記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/9/18 記事改定日: 2020/8/27
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
マクロファージ活性化症候群(MAS)は、いわゆる「難病」であり、適切なタイミングで適切な治療が行われないと命に関わる場合があります。この記事では、マクロファージ活性化症候群(MAS)の症状、治療法についての基礎知識を紹介していきます。
マクロファージ活性化症候群(MAS)は、全身型若年性特発性関節炎(JIA)の合併症のうちで、もっとも重い合併症です。全身型若年性特発性関節炎(JIA)は、16歳未満の子供に発症し、原因不明の関節の炎症が6週間以上続きます。日本では難病に指定されており、1万人あたり1人にみられることがわかっています。
突然の高熱に加えて傾眠傾向や不穏状態を示す子供もいて、急速に細胞障害が進行し代謝異常も進んでいきます。
短時間で多臓器不全を起こすこともあり、これは治療が間に合わなければ命に関わる症状のため早期の対処が必要です。
全身型若年性特発性関節炎(JIA)にはいくつかのタイプがありますが、そのうちの全身型の約10%がマクロファージ活性化症候群(MAS)に移行するといわれています。マクロファージ活性化症候群(MAS)は突然発症し、その死亡率は8〜22%ともいわれているため、全身型若年性特発性関節炎(JIA)の治療においては見過ごすことができません。
マクロファージ活性化症候群(MAS)は急速に症状が進行するため、診断の遅れは重症化の要因となります。
最終的に診断を確定させるためには、骨髄に針を指して組織を取り出し確認をする「骨髄穿刺(こつずいせんし)」が必要ですが、確定診断を待っていては治療が遅れて重症化を招いてしまうこともあります。
しかし、最近の研究でマクロファージ活性化症候群(MAS)の指標となる項目が抽出されており、検査数値の変化をとらえることで早期の治療開始につなげることができるようになりました。また、治療にあたるスタッフや、見守っている家族しか気づけないような「ちょっとした違和感」も、早期発見のカギとなります。
マクロファージ活性化症候群(MAS)は、自己免疫が異常活性化することで、炎症が起こると分泌される物質(炎症性サイトカイン)が過剰に分泌されることが要因とされています。炎症性サイトカインは外から侵入した病原体を排除する働きをもっている、本来であれば重要な役割を担っている物質です。
しかし、分泌調整ができなくなると、自分の体の細胞を壊したり、血管や血液の異常が起こったりして全身の組織の破壊が起こってしまうのです。
マクロファージ活性化症候群(MAS)治療では、異常に活性化した炎症性サイトカインを除去することと、炎症性サイトカインが影響を与える反応を阻止することが必要です。免疫抑制剤やステロイド剤の投与のほか、体内の血液を入れ替える血漿交換療法などが行われます。
マクロファージ活性化症候群(MAS)は、全身型若年性特発性関節炎(JIA)の合併症のひとつで、発症すると命に関わることもあります。発症すると短時間で重症化し死に至ることがあるため、全身型若年性特発性関節炎(JIA)の治療では注意が必要な症状です。早期発見と治療開始が予後に影響を与えるため、臨床検査数値の変化を見逃さないだけではなく、スタッフや家族が肌で感じる違和感も大切となっています。
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