ストレスが胃潰瘍を引き起こすのはどうして?

2018/10/19 記事改定日: 2019/5/22
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

「ストレスが原因で胃潰瘍に…」なんて話を聞くことがありますが、本当にそんなことが起こるのでしょうか?胃潰瘍の原因や治療法について解説していきます。

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胃潰瘍になるとどんな症状が出てくる?

胃潰瘍の痛み方は人により異なり、大きな潰瘍があるにも関わらず全く痛みを感じない人もいます。
胃潰瘍の一般的な症状として、空腹時に起こるみぞおち付近の痛み、胸焼けやげっぷなどの胃酸過多症状などがあり、コールタールのような黒い便や貧血が見られる場合は、病態の進行に伴い胃からの出血が起こっている可能性があります。

胃潰瘍の主な原因としては、以下のものが挙げられます。

ピロリ菌
胃潰瘍の主な原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)と呼ばれる細菌に感染して胃粘膜が弱り、胃酸によって胃壁が傷つけられることで起こるとされています。
NSAIDs潰瘍
解熱薬のNSAIDsの副作用で胃粘膜に異常が起こり、胃酸が胃壁を荒らすと潰瘍が発生することがあります。薬局で購入可能な鎮痛薬でも胃潰瘍のリスクがあるため、注意しましょう。
抗凝固剤
心筋梗塞の既往歴のある人で、血液をサラサラに保つ作用のある低用量のアスピリンなどの抗凝固剤を服用している場合は、胃潰瘍を発症する可能性が高いとされています。

このほか、ストレスが原因になることもあります。

ストレスも胃潰瘍の原因になるの?

精神的ストレスによって内臓の血液が減少している状態で、アルコールの過剰摂取、食欲不振、不規則な食事時間などが重なると、空腹の時間が長くなることにより胃酸の濃度が高まり胃潰瘍になりやすくなります。

胃潰瘍の進行に伴い胃がんになることは通常ありませんが、ストレスにより免疫力が低下していると、重篤な病気になる確率が高くなるため注意が必要です。
ストレスが胃潰瘍を引き起こすメカニズムは、以下のようになっていると考えられています。

胃壁が痛みやすくなる
ストレスが溜まると迷走神経が刺激されることにより、胃酸やペプシン(胃液中の蛋白分解酵素)の分泌が増加したり、胃の緊張が増すことにより胃壁が痛みやすくなります。
内臓神経に負担がかかる
内臓神経に負担がかかることにより、胃粘液や重炭酸の分泌の減少、胃の血流が悪くなる、胃壁を防御・修復する作用の低下などの症状が起こります。
胃粘液の分泌が低下する
ストレスが加わると副腎皮質ホルモンの増加に伴い、胃酸やペプシンの分泌が増え、胃粘液の分泌が低下します。特に十二指腸は酸に弱い性質のため、胃から十二指腸に流れ込む内容物の酸度が上がると、十二指腸潰瘍が発症しやすくなります。

ストレスによる胃潰瘍はどうやって治療する?

内科的治療では主に、胃酸分泌抑制剤と呼ばれる攻撃因子を抑える薬や、粘膜保護剤と呼ばれる防御因子を強める薬が使用されます。
最近では、ガスター®などのH2ブロッカーや、オメプラール®やタケプロン®などのプロトンポンプ阻害薬を服用することにより、2~3週間で症状が軽快するケースが多いといわれています。ピロリ菌に感染している場合は、抗生物質を併用して除菌することもあります。

なお、ストレスが根深く、潰瘍がなかなか回復しない場合や一度治っても再発を繰り返す場合は、心療内科的治療がすすめられます。心療内科的治療では、ストレスを軽減するためにカウンセリングや自律神経訓練法を行ったり、抗不安薬や抗うつ剤を服用する薬物療法などが行われます。

ストレスの解消法として、やけ酒、食べ過ぎ、タバコの吸い過ぎなどに走る人もいますが、これらが長期間続くと生活リズムが不規則になったり、潰瘍の発症や増悪の原因となることがあるので絶対にやめましょう。
また、几帳面、内向的、こり性、過剰適応(周囲の人に気を使いすぎる)、感情表現が少ない人は、ストレスから胃潰瘍を発症しやすい傾向があるため、普段から一人で考えすぎずに相談できる相手を作ることも大切です。

胃潰瘍の人のストレス対策

ストレスを抱えて胃炎や胃潰瘍になりやすい人には、次のようなストレス対策がおススメです。

  • ストレスの原因となる事柄から遠ざかる時間を作る
  • 十分な睡眠・休息時間を確保する
  • 熱中できる趣味を持つ
  • 家族や友人などに悩みを打ち明ける
  • ゆっくり入浴するなどリラックスできる時間を作る
  • ストレスが非常に強い時は休暇を取る

おわりに:ストレスは胃に負担をかける原因となる

胃潰瘍は、ピロリ菌、NSAIDs潰瘍、抗凝固剤、ストレス、不規則な食生活などが原因となり起こると考えられています。治療では、胃酸分泌抑制剤や粘膜保護剤を使用する内科的治療が一般的ですが、ストレス性の場合は心療内科的治療が有効とされています。過度なストレスにさらされている人や、性格的にストレスが溜まりやすい人は、特に胃潰瘍が起こりやすい傾向にあるので対処に努めましょう。

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