甲状腺機能低下症の場合、不妊治療はどうやって進めるの?

2018/8/28

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

甲状腺機能低下症は20~40代の女性に多いとされている病気です。
今回は、甲状腺機能低下症の症状や、不妊治療を行う場合の治療方法などをご紹介します。

甲状腺機能の低下は不妊の原因って本当?

甲状腺はのどぼとけの下にあり、甲状腺ホルモンを作り出している臓器です。蝶が羽を広げたような形をしており、縦がおよそ4cm、重さはおよそ20g以下と小さく、腫れることがなければ首を触ってもわかりません。甲状腺ホルモンには身体の成長を促進させ、細胞の新陳代謝を活発にするはたらきがあります。

卵子が入っている袋である卵胞の成長にも関わっているため、甲状腺の機能が低下することで卵胞は成長することができなくなるといわれており、流産を3回以上連続して繰り返す「習慣性流産」になる可能性もあります。甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の分泌増加を通して血中プロラクチン値が上昇することで排卵障害を引き起こすこともあります。

甲状腺機能が低下したときの症状ってどんなもの?

甲状腺機能低下症の主な症状には、以下のようなものが考えられます。

無気力になる、やる気が出ない

何かをするときの気力が低下し、行動することが億劫になる場合があります。ゆっくりとした話し方になったり、眠気にすぐ襲われることもあります。

体重が増加する

食欲低下により、食べる量は少なくなります。しかし新陳代謝の低下によってむくみが生じるため、体重が増えることがあります。またお腹が張ることで便秘になりやすくなるといわれています。

身体のむくみを感じる

朝の時間帯、特に起床時に顔や手のむくみがみられますが、お昼頃になると症状が少し良くなるといわれています。舌や唇などにむくみが現れると、話しにくくなることもあります。

皮膚が乾燥する

新陳代謝の低下により、皮膚が乾燥しやすい状態になります。また、髪の毛の量が減る場合もあります。

他にも、肩こりがひどくなる、心臓の動きが遅くなることで脈の回数が少なくなるなど、全身のあらゆる場所に症状が現れるといわれています。

甲状腺機能が低下している場合、不妊治療はどうやって進めるの?

健康な女性の場合、甲状腺ホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモン(TSH)の正常値は「0.4~3.0μU/ml」といわれ、米国のガイドラインでは「TSH<2.5」と定められています。このような考えの下、一般的に妊娠を希望している女性は、TSHが2.5以下であることが望まれます。
甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンが減ることにより、分泌量を補うためにTSHが増加します。甲状腺ホルモンの量が実際に少ない、もしくはTSH>10のような著明な甲状腺機能低下症を認める場合は甲状腺機能低下症の治療を行い、正常値となってから不妊治療の開始をすすめられることもあります。

甲状腺ホルモンには、T4(サイロキシン)とT3(トリヨウ素サイロニン)の2種類があります。治療には、これらの甲状腺ホルモンを補うことが必要です。治療に使われる甲状腺ホルモン薬には、主に以下の2つがあります。

チラーヂン®S

甲状腺ホルモン補充療法を行う際、最もよく使わわれるのが「チラーヂン®S」です。T4と呼ばれるホルモンですが、T3に変換され、その効果を発揮します。もともと身体の中にある成分で作られているため、副作用はほとんどないといわれています。ただし、用法用量を守らない場合は手指の震えや発汗の促進などがみられることもあります。

チロナミン®

T3ホルモンで、即効性はありますが、効果は長続きしないといわれています。チラーヂン®Sと同様、用法用量を守らない場合は手指の震えや発汗の促進などがみられることもあります。

T3はT4よりも血中でタンパク質と結びつきにくい上に吸収されやすく、排泄が早いことから、内服後は濃度をある程度一定に保つことが難しいといわれています。一方、T4はゆるやかにT3へ変換され、血中濃度を安定して保つことができるため、一般的にはチラーヂン®SなどのT4の薬が使われます。T4の薬はどの時間帯に服用しても効果にあまり違いがないことが特徴です。

おわりに:甲状腺機能低下症を改善させた後に、不妊治療を開始しよう

甲状腺機能低下症は不妊の原因の一つともいわれています。きちんと治療にあたってから不妊治療を開始した方が妊娠の確率も高まるでしょう。

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