切れ痔(裂肛)とは―原因・症状・治療法を解説!

2018/8/23

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

痔の一種「切れ痔」とは、どのような病態をいうのでしょうか?切れ痔の原因や症状、治療法など、全般的な情報について解説していきます。

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切れ痔(裂肛)とは?

裂肛とは、肛門上皮にできるびらん、裂創、潰瘍のことで、排便時に肛門が傷つくことにより、鋭い痛みや出血が起こる症状のことをいいます。一過性の場合もありますが、症状を繰り返すことにより慢性化すると、肛門の狭窄が起こり、排便がさらに困難になるとされています。
裂肛の患者は20~40代の女性に多く、問診・触診・肛門鏡検査などの検査により診断されます。

切れ痔の種類

急性裂肛
便秘が続くことにより便が固くなり、排便する際に肛門上皮が裂けると、浅く縦型の潰瘍ができます。これは裂肛の初期状態といわれています。
慢性潰瘍性裂肛
急性裂肛の治療が十分に行われずに症状が進行し、炎症が肛門括約筋にまで及ぶと、肛門括約筋の痙攣や肛門上皮の潰瘍が悪化し、最終的には肛門狭窄(肛門が硬くて狭くなる状態)が起こることがあります。

切れ痔(裂肛)になるとどんな症状が出てくるの?

排便時に硬い便により傷がつくと、肛門上皮に痛みを感じます。基本的には、痛みは排便時のみで比較的軽いとされていますが、排便後も痛みが続く場合もあります。また肛門狭窄になることで痛みが強まることがあります。

切れ痔による出血は、鮮紅色でトイレットペーパーに付着する程度の量のことが多いですが、便器が赤くなるほどの量が出ることもあります。そして、裂肛が慢性化した場合は、見張りイボやポリープなどの皮膚の突起物が大きくなることにより、いぼ痔の脱出・違和感・掻痒感などを伴うことがあります。

切れ痔(裂肛)ができる原因は?

最も多い原因は、便秘や下痢により肛門周辺の皮が切れることとされており、元々肛門が狭い人は特に切れ痔になりやすいといわれています。また、裂肛の原因は一つとは限らず、下記のような複数の病因が組み合わさって起こることもあります。

肛門上皮の損傷

硬い便が肛門管を通過することにより起こる症状で、慢性便秘症が原因となっていることが多いとされています。また、下痢によって症状悪化に繋がることがあります。

肛門腺の感染

肛門小窩の感染が、裂肛の原因となることがあります。

肛門上皮の虚血

肛門後方の血流は他の部位と比較して少なく、末梢血管がまばらであることなどから、裂肛が起こりやすくなると考えらえています。

肛門管静止圧の上昇

圧が上がることにより肛門管への血流が阻害されると、裂肛が起こりやすくなるといわれています。

切れ痔(裂肛)はどうすれば治る?

保存的治療法

便通の調節

切れ痔の原因である便秘や下痢を予防するためには、水分や食物繊維の十分な摂取を心がけ、食事をコントロールすることが大切です。また、膨張性下剤の内服が行われることもあります。

肛門の衛生

痛みや見張りイボなどがある場合は、肛門の衛生を保つために、入浴や坐浴を行いましょう。体を温めることにより血流が良くなると、傷の早期治療や痛みの改善効果があります。

外用薬、内服薬

有効な外用薬として、局所麻酔薬やステロイド含有の注入軟膏、坐薬などがあります。また、併用する内服薬として、鎮痛薬や抗炎症薬などがあります。

外科的治療

肛門拡張術

軽度な器質的な肛門狭窄の場合に用いられる治療法で、肛門に指を挿入し拡張する施術が行われます。切開は行いません。

側方内括約筋切開術

機能的な肛門狭窄の場合に用いられる治療法で、狭まった内括約筋を浅く切開するために、肛門の皮膚からメスを入れます。

肛門皮膚弁移動術

器質的な肛門狭窄の場合に用いられる治療法で、肛門を拡張するために裂肛部分・肛門ポリープ・見張りイボなどの切除を行い、肛門の外側の皮膚を一部分移動させます。

おわりに:重度の切れ痔では手術が必要になることも

切れ痔になると、排便時の痛みや少量の出血などの症状が現れるのが一般的です。基本的には保存療法を行い様子を見ますが、肛門狭窄が見られる場合などは手術が必要となります。

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