AID(非配偶者間人工授精)とは?ベビ待ちさんにおススメできる?

2018/12/26

前田 裕斗 先生

記事監修医師

国立成育医療研究センター フェロー

前田 裕斗 先生

不妊治療のなかでも、AID(非配偶者間人工授精)は不妊に悩む夫婦にとって救いの技術となるかもしれません。
こちらでは、AIDとはどのようなものなのか、その治療方法を選ぶことによって生まれる問題について紹介していきます。

AID(非配偶者間人工授精)とは

一般的な妊娠の仕組みでは、男女が性交をして、射精された精子が卵子と出会い、着床することで受精卵となり、妊娠が成立します。

AID(非配偶者人工授精)は、無精子症など何らかの原因によって男性不妊が認められる場合に、パートナー以外の男性の精子を人工的に受精させる不妊治療です。
男性不妊に対するあらゆる治療を行なったにも関わらず、妊娠が成立せず、どうしても子供を希望する夫婦に選択されます。
AIDは、以下の条件に当てはまる場合に適用されます。

  • 無精子症である場合
  • 精巣から直接精子を回収する手術(精巣精子回収術:TESE)を行なったが精子が認められなかった場合
  • 妊娠可能なレベルの精子が認められず、医師にAIDを進められた場合

AIDで提供される精子は妊娠の可能性が高く、感染や遺伝疾患の少ないものが使用されています。
また、同じ精子提供者の子供による偶発的な近親婚を避けるため、一人の提供者が作る子供の数を制限しています
AIDを行なう手順には、以下のことがあげられます。

  • AIDが必要であると記載された診断書の用意。
  • AIDを実施する医療機関にて、夫婦のABOおよびRh血液型を検査します。これは人工授精が明らかにならないよう、夫婦の血液型を考慮し、精子を選択するためです。
  • 夫婦の同意確認を行ないます。婚姻関係や家族関係を明確にするために戸籍謄を用意し、精子提供者の匿名性、秘密厳守、嫡出確認等を明記した合意書を作成します。
  • 夫婦それぞれの身分証の提出。
  • 子宮卵管造影、子宮頸がん検査、感染症検査(B型肝炎、C型肝炎、梅毒、HIV)、クラミジア抗体検査を行ないます。AIDを受ける医療機関外での検査を受けている場合には、その結果を持参します。

AIDが必要であると診断された医療機関で実施する場合などでは、診断書の必要がないケースもあります。
ご紹介した手順は参考としてください。

AIDを選択した夫婦が直面する問題

この治療方法を選ぶにあたって、夫婦ともに様々な精神的問題に直面する可能性があります。
まず、この治療方法を選択するということは自然な妊娠が望めない、無精子症であることなどなので、多くの当事者はこの現実にショックを受けます。

その後、夫婦間での話し合いのなかでパートナーの言動にストレスを感じたり、この治療方法を選択することについて、その事実をどの人間関係まで話すべきかなど、一度に多方面のことを考えなくてはいけなくなることも大きな悩みになるでしょう。

また、夫が不在でも成り立ってしまうということから、治療が始めってから妻が不安を感じやすいという側面もあります。そして凍結精子を用いた妊娠率は3~5%と低いため、繰り返し治療を行なっても妊娠が成立しなければ、ストレスを感じることも少なくないでしょう。

めでたく妊娠・出産を迎えた後も、AIDによって生まれた子供を周囲が受け入れてくれるかの不安も感じるでしょうし、子供が成長していく姿にドナーの存在を意識する瞬間が出てくる可能性もあります。
AIDを受けるかどうかは、なかなか周囲にも相談しづらい悩みです。夫婦できちんと向き合って、納得いくまで話し合い後悔しない選択ができるようにしましょう。

子供に事実を伝えるべきなのか

AIDで生まれた子供という事実を、生まれた子供本人に伝えるかどうかは夫婦にゆだねられています。
しかし現在の日本では、精子提供者は匿名であると定められているため、事実を子供本人に話しても遺伝上の父親を知ることはできません。
また、提供者自身も子供を特定することができません。

子供が望めない夫婦にとって、AIDは「救いの治療」となる可能性は十分にあります。
ですが、子供のためを思っての選択とされた夫婦の決断でも、子供本人にとっては非常にショックな事実となってしまう可能性があることも十分考慮しなければいけません。

たとえ一生隠し通すつもりでいても、ふとしたときに知ってしまう可能性もあります。
幼いころにAIDで生まれた事実を知らされていたのであれば、成長とともにある程度事実を受け入れやすい場合もあるようですが、ある程度成長した段階で突然予期せぬタイミングで事実を知ったときには、今までの親子の信頼関係が崩れることになりかねません。
AIDを選択するということは、子供の将来に大きな影響を与える可能性があるということをしっかりと肝に銘じておきましょう。

おわりに:AIDの内容と子供への影響をきちんと理解したうえで、意思決定をしよう

妊娠が望めない現実にショックを受けた夫婦にとっては、AIDは救いの技術のひとつといえるでしょう。しかし、この治療方法を選択するにあたっては、考えなくてはいけないこともたくさん生まれてきます。
これは夫婦だけの問題だけではなく、周囲の人や生まれてくる子供本人にも影響する可能性があるのです。
後悔しない選択ができるように、夫婦間できちんと向き合い、十分話し合ったうえで意思決定をしましょう。

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