院治療が選択されます。入院中は患者自身に依存症への自覚を持たせるとともに、長時間かけてのアルコールの解毒、精神療法、リハビリテーションなどが行われますが、実は退院直後に再びお酒を飲んでしまうケースは非常に多いといわれています。
再飲酒のきっかけは人によってさまざまですが、特に治療して間もない間は断酒が定着していないため、ちょっとしたストレスで習慣的に飲酒してしまうことがあります。また、自宅に戻れたことでの解放感から、つい飲酒してしまうケースも少なくありません。
断酒成功率でいうと、退院後の2.5ヶ月以内に再飲酒してしまう患者はおよそ5割、1年以内に再飲酒してしまう患者はおよそ7割に昇るというデータがあります。なお、再入院を繰り返すほど、断酒成功率は低下していく傾向にあるようです。
ご紹介した断酒成功率の低さからは、アルコール依存症患者にとっての断酒継続の難しさがうかがえます。ただ一方で、断酒を成功させている患者も少なからず存在します。特に退院から2年以上経過した患者は、安定して断酒を続けられている傾向にあるようです。
そこで、断酒の成功率を上げるコツをご紹介します。
イライラしたりストレスが溜まったとき、空いた時間があるとき、飲み会に誘われたときなど、人によって飲酒のきっかけはさまざまです。再飲酒を避けるには、こうしたきっかけとなる要因を徹底的に避けることが重要になります。
具体的には、ストレスやイライラの元となる場面を避ける、周囲には断酒中であることを明言して飲み会の誘いは断る、飲み友達とは連絡をとらないようにする、居酒屋などがある繁華街には近づかない、お酒以外の楽しみや趣味を見つける、といったことです。
なお、断酒を始めたらノンアルコールビールの摂取も控えた方がいいでしょう。お酒を想起するものを飲むと、たとえアルコールは入っていなくても飲酒習慣や快楽が蘇り、再飲酒のきっかけとなる恐れがあります。
断酒は1日1日の積み重ねです。断酒日記をつけることで過去の自分の葛藤や努力を確認できると、断酒継続へのモチベーションにつながることがあります。
自助グループとは、同じアルコール依存の問題を抱えた人たちが自発的につながり、結びついた集団のことです。アルコール依存症を一人で克服するのは非常に難しいですが、自助グループのメンバーと体験を共有し、励ましあうといった精神的な支えがあることで、断酒が長続きしやすくなります。
アルコール依存症の主な自助グループとしては、以下が挙げられます。参加にあたっての詳細については、各HPをご参照ください。
また、自助グループのほか、アルコール依存症からの回復をサポートするリハビリ施設「マック(MAC)」の活用もおすすめです。
従来、アルコール依存症治療では断酒が絶対でした。しかし、「病院に行く=無理やりお酒をやめさせられる」というネガティブなイメージがついたためか、日本国内に100万人いるとされるアルコール依存症患者のうち、実際に病院で治療に通っているのは4%ほどという受診率の低さが問題視されるようになりました。
そこで近年、国立病院機構久里浜医療センターが国内初の「減酒外来」を開設しました。この減酒外来は、アルコールとの付き合いに問題を感じており、お酒を減らしたり、お酒との付き合い方を変えたい人を対象とした診療科です。
実際の診療では、患者の依存症のレベルや体調の検査をした後、「今後どんな飲み方にしたいのか」という目標や現状の飲酒頻度について問診し、医師がその状態に合わせたアドバイスを行います。そして次回診察までの期間は、患者自身が飲酒日記をつけ、それを踏まえた上で今後の治療方針について考えていくこととなります。
減酒外来では断酒だけでなく、お酒の量を減らすことや問題のない飲み方をすることへのサポートにまで間口を広げたことで、これまで病院での治療を避けていた人も通院しやすくするという狙いがあります。
この「減酒」というのは主にヨーロッパでの治療方針で、実際いくつかの研究によれば、「アルコールに問題を感じている人が減酒をすると、身体や精神面での健康度の上昇が見られた」そうです。
ただ、減酒をしても改善が見られない人や、重度の依存症患者には、断酒がすすめられることになります。
アルコール依存症の入院治療が終わって退院した直後、再飲酒してしまう患者さんは少なくありません。断酒の継続には確かに忍耐が必要ですが、お酒を飲みたくなる要因を排除したり、新しい趣味を見つけたり、同じ仲間と励ましあったりすることで、安定的に断酒を続けられる可能性が上がっていきます。
また、近年では「断酒」ではない「減酒」という治療方針も注目を集めつつあります。ご紹介した減酒外来は、アルコール依存症の人でも受診できるので、お酒との付き合い方でお困りの方は、一度問い合わてみてはいかがでしょうか。