慢性腎臓病のステージとは―治療法や食事の内容が変わるの?

2018/9/7

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

慢性腎臓病で言われるステージとはどのようなものなのでしょうか?ステージによって治療法や食事の内容が変わることはあるのでしょうか?慢性腎臓病のステージについて解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

慢性腎臓病のステージはどうやって決まる?

原因となった疾患(原疾患)を問わず、以下のいずれかの症状が見られる場合、または両方の症状が3ヶ月以上持続する場合、慢性腎臓病(CKD)と診断されます。

  • 尿検査、血液検査、画像検査などにより腎障害が見られる(中でも、蛋白尿が0.15g/gcr以上出ている場合)
  • 糸球体ろ過量(GFR)が60ml/分/1.73m2未満の場合

慢性腎臓病(CKD)の診療計画を立てる際には、腎臓の機能を5段階のステージ(病期)に分類します。このステージ分類では、GFR(糸球体ろ過量)が重要な指標となるのですが、GFRが低値の場合は、糸球体が老廃物を尿中に排出する力が弱いことを示しており、腎臓の機能が低下していることを表しています。

GFRは血清クレアチニン(Cr)値と、年齢、性別から推算可能で、このようにして推算されたGFRのことを推算GFR(eGFR)といいます。

慢性腎臓病の重症度を表す「ステージ」とは

ステージ1

重症度
腎障害は認められるがGFR(eGFR)が正常または亢進を示す
進行度による分類
≧90(CKDの危険因子を有する状態で)

腎臓機能が正常もしくは高値の状態で、蛋白尿が2+以上の場合や、血尿と蛋白尿が両方共陽性とされる場合は、専門医への受診が推奨されます。また、蛋白尿などの腎障害が見られない場合でも、年に1度CKDのスクリーニング検査(検尿と採血)を受けることで早期発見に繋がります。
CKDの進行を促す原因となる疾患(高血圧症、糖尿病など)がある場合は、きちんと治療することが大切です。

ステージ2

重症度
腎障害が認められGFR(eGFR)が軽度低下を示す
進行度による分類
60~89

腎臓機能が正常もしくは軽度の低下が見られる状態で、ステージ1の場合と同様に蛋白尿が2+以上の場合や、血尿と蛋白尿が両方共陽性とされる場合は、専門医への受診が必要になります。また蛋白尿などの腎障害が見られない場合でも、年に1度CKDのスクリーニング検査(検尿と採血)を受けて、腎臓の状態を確認しましょう。

ステージ3

重症度
GFR(eGFR)中程度低下
進行度による分類
30~59

腎臓機能が軽度~中程度に低下している状態です。

以下のような症状のいずれかに該当する場合は、専門医を受診しましょう。

  • 同年齢の人と比べて腎臓機能の低下が見られる場合(40歳未満ではGFR60未満、70歳未満ではGFR50未満)
  • 蛋白尿が2+以上の場合
  • 血尿と蛋白尿が両方共陽性とされる場合

また、CKDの進行を促す原因となる疾患(高血圧症、糖尿病など)がある場合は、きちんと治療することが大切です。

ステージ4

重症度
GFR(eGFR)が高度低下を示す
進行度による分類
15~29

腎臓機能の低下に伴い、貧血、ミネラル異常、骨の異常などの様々な症状の合併が起こる可能性が高くなります。専門医を受診し、透析療法や腎臓移植などの治療方法について相談する必要があります。

ステージ5

重症度
腎不全
進行度による分類
<15

末期腎不全とされる状態で、腎臓機能低下に伴い貧血、ミネラル異常、骨の異常などの様々な症状の合併が起こります。専門医で透析療法や腎臓移植について相談し、治療法の選択を行いましょう。

慢性腎臓病の進行を防ぐために食事で気をつけることは?

ステージ1~2

  • 塩分の摂取を6g/日未満に抑える必要があります。蛋白尿が少なく高血圧が見られない場合でも10g/日未満にとどめましょう。
  • 肥満の解消を行い(BMI25未満)、LDLコレステロールを120mg/dL未満に抑える必要があります。
  • 蛋白質の過剰摂取を避け、1.2g/標準体重(kg)日未満にとどめるようにしましょう。
  • 暴飲暴食や栄養バランスの偏った食生活を避ける必要があります。
  • 痛風を患っている場合は、尿量を2L/日以上になるように水分の摂取量をコントロールしましょう。ただし、浮腫みの症状が強い場合は注意が必要です。
  • 炭水化物や糖分の摂取量に注意し、血糖コントロールを行いましょう。

ステージ3~5

  • 蛋白質の過剰摂取は腎臓に負担をかけるため、摂取量に注意しましょう。
  • 塩分の摂取量は3g/日以上、6g/日未満にとどめるようにしましょう。
  • エネルギーが不足すると、体の蛋白質がエネルギーとして使用されることにより、腎臓に有害な物質が増え始めます。体が栄養不足状態に陥らないように、必要なエネルギーはきちんと摂取するようにしましょう。
  • 浮腫みの症状が強い場合は、医師に相談の上、水分摂取量の制限を行う必要があります。
  • 心血管疾患(CVD)狭心症や心筋梗塞の原因となる高リン血症は、血清リン値4.5mg/dL以上になると死亡する確率が高くなるなるとされているため、医師に相談の上、摂取量の制限を行う必要があります。
  • 飲酒はエタノール量で、男性20~30mL/日以下、女性10~20mL以下の適正量範囲にとどめるようにしましょう。

おわりに:ステージに合った治療を受けましょう

慢性腎臓病(CKD)の診療計画を立てる際には、腎臓の機能を5段階のステージ(病期)に分類され、ステージ分類の指標となるGFRが低値の場合は、腎臓の機能が低下していることを表しています。自身のステージに合った治療や食事療法を受けましょう。

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