記事監修医師
前田 裕斗 先生
2018/10/12
記事監修医師
前田 裕斗 先生
妊婦検診にて「妊娠糖尿病」と診断されてしまった場合、どうやって治療をしていけばいいのでしょうか?妊娠糖尿病になる原因やリスクと併せてお伝えしていきます。
妊娠糖尿病とは妊娠中に初めて発見される糖代謝異常のことをいい、慢性的に血糖値が高くなる状態のことをいいます。妊娠前から既に糖尿病と診断されている場合や、妊娠中に明らかな糖尿病であると診断された場合は妊娠糖尿病には含まれません。
妊娠糖尿病になる原因は妊娠中、特に妊娠後期になるとインスリンの働きを悪くするホルモンが胎盤から放出されるため血糖値が上がりやすくなるからとされています。
妊娠糖尿病になりやすい人は、家族の中に糖尿病の人がいる、肥満、35歳以上の高年齢での妊娠、巨大児を分娩したことがある、原因不明の習慣流早産歴がある、原因不明の周産期死亡歴がある、先天奇形児を分娩したことがある、強度の尿糖陽性もしくは2回以上反復する尿糖陽性、妊娠高血圧症候群、羊水過多症、多胎児の妊娠、などに該当する人です。
妊娠糖尿病となり、母体が高血糖の状態が続くと、母親だけでなく胎児にもさまざまな影響を及ぼします。
まず、母体では妊娠高血圧症候群の罹患、羊水量の異常、肩甲難産(児頭娩出後に前在肩甲が恥骨結合につっかえてしまい、肩甲娩出が困難なため、児の娩出が不可能な状態)、網膜症・腎症及びこれらの症状の悪化が挙げられます。また、妊娠糖尿病を罹患した場合は罹患していない人と比べて将来2型糖尿病になる可能性が7.43倍高くなるといわれています。
また、胎児は4000gを超える巨大児になりやすい傾向にあり、それ以外にも形態異常や心臓の肥大、出生直後に低血糖となる新生児低血糖のリスクがあります。他にも流産や早産、死産のリスクも高まります。
妊娠糖尿病かどうかの診断は妊娠初期に随時血糖値を測定し、この値が高かったときにブドウ糖負荷試験(OGTT)という検査を行います。これは、ブドウ糖液を飲み、飲む前と飲んだ後の数回採血を行って血糖値を測定していくという検査です。また、妊娠初期の検査で異常がなかった場合でも妊娠中期になると血糖値を下げるインスリンというホルモンの効き目が悪くなるためもう一度血糖値の検査を行います。
これらの検査を行ったうえで妊娠糖尿病と診断された場合には、通常の糖尿病時に行う運動療法はできないため、基本的に食事の管理を行う食事療法で治療を行います。これは入院して食事指導を徹底して行う場合と、外来での指導のみの場合があります。食事療法を行っても血糖値が高い場合や産科的に介入が必要であると判断された場合にはインスリン注射を用いた治療が行われます。
妊娠糖尿病と診断された場合、空腹時の血糖値を食前100mg/dL未満、食後2時間120mg/dL未満を目標に管理していきます。食事の内容を見直したり、食事を4~6回に分けて食べる分割食にするようにしましょう。
妊娠糖尿病における食事は通常の糖尿病と食事の内容が異なります。また、制限されるカロリーも人それぞれ異なるため、かかりつけの医師や管理栄養士の指示に従って食事を摂るように心がけましょう。
妊娠中に初めて発見される糖代謝異常であり、常に高血糖の状態が続く妊娠糖尿病。その原因として、妊娠中に胎盤から放出されるホルモンの影響でインスリンの効き目が悪いことが挙げられます。
妊娠糖尿病は母体だけでなく胎児にも影響を及ぼします。そのため、妊娠糖尿病と診断されたら医師や管理栄養士の指示に従って食事の見直しを行いましょう。
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