妊娠中に気をつけたい感染症の種類は?

2018/7/27

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

赤ちゃんの命を守るため、妊娠中は特に感染症に注意する必要がありますが、妊婦さんが感染すると危険度の高い感染症にはどんなものがあるのでしょうか。以降でご紹介していきます。

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妊娠中に気をつけたい感染症の種類、「トーチ症候群」とは?

妊娠中に気を付けておきたい感染症に、トーチ症候群というものがあります。

トーチ症候群とは妊娠中に感染することで胎児に重篤な障害を与え、さらには流産も引き起こす可能性のある母子感染症を指します。具体的には、トキソプラズマ症(Toxoplasmosis)、梅毒やB型肝炎、水痘やEBウイルスといったその他の感染症(Other infections:)、風疹(Rubella)、サイトメガロウイルス(Cytomegalovirus)、単純性ヘルペス(Herpes simplex virus)であり、これらの感染症の頭文字をとってトーチ(Torch)感染症と呼んでいます。

日本での発症頻度を見てみると、このうちサイトメガロウイルスが最も多く、1年間の感染症者数は後遺症がある場合で約1000人、次いでトキソプラズマが多く1年間で100~200人と推定されています。

妊娠中に気をつけたい感染症①:トキソプラズマ症

トキソプラズマ症とは、十分に加熱されていない生肉やトキソプラズマに感染している生野菜の摂取、土いじりやトキソプラズマに感染している猫の糞を触ることなどによって感染する感染症で、特に妊娠後期に感染すると高い確率で胎児へ感染する病気です。
早期からの胎児感染では死産、流産、水頭症、脈絡膜炎による視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害といった症状が、後期に感染し胎内で無症状だったとしても、出生後しばらくしてから視力障害などが出現する恐れがあります。

予防としては生肉の摂取を避けて、お肉はよく焼いてから食べることです。また、妊娠中はガーデニングといった土いじりを避け、猫をペットとしても飼い始めないことも感染予防として効果的です。ちなみに、妊娠前から猫を飼っている場合は、糞の処理をしないようにすることが感染予防へとつながります。

妊娠中に気をつけたい感染症②:サイトメガロウイルス感染症

サイトメガロウイルスは最も高頻度に胎内感染を起こし、乳幼児の神経系に後遺症を残す感染症として知られています。ウイルスは必ずしも胎児に感染するものではありませんが、その確率は初感染で約40%、さらに出生後に症状が出る確率は20~30%となります。

サイトメガロウイルスは母乳、尿、唾液といった体液から感染します。特に子供の尿や唾液から感染する可能性が高いため、第2子以降を妊娠している場合や子供の保育に関する仕事に従事している場合には、尿を直接触れることを避け、子供の食べ残しなどを食べないようにすることが感染を予防することに繋がります。
また、体液によって感染するため、妊娠中の性行為では避妊具を装着することが予防となります。

トキソプラズマとサイトメガロウイルスの共通点は?

トキソプラズマとサイトメガロウイルスには共通点がいくつかあります。
1つは有効なワクチンが無いということです。そのため、感染を予防するためには感染経路を断つということが必要になります。

2つ目は、いくら気を付けていても完全に感染を予防することが非常に難しいということです。

3つ目に母体への症状がほとんど見られないため、子供に症状が出現しない限り発見が非常に難しいということです。早期発見のための検査を健診に盛り込んでいる施設も少ないため、発見が遅くなってしまう傾向にあります。

おわりに:感染予防策を知り、妊娠中の感染症に注意しましょう

妊娠中に注意すべきトーチ感染症。中でも特にトキソプラズマとサイトメガロウイルスによる感染症は、母体に症状がほぼ見られないにも関わらず、胎児の成長や健康に大きな悪影響を与える恐れがあります。妊娠中はできる限りの感染症予防に努めましょう。

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