記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/9/20
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊活中のベビ待ち夫婦のなかには、体外受精など不妊治療による妊娠成功を目指す人も少なくないでしょう。でも、体外受精と顕微授精の違いって、よくわからないですよね。
今回は多くのベビ待ちさんが抱えているであろう素朴なギモン、体外受精と顕微授精の違いについて、解説していきます。
体外受精と顕微授精の方法を簡単に説明すると、それぞれ以下の通りになります。
つまり、体外で受精卵を作って女性の体内に戻すという点は共通していますが、受精の方法において体外受精と顕微授精には大きな違いがあると言えます。
なお、どちらの方法をとって受精卵を作成しても、子供への染色体異常や携帯以上のリスクに大きな差はないと考えられています。
医師から夫婦に対し、体外受精ではなく顕微授精がすすめられるケースでは、以下いずれかの状態であると考えられます。
顕微授精では、自然妊娠であれば自力で卵子までたどり着き卵子の周りの膜を突破するという精子の受け持つ工程をショートカットし、受精させることが可能です。
このため、卵子や子宮内の環境に問題が少なく、男性の精子に自然妊娠に必要な能力が乏しいと考えられたベビ待ち夫婦に、顕微授精が提案されるケースが多いようです。
ここからはより具体的に、実際の手順に沿って顕微授精の治療内容を解説していきます。
あらかじめ採取しておいた卵子と精子それぞれに、以下の処置を施します。
卵子を覆う卵丘細胞(らんきゅうさいぼう)という膜のような細胞を、受精の妨げとならないように特殊な酵素を使って除去しておく。
運動率の良い、比較的良い状態の精子のみを集めるため、運動制止回収法という処理をして運動精子だけを集めておく。
卵子・精子それぞれの準備が終わったら、顕微鏡で観察しながら専用のガラス針で運動精子を1つ吸い取り、そのまま卵子に針を刺して精子を注入します。
このような顕微授精の方法をICSIと言い、日本における顕微授精の主流となっています。
受精に成功し、2~3日かけて受精卵が細胞分裂を始めて胚になってから、状態の良いものを選んで女性の子宮内に戻して移植します。
このまま子宮内で順調に細胞分裂を続け、胚が成長したら妊娠成功です。
ちなみに、一般的な顕微授精による受精率は平均で50~70%、2012年の日本産科婦人科学会の報告では、妊娠率は19%だったと報告されています。
顕微授精による不妊治療・妊娠には、体外受精と同様の合併症や、独特の合併症があります。
体外受精と共通の合併症
顕微授精に特徴的な合併症
また、顕微授精・体外受精で赤ちゃんに染色体異常や妊娠中のトラブルが出る確率は、自然妊娠とほとんど変わらないとされています。
体外受精と顕微授精の大きな違いは、卵子に精液をかけてシャーレ内で受精させるか、卵子に直接精子を注入するかという点にあります。特に、精子の運動率や濃度が低くなる男性不妊に悩むベビ待ちさんには、顕微授精は有効な治療法と言えるでしょう。ただし、体外受精・顕微授精のどちらにも、採卵や移植に伴うリスクはあります。治療を受けるかどうかは、それぞれの治療法をよく理解したうえで決めてください。
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