記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/12/22
記事監修医師
前田 裕斗 先生
今や、妊活は女性だけのものではありません。多くの男性がパートナーとともに妊活に取り組む時代です。ただし、待望の子供を授かるためには、正しい知識が欠かせません。では、妊活、不妊治療中の男性は、いったいどんなことに気をつければ良いのでしょうか?
男性が妊活、それに伴う不妊治療に協力することは、パートナーである女性に大きな安心感をもたらすと同時に、妊娠率を飛躍的にアップさせます。
特に不妊治療は、男性の協力なしでは行えません。なぜなら、不妊の原因は女性だけのものではなく、原因の半分近くは男性側にある、という背景があるためです。ところが、女性の不妊症に注目が高まる一方で、男性の不妊症は、いまだに広く認知されていません。たとえば、男性の10人に1人が精子や精液のトラブルを抱えているという現状に、驚く人は多いことでしょう。
また、女性の妊活といえば、まず最初に体を温めることが挙げられますが、実は男性の場合、逆に体(生殖器)を温めてはいけないことをご存知でしょうか。これは、精子が熱に弱い特性を持つためです。したがって、使用しているうちに裏面が熱くなるノートパソコンを膝に乗せて使用したり、熱とともに電磁波を放つスマホなどの携帯類をポケットに入れたままにするという何気ない習慣が、精子の状態に思わぬ悪影響を及ぼす可能性があるのです。もちろん、パソコンやスマホを使用しないわけにはいきませんので、あくまで扱いに注意するよう心がけてください。
このほかにも、ゆったりとして風通しの良いトランクスを履いたり、長風呂やサウナなど、生殖器を温めすぎるようなシーンを、できる範囲で減らすことも大切です。そもそも、男性の睾丸が体外にあるのは、精子が熱に弱く、さらには精子を作るために低温状態を保たねばならないためです。長風呂やサウナを習慣にしていると、精子の量が正常な数の2〜4割も減少し、正常値に戻すために半年を要するというデータもあります。くれぐれも、体を温めすぎないようにしてください。
また、妊活や不妊治療中にもかかわらず、薄毛の対策としてAGA(男性脱毛症)の治療を行っている男性はいませんか? 実は、薄毛の治療薬であるフィナステリド、デュタステリドは男性ホルモンを抑制してしまうため、くれぐれも注意が必要です。これらの薬を服用していると、精子の量がぐっと減り、また、精子の減少により受精する可能性も低くなってしまいます。これは薄毛の治療薬に特徴的な副作用で、性機能障害といいます。
このため、妊活や不妊治療中の男性は、フィナステリド、デュタステリドの服用について、ただちに医師と相談するようにしてください。できれば一時的に服用を中止することが推奨されます。また、フィナステリドは服用を中止しても、有効成分が血液中から焼失するまで1か月ほどかかるので、妊活や不妊治療中はもちろん、結婚したばかりの人、なんとなく子供を授かるといいなと考えている人は、なるべくAGA治療を控えるようにしましょう。
よく、女性の排卵日の前などに禁欲期間を設け、「精子をためる」ことで子供が授かりやすくなるという話を見聞きしますが、これは完全なる誤解です。誤解される原因の一つとして、WHOのガイドラインに従い、精液検査の際に数日の禁欲期間(精子をためる日数)を設けてから精液を提出することが挙げられるかもしれません。しかし、検査と妊娠に最適な精子が得られる禁欲期間は、まったく異なります。
ここで覚えておいていただきたいことは、「精子をためる」と子供が授かりやすくなるどころか、ためられた精子が新しい精子を傷つけて( DNA損傷)、精液全体の質を下げるということです。禁欲期間が長ければ、精子が酸化ストレスを受け、運動率も低下してしまいます。
一般的に、精子の状態の良い男性は最大10日(できれば7日以内)の禁欲とし、精子が少ないなど、精液に何らかの問題を抱える男性の場合は、1日までの禁欲にとどめるべきであるとされています。つまり、妊娠を目標とするのであれば、精液検査での禁欲期間(2〜7日)は忘れ、1〜2日程度の禁欲で十分だと考えてください。
妊活や不妊治療は、決して女性一人で行うことはできません。男性が正しい知識を身につけて、常に新鮮で質のいい精子の状態を保つと、結果として妊娠率は飛躍的にアップします。パートナーとの二人三脚で、ぜひ効率の良い妊活、不妊治療を行ってくださいね!
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