妊娠糖尿病の検査って2段階でやるって本当?どんなことをするの?

2018/9/21

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

妊娠糖尿病は、すべての妊婦さんに発症の可能性がある重大な合併症です。
一説には、日本人は白人に比べて妊娠糖尿病を発症しやすいというデータもあります。
そこで今回は、妊娠中の女性が知っておきたい妊娠糖尿病の検査と治療について、出産後の検査・治療の必要性とあわせて解説していきます。

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妊娠糖尿病の検査って、いつ、どんなことをするの?

妊娠糖尿病検査は、全妊婦を対象としたスクリーニング検査が妊娠初期と中期の計2回、そして妊娠糖尿病であることの診断のための検査が1回の2段階で行われます。
スクリーニング検査と診断検査、それぞれの目的と簡単な検査内容は以下の通りです。

スクリーニング検査

  • すべての妊婦を対象に、妊娠糖尿病の可能性のある女性を洗い出す目的で行われる。妊娠期間中の初期と中期の計2回、異なる内容で実施される。
  • 妊娠初期の1回目は平常時に採血して血糖値が100mg/dLまたは95 ml/dLを上回った場合に、妊娠糖尿病の可能性があるとして診断検査に送られる。
  • 2回目は、1回目で陰性だった妊婦を対象に50gのグルコースを摂取しての「糖負荷検査」を行い、糖摂取から1時間後の血糖値が140mg/dL以上の場合は陽性と判断される。

診断検査

  • 妊娠初期・中期のスクリーニング検査で陽性反応があり、妊娠糖尿病の疑いありと判断された妊婦に対して、診断を確定する目的で行う。
  • 75gのブドウ糖を摂取して時間ごとの血糖値変化を診る「75g経口ブドウ糖負荷検査」を行い、検査結果が以下いずれかに当てはまった場合は妊娠糖尿病と診断される。
    1. ブドウ糖摂取前、空腹時の血糖値が≧92mg/dL
    2. ブドウ糖摂取から1時間後の血糖値が≧180mg/dL
    3. ブドウ糖摂取から2時間後の血糖値が≧153mg/dL

具体的な検査方法は?

ここからは、2段階で行われる妊娠糖尿病の「スクリーニング検査」と「診断検査(75g経口ブドウ糖負荷試験)」の検査内容について、詳しくご紹介します。

スクリーニング検査の方法

妊娠初期のスクリーニング検査(1回目)
採血して随時血糖値(食事時間に関係のない平常時の血糖値)を測定し、基準値となる100mg/dLまたは95 ml/dLを上回っているかどうかで判定します。
妊娠中期のスクリーニング検査(2回目)
50gのグルコース(ブドウ糖)を経口接種し、1時間後に採血して血糖値を測る「糖負荷検査」を実施します。血糖値が140mg/dL以上であれば、陽性判定となります。

診断検査の方法

検査の半日前から絶食したうえで75gのブドウ糖サイダーを経口摂取し、摂取前、摂取後1時間、摂取後2時間経ってからの血糖値の変化を観察します。
この「75g経口ブドウ糖負荷検査」は、妊娠糖尿病の確定診断として使用されています。

検査の結果、妊娠糖尿病だとわかったら

検査で妊娠糖尿病であると診断された場合は、食事療法と運動療法で治療していきます。
食事療法・運動療法では、それぞれ以下のような指導が行われます。

妊娠糖尿病の食事療法

お母さんの健康と赤ちゃんの成長に必要なカロリー・栄養素を摂取しつつ急激な血糖値の上昇を抑えるために、以下のような食事の内容と方法を医師や栄養士などから指導されます。

  • 血糖値が上がりにくく、栄養価の高い食事内容にする
  • 貧血防止のため、食事から鉄分を積極的に摂取する
  • 骨や歯を丈夫にするため、食事からカルシウムを積極的に摂取する
  • 妊娠高血圧を併発しないよう、塩分を控えるよう意識する
  • 糖の上下を穏やかにするため、適正量の食事を1日6回に分けて食べる
  • 食事を6回にする分割食の間食は、一食80キロカロリー程度になるよう調整する

妊娠糖尿病の運動療法

医師から運動の許可が出ている場合は、食事とあわせて運動療法も行っていきます。

運動は食後1~2時間後、30分までを目安にウォーキング、体操、ヨガ、エアロビクスなどを週に3~4回行うのがおすすめです。
ただし、妊娠中に可能な運動の範囲には個人差がありますので、必ず事前に運動の可否や内容について医師に相談してください

なお、食事療法・運動療法を続けても血糖値が正常値まで下がらない場合は、赤ちゃんに影響がなく安全性が確認されているインスリンを投与して治療します。
インスリンの投与には低血糖のリスクもありますので、医師から注意事項や低血糖への適切な対応を確認し、指示を守って投与しましょう。

出産後も検査は必要?

妊娠糖尿病による高血糖は、出産後には落ち着くケースがほとんどです。
しかし、妊娠糖尿病を経験した経産婦の2.6~38%は1年以内に、17~63%は5~16年以内に糖尿病を発症するというデータもあります。

つまり、妊娠糖尿病にかかった人は、出産後も糖尿病を発症する可能性が高いのです。
妊娠糖尿病を経験したら、出産を終えても決して油断せず、食事や生活習慣に気をつけて定期的に健康診断を受けましょう。

なお、妊娠中にインスリン投与を受けていた人が出産後も投与を続けると危険ですので、医師からの指示がない限り出産後は使わないように注意してください。

おわりに:妊娠糖尿病の検査は2段階!陽性が出たら、きちんと治療を受けて

妊娠糖尿病の検査には、すべての妊婦に行われるスクリーニング検査と、発症の疑いが強い人に行われる診断検査の2段階あります。
妊娠初期1度目のスクリーニング検査は平常時の血糖値を測定しますが、2度目のスクリーニング検査と診断検査では糖摂取後の血糖値の変化を診る「糖負荷検査」が採用されています。もし検査で陽性反応が出たら食事・運動療法とインスリン投与で治療する必要があるので、医師の指示に従ってください。

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