子どものための鼻腔噴霧式インフルエンザワクチン「フルミスト」

2017/3/30

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

「フルミスト」は、子どものための鼻腔噴霧式インフルエンザワクチンとして2003年米国で開発され、欧米では一般的なインフルエンザワクチンです。
日本ではまだ未承認ですが、日本の製薬会社が2015年に認可承認に向けて申請準備中(2017年3月現在)です。早ければ今秋のインフルエンザシーズンに認可販売されるかもしれません。

「フルミスト」とは?

「フルミスト」は鼻腔噴霧式のインフルエンザ弱毒生ワクチン(4価)です。これは弱毒化したインフルエンザウイルスを含むワクチンを接種することによってインフルエンザの症状を体験することなく、インフルエンザに対する免疫抗体をつくるということです。
接種対象年齢は2歳~49歳ですが、2~7歳に限って80%以上のインフルエンザ予防効果があるとされています。

副作用にはどのようなものがありますか?

「フルミスト」は副作用として考えられるものは非常に少なく、起こり得る副作用としてはワクチン接種を受けてから数日間鼻水が出るくらいです。

どのように接種するのですか?

「フルミスト」は鼻腔噴霧式のスプレーですので、それぞれの鼻腔への噴霧で接種します。子どもにとっては注射針を使わないだけでなく、素早く接種することができ、痛みを伴わず、注射よりも効き目が大きいというメリットがあります。
ワクチンは速やかに体内に吸収されるので、たとえワクチン接種後に鼻水やくしゃみが出ても、効き目がなくなることはないので、単回投与(1回の接種)で十分です。
添付文書によれば、ワクチンを受けたことのない子どもは2回接種を受けるべきだとされていますが、2回目の接種は1回目の接種で得ている防御力をほとんど強化しないので健康的な子どもに2回の投与は必要ないとされています。
2~9歳の身体的な条件によりインフルエンザ感染のリスクが高く、なおかつインフルエンザワクチンの接種を受けたことがない子どもでは2回の投与を受けることが推奨されます。このとき1回目の投与を受けてから2回目の接種までには最低4週間を経る必要があります。

接種をしないほうがいいのは?

以下のような慢性的な疾患がある人は「フルミスト」を接種できません。
・小児喘息(ステロイド薬や高用量吸入ステロイド薬を服用している)
・1年前に喘息発作を起こしたことがある
・慢性鼻炎
・鼻かぜ
・免疫力が著しく低下している
・心臓疾患、肺疾患
・糖尿病
・神経系疾患
・卵白アレルギーなどのアレルギーがある
・妊婦
・ワクチンの成分(ネオマイシンなど)にアレルギー反応がある
また上記のような疾患がなくても、鼻水が出る、鼻がつまっている、呼吸が苦しそうなときは接種しないでください。
鼻がつまっていたり鼻水が出るときは、ワクチンがからだに吸収されない可能性があります。このようなときは鼻の症状が治まるまでワクチン接種は延期しましょう。
また、1週間以上呼吸がゼイゼイして苦しそうなときも、ワクチン接種は控えてください。
フルミストを受けることができなくても、インフルエンザ予防注射は受けられる可能性はありますので、医師に相談してください。

おわりに:待たれる日本での認可!

1週間つづく発熱、悪寒、筋肉痛、頭痛、鼻づまり、喉の痛みなどの症状は、子どもではひどくつらいものです。インフルエンザワクチンはそんな症状から子どもを守ってくれますが、小さな子どもにとって注射針は怖いものです。
痛みのない鼻腔噴霧式のインフルエンザワクチンが認可されれば、毎年インフルエンザシーズンの代名詞ともいえる診療所に響きわたる子どもの泣き声が聞こえなくなるかもしれません。「フルミスト」の日本での認可を待ちたいですね。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

子ども(66) 予防接種(55) 鼻腔噴霧式インフルエンザワクチン(1) フルミスト(1) インフルエンザ弱毒生ワクチン(1)