記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/4/4 記事改定日: 2018/7/26
記事改定回数:2回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
「そろそろ赤ちゃんが欲しいね」と考えたときは、母体のリズムを知ることが大切です。そして、なかなか赤ちゃんができないときにも、妊娠しやすいタイミングで性行為をすることが大切になります。
この記事では、不妊を解決するために「妊娠しやすいタイミング」を知る方法をご紹介していきます。手軽にできる基礎体温で排卵日を予測する方法についても詳しく紹介していくので参考にしてください。
妊娠が成立するには、ただ闇雲に性行為を行えばよいわけではありません。男性が毎日射精するのが可能なのに対し、女性は約28日の性周期の中で一回しか排卵しません。卵子の寿命は24時間前後といわれており、この間に精子が卵子まで到達しなければ、受精することはなく、当然ながら妊娠も成立しません。
一方、精子は女性の体内で72時間ほど生存することがわかっており、排卵日の2日前から当日が最も妊娠しやすいといわれています。
タイミング療法とは、基礎体温などの情報や定期的な超音波検査などで卵胞の発育を観察し、排卵日を推定する治療法です。排卵日の2日前から当日は最も妊娠が成立しやすい時期なので、この時期に性行為を行うように指導されます。
男女ともに不妊検査で大きな異常が見られない場合には、まずタイミング療法が行われるのが一般的で、90%近くのカップルが半年で妊娠に成功するというデータもあります。
基礎体温とは、人間が活動するために必要な最低体温のことです。この基礎体温を毎日測ることで、妊娠しやすい時期がいつ頃かを把握することができます。
基礎体温を測るときは、普通の体温計ではなく、婦人用体温計で測ります。婦人体温計で測定すると、小数点以下2ケタまで測ることができるため、低温期と高温期の差もきちんと測ることができます。
また、より正確に測るために、わきの下ではなく舌の裏の奥にある舌小帯(ぜつしょうたい:中央のヒダ)の横に婦人体温計を当てて測定します。
以下に、基礎体温の測定方法をご紹介します。
正しく測定するためには、できるだけ毎朝同じ時間、同じ場所で測ることが大切です。また、ほんのちょっと動いただけでも体温は上がってしまうので、計測中はなるべく動かないようにしましょう。寝る前に、枕元などに基礎体温計を置いておくのもおすすめです。
基礎体温を測ると、「低温期」と「高温期」に分かれます。
低温期は、月経(生理)が始まってから次の排卵日までの間の時期を言います。エストロゲンの分泌量が増え、子宮内膜が厚くなって受精卵の着床(妊娠)に備えます。この時期は体温が低い状態が続きますが、低温期の終わり頃に急に体温が下がる日があります。その後高温期になりますが、この体温が下がった日の前後2−3日で排卵が起きていると考えられます。
高温期は、排卵日から次の月経(生理)までの期間を言います。高温期の体温は、低温期よりも0.3~0.5度ぐらい高くなります。
排卵が起こると、体内ではプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されます。プロゲステロンには体温を上げる作用があるため、基礎体温も上がります。また、子宮内膜の厚さも保たれ、受精卵が着床するのに適した環境が作られます。
もしここで妊娠しなかった場合、不要になった子宮内膜が剥がれ落ち、月経(生理)として血液とともに体の外に排出されます。
妊娠を考え始めたとき、基礎体温を測るメリットとして以下の3点があります。
基礎体温を測ることで、妊娠しやすい時期がいつ頃かを予測することができます。一般に、排卵が起きる3、4日前から、排卵後の1、2日までの間が妊娠しやすい時期と言われています。ちなみに、精子は、卵管の中で1週間ほど生き延びることができるので、排卵が起きる前に精子が卵管に入ってきても受精する可能性はあります。
低温期と高温期の温度差が0.3度以下の場合や、高低がはっきりしない場合、排卵が起きていない可能性があります。この状態でも月経(生理)があった場合、月経はあるものの、排卵は起きていない「無排卵月経」の可能性があります。
高温期が長い(16日以上続いている)場合、妊娠している可能性があります。もし、高温期が長引いているようでしたら、できるだけ早く産婦人科に行って、妊娠しているかどうかの診察を受けましょう。
以下の条件を満たしていれば、理想的な基礎体温と言えます。
この条件がそろっていると、排卵がスムーズに起こっていて、黄体ホルモンやエストロゲンも正常に分泌されており、卵胞も健康な状態であると言われています。
きちんと基礎体温を測っているはずなのに、低温期と高温期の2層に分かれていなかったり、全体的にグラフがガタガタになったり、高温期が安定しなかったりすることがあります。
もし、基礎体温を正しく測定できているはずなのにこのような状態になっている場合、以下のような原因が考えられます。
無排卵月経の可能性があります。もしくは、排卵はしていても、妊娠するためのに必要な体の機能が十分でないため、排卵が正常に行えない状態になっている可能性も考えられます。
ストレスや疲労などが原因による自律神経の乱れが考えられます。
高温期が短い場合や、高温期の間で体温の変動がみられる場合、プロゲステロンの分泌量が少ないために「黄体機能不全」に陥っている可能性があります。この状態になると、子宮内膜が厚くなる前にはがれ落ちてしまうため、受精卵が着床しづらくなったり、着床してもきちんと受け止められなかったりする可能性があります。
基礎体温が理想の形になっていない場合、まずは食事や睡眠などの生活習慣を改善したり、運動をして基礎代謝を上げたりすることが大切です。また、ストレスが原因で基礎体温のグラフがガタガタになっていることもあるので、自分に合うリラックス法を身につけることもおすすめです。
こうした生活習慣の見直しをしても基礎体温のグラフがガタガタしている場合、婦人科系のトラブルが原因になっている可能性があります。その場合は、基礎体温表を持って婦人科を受診しましょう。
自分の基礎体温を記録することは、排卵日を知るだけでなく、女性特有のからだの変化を知る上でも役に立ちます。そろそろ妊娠を・・・と考え始めたら、さっそく婦人体温計を購入して、基礎体温を記録し始めましょう!