記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/12 記事改定日: 2020/5/26
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
逆流性食道炎の治療を開始しても、胃もたれや胸のむかつきがなかなか治らないという人がいます。逆流性食道炎がなかなか治らないのは、いったいなぜなのでしょうか?また、どのようにすれば治すことができるのでしょうか?
この記事では、逆流性食道炎の治療が長引く原因と再発を繰り返すリスク、逆流性食道炎を治すために気をつけることについて解説していきます。
逆流性食道炎は、胃と食道をつなぎ、食物が通らないときには胃酸や食物の逆流を防ぐために閉じている食道下部括約筋のゆるみと、胃酸の分泌過多の2つがおもな原因です。
食道下部括約筋は加齢や食道裂孔ヘルニアなどの疾患によってゆるむこともありますが、多くは暴飲暴食や高脂質な食生活をやめるなど、生活習慣によって改善することができます。
逆流性食道炎がなかなか治らないときは、何らかの理由で胃酸過多の原因がうまく改善できていない可能性も考えられるでしょう。
胃酸分泌が多くなる原因は、主に食生活の内容です。脂質・タンパク質の多い食事は消化に悪く、胃に長く留まります。そのぶん胃酸の分泌が続き、胃酸が増えて逆流しやすくなります。また、胃酸が増えた状態で前かがみなど姿勢が悪く腹圧のかかる状態にすることも、胃酸を逆流させてしまいます。
逆流性食道炎を治すには、このような胃酸過多の原因を取り除く必要があります。ほとんどの場合は生活習慣の見直しと薬物療法で治療することができますが、症状が消えても食道に起こっている炎症やびらん・潰瘍がすぐに消えるわけではありません。
逆流性食道炎の治療に使われる薬は主にPPI(プロトンポンプ阻害薬)やH2ブロッカー(H2受容体拮抗剤)など、胃酸の分泌を抑える薬です。
これらの薬は「内服している間だけ分泌を抑える」という特徴があります。内服をやめると胃酸分泌は元に戻ってしまうので、症状が少し軽くなったからといって自己判断で飲むのをやめたり、必要がないのに再開したりしてしまうと、完治しないままだらだらと症状が長引いてしまいます。
自己判断で薬の使用をやめたり、以前処方された薬を自己判断で飲むなど、医師の指示から外れた服用は絶対にやめましょう。
逆流性食道炎の改善には生活習慣の見直しも重要です。薬の効果はあくまでも内服している間に症状を止めるものですから、根治のためには生活習慣を見直さなくてはなりません。また、薬物療法や手術療法によって一度は完治したとしても、これまでの生活習慣を続けてしまっていれば再発のリスクは非常に高くなります。
食道裂孔ヘルニアとは、横隔膜にある食道が通る孔(食道裂孔)から胃が胸部へはみ出てしまっている状態のことをいいます。
通常、食道と胃の境目は食道裂孔の部分にあり、食道裂孔によって食道を締めつけることでも胃の内容物の逆流を防いでいます。ところが、食道裂孔ヘルニアによって胃が横隔膜の上にはみ出ると、横隔膜による締めつけがかかりにくくなります。こうして、胃の内容物が逆流しやすくなってしまうのです。
食道裂孔ヘルニアは、生まれつき食道裂孔がゆるい小児や肥満・喘息や慢性気管支炎などで常に腹圧が高い状態の人で起こりやすい疾患です。また、加齢によって食道裂孔の筋力が低下してゆるむことや、高齢の人で背骨が曲がっている場合などにも起こりやすいといわれています。
食道裂孔ヘルニアの人も胃酸が逆流しやすいため逆流性食道炎の原因になりますが、このタイプの人は薬物療法では効果が出にくいことが多く、逆流を防ぐための手術が行われることがあります。
逆流性食道炎は一度発症すると、なかなか治りにくく、一旦症状がよくなっても再発を繰り返すことがあります。
食道に炎症が生じた状態を放置すると、食道がんのリスクが高まることが分かっています。また、炎症が強い場合は、食道の粘膜に潰瘍ができたり大きなダメージが加わったりすることで、粘膜が厚くなって食道の内腔が狭くなってしまうこともあります。
逆流性食道炎の再発や手術を避けるためには、まずは生活習慣の見直しと薬物療法をしっかりと行うことが大切です。
生活習慣の改善については、以下のことに気をつけましょう。
具体的にどのような対策をすればいいかについては、以下を参考にしてください。
逆流性食道炎の改善で最も簡単に対処できるのは、食生活を見直すことです。胃酸の逆流や分泌過多を起こしやすい食べ物や飲み物を減らし、一度に食べる量を減らしましょう。満腹になるまで食べてしまうと、胃の袋がいっぱいになり、口が閉まらない状態になってしまいます。
食事の内容では、高脂質や高タンパク質の食事を摂りすぎないよう注意しましょう。脂質やタンパク質は消化しづらいため、胃に長くとどまります。そのぶん胃酸を分泌し続けることになり、増えた胃酸は逆流を起こしやすくなります。また、甘いお菓子や酸味の多い果物なども胸焼けを起こしやすく、控えた方が良いでしょう。
ただし、胸焼けを起こしやすい食品は人によって違います。自分が胸焼けを起こしやすい食品を知っておくことで、うまく対処しやすくなるでしょう。
アルコールやコーヒー、緑茶などの飲みものは控えめにしましょう。これらは胃酸の分泌を増やすとともに、アルコールは胃の入口であり、逆流を防いでいる食道下部括約筋をゆるめてしまいます。胃を膨らませ、逆流を起こしやすくする炭酸飲料も控えたほうが良いでしょう。
腹圧がかかるのは、姿勢の悪さ、肥満、それによるベルトやコルセットの過剰な締めつけなどです。前かがみの姿勢で長時間作業していると、胃が圧迫されて胃酸が逆流しやすくなります。これは肥満で脂肪によって胃が押し上げられたり、ベルトやコルセットをきつく締めつけたりすることで胃が圧迫されるのも同じ状態です。
消化管には蠕動運動という働きがあり、ある程度は重力に逆らっても胃の内容物を十二指腸から小腸へと流してくれますが、胃酸も流体である以上は重力の影響を強く受けるため、重力に沿って上から下へと流せるような姿勢を保つようにしましょう。
逆流性食道炎は、禁煙によって改善されることがわかっています。大阪市立大学の研究チームによれば、逆流性食道炎の患者に禁煙指導を行ったところ、成功した患者では逆流性食道炎の症状が平均で43%程度軽減されたという報告があります。
消化管の不調は精神的なストレスから来ていることもあります。精神的なストレスがかかると、消化管の動きが制限されてしまい、蠕動運動が鈍くなるため、胃酸の逆流が起こりやすくなってしまうのです。
ストレスがあるという心当たりがあるなら、こまめにストレスを解消しましょう。
また、精神的ストレスは、専門医に診てもらうことで症状が改善することがありますし、相談することで安心感を得られます。ストレス問題を無理に自分ひとりで解決しようとせず、まずは一度専門家に相談してましょう。
逆流性食道炎は、ほとんどの人では生活習慣や食生活の見直し、薬物療法で治すことのできる疾患です。しかし、決められたとおりに薬を飲まず、症状がやや治ってはぶり返し、を繰り返していると手術が必要な状態にまで悪化してしまうこともあります。
逆流性食道炎を甘く見ず、正しい服薬と生活指導でしっかりと治しましょう。
この記事の続きはこちら