記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/25 記事改定日: 2020/7/20
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
沈黙の臓器とも呼ばれる「肝臓」。この肝臓が線維化を起こした場合、どんな病気が引き起こされるようになるのでしょうか。この記事では原因や検査方法について解説していきます。また、治療によって回復できるのか、治療法はどんな種類があるのかも紹介します。
肝臓の線維化は、肝臓が反復的かつ持続的に損傷を受けた際に起こる状態で、特に炎症が慢性化した際に顕著に見られます。
線維組織はコラーゲンを主成分としており、主に細胞と細胞とを結びつける働きをしています。通常、コラーゲンは生体において産生と分解を繰り返しながら一定のバランスを維持しています。しかし、慢性的に炎症が起こっている状態ではそのバランスが崩れてしまい、なおかつ自己修復もうまくできないため瘢痕組織が形成されます。その結果として線維化が見られ、肝臓が硬くなるようになります。
肝臓は本来弾力性がある滑らかな臓器ですが、上述したように慢性的な炎症が生じることなどによって組織の線維化が生じ、肝臓が硬くなることがあります。このような肝臓の線維化が生じると、肝臓の機能は徐々に低下していくようになります。
肝臓はアルコールや薬剤、老廃物などの分解をするだけでなく、タンパク質や血小板など私たちの身体にとって必要な物質を作り出す臓器でもあります。
そのため、肝臓の機能が低下するとタンパク質や血小板が減少することでむくみ、腹水、出血しやすさといった症状が現れるようになります。
また、肝臓で産生される胆汁という消化酵素の流れが悪くなることで目や皮膚が黄色くなる黄疸と呼ばれる症状が見られるようになり、体内にアンモニアなどの有毒な物質が蓄積し、意識障害や異常行動などを引き起こす「肝性脳症」を発症し、命を落とすケースも出てきます。
肝臓が線維化した場合、早期に原因を特定して治療が行われれば修復することも可能です。しかし、数カ月から数年と長期間にわたって損傷が継続したり繰り返されたりした場合では、線維化した組織は永久に元に戻ることはありません。
肝臓が線維化する病気の代表的なものは、炎症が慢性的に続く慢性肝炎と肝硬変です。
肝炎ウイルスによって引き起こされるウイルス性肝炎が慢性化した状態のことを慢性肝炎と呼び、一般的には肝機能異常が6カ月以上続く状態のことをいいます。肝炎ウイルスの感染が原因となり、主な肝炎ウイルスはB型肝炎ウイルスおよびC型肝炎ウイルスです。
肝炎ウイルスに感染する要因となるのはウイルスに感染している人の血液、あるいは血液成分が混入した体液や、浸出液を介して感染します。感染後ウイルスによって肝細胞が破壊されていきます。日本の肝炎患者は約70% がC型肝炎ウイルス、15〜20%がB型肝炎ウイルスの感染によるものとされています。
慢性肝炎やアルコール、非アルコール性脂肪性肝炎などによって肝臓に傷が生じ、これを修復するときにできる線維というタンパク質が増加して肝臓全体に拡がった状態のことをいいます。肝臓が硬くなることで機能することができなくなり、さまざまな症状が出現します。
肝臓の線維化を調べるためには、腹部超音波検査、腹部CT、MR elastography (MRE)、による画像検査、血液検査、腹腔鏡、肝生検のほか、場合によっては肝臓の硬さを判定する肝硬度検査(フィブロスキャン)という特殊な画像検査を行います。
肝臓の線維化を食い止めるためには、肝臓の線維化を起こしている原因となる病気の治療をすることが必要となります。
慢性肝炎などで、B型、C型ウイルスの感染が原因となっている場合には、ウイルスを抑えるための薬物療法が効果的とされています。肝炎ウイルスが排除されると、肝臓の炎症が治まり、線維化が止まるだけでなく肝臓に溜まった線維が溶けて、時間はかかるものの硬くなった肝臓が元に戻ることもあります。
なお、ウイルスに対する治療が困難な場合には、肝臓が壊れるのを防ぐための肝庇護療法を行い、肝硬変となるスピードをゆっくりとさせることもできます。また、症状が顕著に見られており、これらの治療によって改善が見込めない場合には一定の条件が満たされていれば肝移植という治療方法もあります。
肝臓の線維化は、肝臓が反復的かつ持続的に損傷を受けた際に起こる状態で、慢性肝炎や肝硬変といった病気の際に併発して起こります。血液検査や超音波検査などさまざまな検査を組み合わせて診断します。
原因によってウイルス治療や肝臓を保護する薬などで治療を行います。早期に発見、治療ができれば改善の余地もあるため、該当する疾患に罹患している場合は早期の検査、治療が望まれます。
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