記事監修医師
川崎たにぐち皮膚科、院長
アトピー性皮膚炎というと、子供の頃に発症するものだと思いがちはないでしょうか。しかし実際は、大人になってから発症するケースもあります。そこで今回は、大人のアトピー性皮膚炎の原因や対処法などをご紹介します。
大人になってからアトピー性皮膚炎になることや、子供の頃に治ったアトピー性皮膚炎が大人になって再度症状として現れることはあります。
アトピー性皮膚炎は一般的に乳児期の頃、顔や頭から症状が現れ、さらに成長すると肘や膝などの関節部に多くみられる傾向にあります。また、耳の付け根のくぼんだ部分に耳切れがみられる場合もあります。
一方、大人の場合には顔のほか、首や背中、胸など上半身に症状がみられやすい傾向があります。また大人のアトピー性皮膚炎は喘息やアレルギー性鼻炎など、他のアレルギー疾患の患者さんと比較して多く、20~44歳では約4割に上るともいわれています。また65歳以上になっても症状がみられる場合もあります。
大人がアトピーを発症する原因には、主に以下のようなものが考えられます。
大人が発症するアトピー性皮膚炎の原因は多岐にわたります。子供の頃に発症したものが続けて症状として現れているものや、外からの刺激だけでなく、精神的なものが原因となっていることもあります。たとえば、就職や転職による環境の変化によって発症するケースもあります。
またストレスだけでなく、食生活の乱れや喫煙習慣など、生活習慣の乱れなども重なり、発症する場合も考えられます。
子供の場合にはまず皮膚の乾燥がみられ、皮膚のバリア機能が低下して関節の内側などを中心にブツブツなどの症状が現れるのが一般的です。また乾燥した肌はザラザラし、掻きむしることによって皮膚が分厚くなり、ゴワゴワした感触となることもあります。
大人の場合にも同じような症状がみられ、特に顔に症状が出た場合には治りづらい傾向にあります。またほかにも、肌表面の皮膚がフケのように剥がれ落ちる鱗屑、赤く腫れる紅斑、またカサブタ状になる痂皮など、その症状や程度はさまざまです。
アトピー性皮膚炎を改善するための方法には、主に以下のようなものがあります。
まずは身体を清潔に保ち、血行を良くするためにも、毎日入浴をするかシャワーを浴びましょう。お湯の温度が熱い場合はかゆみを助長する場合があるため、温度は36℃から40℃と低めに設定することが望ましいです。
また洗浄力の強いシャンプーなどは、皮膚のバリア機能の低下に繋がる恐れがあります。弱酸性のものなど、皮膚への刺激ができるだけ少ないものを選ぶようにしましょう。
入浴後はボディクリームなどで肌を保湿し、また常に爪を短く切っておき、掻きむしった際の悪化を防ぎましょう。アトピー性皮膚炎の場合、セラミドと呼ばれる保湿成分が通常よりも少ないことがわかっています。セラミドを含むもの、または界面活性剤などの余分な添加物が含まれていない化粧品などでの保湿を心がけましょう。
3歳以下のアトピー性皮膚炎の場合、牛乳などの食物アレルギーが症状が悪くなる原因となることがありますが、大人の場合は食事の影響力は低いといわれています。ただし、香辛料などの刺激が強いもの、脂肪や糖分の過剰摂取などはかゆみを助長する場合があるため、注意が必要です。
また肌の新陳代謝が活発に行われるのは、睡眠中といわれています。十分な睡眠を心がけ、症状の改善につなげましょう。
さらに日々のストレスによって症状が悪化している場合も考えられます。そのため、自分に合ったストレス解消法を見つけ、こまめにストレスを発散していくこともひとつの方法といえるでしょう。
病院では、アレルギー反応を引き起こすアレルゲンを調べることができます。検査項目には花粉やダニ、食品などさまざまなものがあるため、アレルゲンとなっているものがわかった場合には、食生活や環境改善などで症状が改善される可能性があります。
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下している状態のため、紫外線からの刺激にも敏感になっています。医療機関などで治療に使われる特定の波長のみを用いた紫外線治療は治療として有効ですが、太陽から降り注ぐ紫外線には様々な波長の紫外線が含まれています。日傘や帽子などで紫外線を避ける、日焼け止めを塗るなどの紫外線対策で、できる限り紫外線からの刺激を避けるような生活を心がけましょう。
また衣類については、皮膚の刺激となるような合成繊維は避け、綿や麻などの天然繊維のものや締め付け感の少ない衣類を選ぶなどの配慮も大切です。
大人のアトピー性皮膚炎の場合、過度のストレスや生活習慣の乱れなど、さまざまな原因から発症する場合があります。また大人になってから突然症状がみられるケースもあります。日頃のスキンケアや生活習慣の見直しなどで、症状の改善に努めましょう。
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