記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/8
記事監修医師
前田 裕斗 先生
無月経は婦人科ではよくある疾患の一つですが、場合によっては重篤な病気が隠されていることもあります。「生理がない方が楽」「ちょっと遅れているだけ」と軽く考えて、放置してはいけません。ここでは、無月経が体に及ぼす影響やその治療について、詳しく解説していきます。
それまで正常に月経のあった人が、妊娠以外の理由で月経が3か月以上こないことを無月経(続発性無月経)といいます。10〜20代の女性の無月経の原因の多くは、過度のダイエットや運動、肥満、ストレスなどによる女性ホルモンの乱れによって脳の視床下部に問題が生じるために起こります。初期の段階であれば、栄養状態を改善したり、心理的なストレスを取り除くことで、月経も元どおりになるケースが多いでしょう。
また、初経が始まったばかりの時期であれば、ホルモンバランスが安定せず月経周期が乱れることはよくあります。この場合も、しばらく様子を見ることで周期が安定してきます。
ただし、無月経のなかには女性ホルモンをコントロールする脳下垂体の腫瘍や甲状腺や卵巣、下垂体などの内科系の病気が原因となることがあります。また、病気ではなくてもエストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが分泌されなくなることで老化が加速し、骨がもろくなったり、将来的に妊娠しづらい体になることもあるので、注意が必要です。
一般的に、無月経の状態を6か月以上放置すると、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンが正しく分泌されない状態が続くため、子宮筋や子宮内膜が萎縮し、治療にも時間がかかるようになります。また、当然排卵がなければ妊娠することはできません。
無排卵、無月経の状態を放置してしまうと、妊娠しづらい体になるだけでなく、女性ホルモン不足によって、骨や血管、肌や精神状態に悪い影響を及ぼしてしまいます。したがって、「ちょっと遅れているだけ」などと軽く考えて放置していると、健康を害する可能性があります。
無月経の期間が長ければ長いほど、治療にも時間を要します。月経中は腹痛や頭痛に悩まされ、つらい思いをする人も多くいますが、月経は女性の体と心を健やかに保つための重要な役割を担っているのです。少なくとも「3か月以上月経がない」「月経周期が乱れている」状態が続いているようであれば、決して放置せず、すみやかに婦人科を受診しましょう。くり返しますが、6か月以上放置すると回復に時間がかかる傾向がありますので、早めに適切な治療を行うことが大切です。
婦人科では、検査によって足りないホルモンを見極めます。卵巣でエストロゲンが分泌されている場合は、プロゲステロンの働きをする薬を服用するだけで改善傾向がみられます。ただし、卵巣機能が停止していてエストロゲンも不足している場合は、エストロゲンとプロゲステロン両方のホルモン剤の服用が必要となり、症状改善が難しくなります。状態によっては、このようなホルモン療法さえも無効になるケースもみられるため、まずは無月経にならないための予防が重要です。
特に、無月経を引き起こす最大の誘因となるダイエットには、くれぐれも注意が必要です。大幅な体重減少が原因となる無月経は、ホルモン療法で急に生理を起こすと体に大きな負担がかかるため、まずは体重を戻すことからスタートしなければいけません。このような場合、体重を戻すことに時間がかかるだけでなく、全体的な治療が長引く傾向にあります。
女性の体はデリケートなシステムで成り立っています。ちょっとしたストレスやダイエットが、無月経を起こす引き金となるのです。「3か月以上月経がない」「月経周期が乱れている」ような場合にはすみやかに婦人科を受診して、体と心の健康を取り戻してくださいね。
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