記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/10
記事監修医師
前田 裕斗 先生
無月経のほとんどは続発性無月経と呼ばれ、何らかの原因で月経が止まってしまった状態です。しかし、それとは別に、原発性無月経という先天性の原因から月経が起こらない場合もあります。
この記事では、原発性無月経と続発性無月経について、それぞれの原因や治療法を詳しくご紹介します。
ストレスや肥満から無月経になる場合は、続発性無月経と呼ばれる状態です。もともと月経は起こっていたものの、これらのことが原因で女性ホルモンのバランスが崩れ、月経が止まってしまう疾患です。続発性無月経は婦人科ではそれほど珍しい疾患ではなく、過度のダイエット、疲労、環境の変化などで起こることもあります。
また、無月経と行かないまでも、時々月経が起こらない月経不順の場合、正常な月経周期を保っている女性であってもよく起こります。さらに、パニック障害やうつの治療として薬剤を投与している場合、プロラクチンの値が高くなったり、女性ホルモンのバランスが崩れたりして、結果として月経不順や、続発性無月経を引き起こす場合があります。
続発性無月経の起こる具体的な原因は、以下のとおりです。
性腺刺激ホルモン、すなわち女性ホルモンと呼ばれるLHやFSHは、月経や排卵を司るホルモンです。このホルモンは、視床下部の指令によって下垂体から分泌されます。このどちらかの器官がダメージを受けたり、何らかの原因で働かなくなったりすると、ホルモンの分泌が正常に行われなくなります。
多いといわれているのは、肥満やダイエット、多嚢胞性卵巣症候群や早発閉経が原因である場合です。肥満や多嚢胞性卵巣症候群の場合、下垂体のホルモンバランスが崩れたり、男性ホルモンが増えることなどで卵胞がうまく育たなくなります。卵子が未成熟であれば、排卵も起こりません。また、過度なダイエットでは視床下部からの指令がうまく発せられなくなり、早発閉経では、卵巣が萎縮して卵子が育たなくなり、排卵が起こらなくなります。
また、強いストレスも無排卵・無月経を引き起こす大きな要因です。ストレスは視床下部や下垂体の機能不全だけでなく、高プロラクチン血症を引き起こすこともあります。さらに、ストレスから精神障害を引き起こし、抗うつ薬や抗精神薬を使用すると、やはり同じように血中のプロラクチン濃度を高めてしまうことがあります。プロラクチンは妊娠中や授乳中に分泌されるホルモンで、月経や排卵を止める作用があります。
その他、まれですが自己免疫疾患や、がん、子宮のポリープ、子宮筋腫などが原因となることもあります。
続発性無月経の場合、疾患があるかないか、妊娠をすぐに望むかどうかなどによってどの程度、どうやって治療を行うかを決定します。
疾患がある場合、まずは疾患の治療を行います。下垂体に腫瘍がある場合は手術療法、栄養不良や精神障害の場合は、内科や精神科とも連携しながら疾患の治療を行います。多嚢胞性卵巣症候群の場合や、すぐに妊娠を望む場合は排卵誘発剤を使って排卵を起こします。ダイエットやストレスが原因である場合は、ホルモン補充療法とカウンセリングを併用して治療を行います。
過度なダイエットのうち、神経性食思不振症(摂食障害)の場合は、ホルモン補充療法だけでなく心療内科的なアプローチが長期に渡って必要となる場合があります。
原発性無月経とは、18歳を過ぎても初経が起こらないことです。産まれてから18歳を過ぎても、一度も月経がないことで、原因は以下のようなことが考えられます。
ターナー症候群は、性染色体の本数が通常、女性ではXXの2本あるはずが1本しかない染色体異常です。配偶子形成時の染色体不分離が原因と考えられており、女性の2000〜3000人に1人の頻度で発生する染色体異常です。知的発達は正常ですが、低身長や二次性徴の遅れ・欠如が見られ、月経も起こらないことがあります。
カルマン症候群は、嗅覚の低下と性腺刺激ホルモン放出ホルモンが合成されないという疾患です。すなわち、女性ホルモンを分泌させるための司令を出すホルモンが作られないため、第二次性徴がほとんど起こりません。したがって、月経も起こりません。
先天性副腎過形成症では、男性ホルモンが過剰に分泌されます。これによって、女性ホルモンとのバランスが崩れ、多嚢胞性卵巣症候群などと同様、卵子が十分に成熟できなくなります。また、性別不明性器の場合は生殖器官が半陰陽となっているため、十分に卵巣が発育していない場合があります。
原発性無月経の場合、染色体異常があるかどうかをまず検査します。検査の結果、ターナー症候群やカルマン症候群と診断されれば、ホルモン補充療法を中心として治療を行います。また、先天性副腎過形成症の場合も、同じく女性ホルモンを投与するなどしてホルモンバランスを整え、卵胞の発育・成熟を目指します。
染色体に異常がなく、生殖器に何らかの閉鎖があって経血が流れていないだけである場合は、手術によって経血の流れる経路を作ります。しかしいずれの場合も、原発性無月経だけでなく他のさまざまな疾患につながっている可能性があり、本人だけでなく家族にも十分な説明やカウンセリングが求められます。
ほとんどの無月経は続発性の無月経であり、それほど珍しい疾患ではありません。治療も数多く行われており、疾患の治療後はホルモン量の調整で排卵を起こし、妊娠につなげることが可能です。
しかし、原発性無月経の場合は非常にまれなケースであり、また、原発性無月経のみならず他の疾患も抱えている場合が多いです。原発性無月経の治療や妊娠だけでなく、本人の健康面や精神面のトータルなケアが必要になるでしょう。
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