溶血性尿毒症症候群の症状の特徴は?下痢以外にどんな症状が出るの?

2018/9/26

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「溶血性尿毒症症候群(HUS)」とは、どういう病気なのでしょうか。症状や原因、治療法などについて、溶血性尿毒症症候群の種類ごとに詳しく解説していきます。

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溶血性尿毒症症候群とは

溶血性尿毒症症候群(HUS)」とは、赤血球が壊れて起こる「溶血性貧血」、血小板が多量に消費されることによる「血小板減少」、腎臓の働きが急速に低下する「急性腎不全」をともなう症候群です。

HUSには、先行して下痢が起こる「典型的HUS」と下痢のない「非典型的HUS」の2種類があり、典型的HUSは一過性で集団発生することがあり幼少時に多くみられます。また、非典型的HUSは遺伝性の場合もあり、年長から成人に多くみられ再発することもあります。どちらも先行して何らかの感染症をおこしており、症状は似ていますが原因、治療は異なります。

溶血性尿毒症症候群の原因は?

どちらも原因は明らかになっていませんが、典型的HUSでは大腸菌などがつくるベロ毒素が「腸管出血性大腸炎」を起こしHUSを発症するといわれています。

多くは食品などに含まれる大腸菌O-157が原因となりますが、ベロ毒素をつくる他の大腸菌も原因となり得ます。腸管出血性大腸炎は小児、高齢者に多く、夏季は食中毒や飲水汚染による集団発生が起こりやすく、冬季は5歳以下の小児に特に多くみられます。

非典型的HUSは、多くは遺伝性疾患とされています。体の免疫反応に関係し病原体などを体から排除する役割を持つ補体を調節する因子の異常により、必要以上に活性化された補体が病原体だけでなく自身の組織も攻撃してしまうことで、HUSを発症するといわれています。

溶血性尿毒症症候群を発症すると、どんな症状がみられる?

典型的HUSでは、原因食品をとった後3~9日で腹痛、おう吐、血便をともなう下痢、発熱、顔色の悪さなどがあらわれ、さらに4~15日後にHUSを発症します。血便から4日以内の早期に軽度の意識障害、その約25%に昏睡、たび重なる痙攣(脳症)などがあらわれ、そのほか重い合併症として乏尿、無尿などを起こす腎不全、重症膵炎、心筋障害、耐糖能異常、腸穿孔などが起こる場合もあります。

非典型的HUSは、風邪や腸炎などの感染症や出産をきっかけに発症することが多く、血小板減少による点状や斑状の紫斑など出血症状や、溶血性貧血による全身の倦怠感や息切れが起こります。また腎臓障害からむくみや尿量の減少、食欲低下などの尿毒症症状、発熱や神経症状、消化器症状などがみられる場合もあります。

溶血性尿毒症症候群の治療法は?

典型的HUSの治療には、基本的に「支持療法」として、輸液や血液透析などによる体液管理、利尿薬による血液管理のほか、状態により抗凝固剤が用いられ、脳浮腫には徐水、グリセオール投与などが行われます。場合により「特異的治療法」として、抗菌薬や抗血小板薬による治療や血漿交換療法が用いられることもあります。

非典型的HUSで主に用いられるのは、血漿交換や血漿輸注といった血漿療法、補体の成分に対する抗体による治療が行われています。腎臓機能が低下している場合には、透析治療を行うこともあります。

おわりに:HUSは大きく2種類に分けられる

溶血性尿毒症症候群(HUS)のうち、典型的HUSは先行して下痢があり、非典型的HUSにはそれがありません。このどちらかによって原因も治療法も異なるので、該当する症状があればまずは専門外来を受診し、診断を受けましょう。

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