記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
2018/12/17
記事監修医師
日本赤十字社医療センター、歯科・口腔外科
川俣 綾 先生
今やエチケットのひとつとして考えられているのが口臭ケアです。歯みがきは丁寧にしているはずなのにふとした瞬間に自分の口臭が気になるときはありませんか? この記事では口臭の原因や改善方法を紹介します。
起床直後や食後などは誰にでも多少の口臭が発生します。これを「生理的口臭」といい、時間の経過とともに生理的口臭は減少します。
一方、特定の生活習慣や病気によって発生する口臭があります。口臭ケアへの注目が近年高まり「胃の不調のため口臭がひどくなる」という情報が浸透していますが、胃潰瘍や胃炎など胃の病気を原因とした口臭はほとんどみられません。
口臭の90%以上は虫歯や歯周病など口の中に起因します。次に多いのは鼻やのどのトラブルで、副鼻腔炎(蓄膿症)、慢性鼻炎、慢性扁桃炎症などの病気が原因です。食道がんや胃がんといった消化器系の病気に罹った場合は口臭が発生することがあります。
口の中ではがれ落ちた粘膜や食物のカスに含まれるたんぱく質が細菌に分解・発酵され、そのプロセスでガスが発生すると嫌な臭いを引き起こし、口臭となります。
それでは口臭を起こしやすい原因にはどんなものがあるのでしょう。以下に当てはまる項目が多い方は口臭が発生している可能性があります。
唾液は口の中を自浄する働きを持っています。唾液が減少し口の中が乾燥すると細菌が増えて口臭が強くなります。
舌の表面の白色~黄色い汚れ「舌苔(ぜったい)」は健康な人にもみられますが、細菌の死骸やたんぱく質を多く含んでいます。舌苔が多量にあると強い口臭の原因となります。
歯周病が進行すると歯肉が破壊されて口の中で膿や出血が起こります。歯周病で破壊された体の組織や細菌の死骸、たんぱく質が元となり口臭が起こります。
虫歯は口臭に影響を与えます。虫歯のせいで歯に空洞ができ、そこに入り込んだ食物のカスや歯垢が腐敗すると口臭の原因となります。神経が腐るまで重症化した虫歯では、歯根の奥にさらに病巣が発生し膿ができる場合があります。
緊張やストレスは自律神経(交感神経と副交感神経)と深い関係にありますが、自律神経は唾液の分泌を調節する働きを持っています。緊張やストレスを感じると交感神経が優位になり唾液の分泌量が低下します。
空腹を感じると、肝臓がエネルギーを供給するためにケトン体を生成し血液中に放出します。ケトン体が増えるとガス(アセトン)が発生し、甘酸っぱい臭いとなって口から出てくることがあります。
口臭予防の基本は口の中を清潔に保つことです。虫歯や歯周病を防ぐために毎日の歯みがきをきちんと行い、定期的に歯科でクリーニングしてもらうとよいでしょう。舌苔用のブラシで舌のお手入れをする方法もありますが、強くこすって舌を傷つけないように注意してください。外出先でも持ち運び可能なマウスウォッシュなどを活用するとケアを続けやすいです。
舌苔や歯垢が溜まり、細菌にとって過ごしやすい温床となった状態を「バイオフィルム」といいます。細菌が集まって膜のような塊になっており、簡単には除去できません。バイオフィルム対策の効果が期待される成分の入った歯みがき粉を選ぶのがおすすめです。
近年、増加しているのが「ドライマウス(口腔乾燥症)」に悩む人です。唾液の分泌量が減少し口の中が乾燥してしまうため口臭につながります。加齢や喫煙、特定の病気や薬の副作用などが原因と考えられますが、緊張やストレスによる影響も少なくありません。
十分な休息をとる、ストレス解消をこまめにする、食事はゆっくりよく噛むなど自律神経を整えるようにしましょう。
毎日の歯みがきやストレス解消など、口臭ケアは日々の積み重ねがポイントとなります。定期的に歯科を受診しクリーニングや歯みがき指導をしてもらうとより効果的です。口内環境を清潔に保ち、口臭の不安を取り除くようにしましょう。
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