記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/11
記事監修医師
前田 裕斗 先生
男性不妊の原因のひとつに「遺伝子異常」があります。これは男性だけが持つ「Y染色体」の遺伝子の一部が欠損することで起こるといわれていますが、この遺伝子異常は子供に遺伝するのでしょうか。
この記事では、男性不妊と遺伝子異常について解説しています。
不妊とは、子供を望むカップルが避妊せずに性生活を送っているにもかかわらず、一定期間がたっても妊娠しないことです。日本産科婦人科学会では、以前は2年以上の期間とされていましたが、現在は1年に短縮されています。妊娠というと、女性側に原因があるとされがちですが、近年は、男性側にも要因があることが明らかになってきています。
男性側の不妊の原因には、精子の量や形の異常や機能不全など、精子をつくる過程に問題がある造精機能障害のほか、精子を射出する過程に問題がある精路通過障害、勃起障害(ED)や腟内射精障害などの性機能障害などがあります。
そして、男性側の不妊の中には「男性だけが持つ遺伝子」の異常が原因になることがあります。つまり、自分の子供(男の子)に不妊が遺伝する可能性があるということです。ただし、遺伝子の異常があるからといって必ず不妊になるとは限りません。
近年の研究によって、無精子症の原因として無精子症因子(Azoospermia factor:AZF)領域と呼ばれる遺伝子群が明らかになりました。
人間は女性はXX、男性はXYという性染色体を持っており、Y染色体は男性のみがもつ染色体です。AZFはY染色体に存在しており、遺伝子群であるため複数の遺伝子が含まれています。このAZFに含まれる遺伝子の一部が失われると、無精子症や、精子量が著しく少なくなることがあります。
AZF領域は3つの領域に分けられ(AZFa、AZFb、AZFc)、このうちAZFa欠損、AZFb欠損、AZFbとAZFcの両方欠損では、不妊治療のために精巣から精子を取り出せる可能性がほぼゼロになるといわれています。
AZFcのみの欠損では、精子を取り出せる可能性があるため、顕微授精の選択肢があります。
無精子症の患者さんの中で、AZF領域の欠損がある人は5〜10%存在するのではないかと考えられています。ただ、染色体の形状だけでははっきりできず、解明するには遺伝子解析が必要です。
男性だけが持つY染色体は、代々、その人の家系の男性から受け継がれてきます。もともと染色体異常があったのか、何らかのきっかけで突然変異が起こったものかはわかりませんが、もし男の子が授かったときにはY染色体は受け継がれていくことになり、子の世代でも遺伝子異常による不妊症を抱えてしまう可能性があります。
不妊は女性だけの問題ではなく、男性側にも要因がある可能性が明らかになっています。
遺伝子異常による不妊は、男性だけが持つY染色体にある遺伝子領域(AZF)が欠けると、精子を作る機能に影響することが原因といわれています。
ただ、現在の高度治療においては子供を授かれる可能性はあるものの、必ず成功すると断言できるわけではありません。メリットやデメリット、費用のことなど、医師からの十分に説明してもらい、納得のしたうえで治療を受けるようにしましょう。
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