記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/11
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
食事中や食後にお腹周りに違和感を覚えたことはありませんか? 痛みや吐き気などを感じても「よくあることだから」と注意を払わない人もいるでしょう。しかしその症状は「胃潰瘍」によるものかもしれません。
私たちが口にした食べ物は、食道を通って胃に届きます。胃の表面は「胃壁」と呼ばれ、胃液を分泌する粘膜に覆われています。胃液には「胃酸」という消化液が含まれます。胃の中では胃酸が、食べ物の消化や体外から入り込んできたウイルスなどの殺菌をしています。
胃酸が食べ物やウイルスではなく胃粘膜を消化してしまい、胃壁を傷つけ炎症を引き起こすことがあります。これが「胃潰瘍」の状態です。40代以降に多くみられ、食事中や食後にみぞおち周辺に鈍い痛みや胸やけ、吐き気、げっぷなどの症状があらわれます。胃潰瘍が悪化すると胃に出血を起こし、黒褐色の吐血、コールタールのような排便がみられます。
胃潰瘍のメカニズムは完全には解明されていません。しかし胃潰瘍は、胃粘膜が傷つくことで発生します。胃粘膜を傷つけると考えられているのが胃酸、ヘリコバクターピロリ菌などの「攻撃因子」です。対して胃粘膜を守るための粘液を分泌したり、傷ついた胃粘膜を修復しようとする「防御因子」を体の機能は持ち合わせています。攻撃因子と防御因子のバランスが崩れると胃潰瘍を発症するのではないかといわれています。
攻撃因子である胃酸は神経が興奮すると分泌が増える傾向があります。血流の悪化は防御因子の働きを低下させます。攻撃因子と防御因子のバランスが崩れるきっかけとしては、主に以下のものが挙げられます。
特に気をつけたいのがストレスで、胃潰瘍に大きな影響を与えます。ストレスは飲酒や喫煙、暴飲暴食などそのほかのきっかけに派生することも多く、ストレスコントロールは胃潰瘍の予防と改善には欠かせません。
また食生活は胃と深い関係にあります。胃酸の過剰な分泌を抑えるため、胃を刺激する食品はなるべく避けましょう。
国立がん研究センターによると、2016年にがんで亡くなった人のうち、胃がんを原因とするケースは男女合わせて第三位という結果が出ています。胃がんは命に関わる病気であるといえます。
かつては胃潰瘍や胃ポリープは、胃がんの発症と高い関連性があると考えられていました。ところが現在は胃潰瘍が胃がんの原因になる可能性は低いことが判明しています。
近年、胃がんの主な原因として研究されているのがピロリ菌感染による「慢性胃炎」です。胃酸は菌を殺菌する働きを持ちますが、ピロリ菌はそのような環境でも増殖できます。炎症が慢性化し粘膜が弱まった胃には発がん性物質の影響が及びやすく、胃がんを引き起こす可能性が高くなるのです。
胃潰瘍がただちに胃がんにつながるとはいえませんが、慢性化や長期化を招いた結果、発がん性物質などの刺激から胃を守る力が弱まるおそれはあります。胃潰瘍の疑いがある場合は、早めに病院を受診することをおすすめします。
胃潰瘍の検査ではX線検査や内視鏡検査が行われるのが一般的です。検査後に胃潰瘍であると診断されたら治療に進みます。胃潰瘍の治療はまずは薬物療法が検討されます。
薬物療法で胃潰瘍の改善がみられることは多いですが、症状が治りにくい、再発を繰り返す、合併症を併発しているなどといった場合は手術をすることがあります。ヘリコバクターピロリ菌に感染していると症状の改善が難しく、ピロリ菌の除菌を行います。
また、特定の薬の服薬のために胃潰瘍を発症している場合は、その薬の服用を止めたり薬の種類を変更することがあります。
自分でできる治療法としてストレス解消は大切です。軽い運動やストレス環境の改善に取り組んでみましょう。食事は胃にやさしく消化のよい食品を選び、よく噛んで食べると胃への負担を和らげます。
腹痛や胸やけは珍しくない症状ですが、胃潰瘍を発症している可能性があります。胃潰瘍が慢性化すると手術が必要となるおそれもありますので、胃のあたりに不調を感じたら、普段の生活習慣を見直すとともに医師に相談してみましょう。
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