記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
恐怖症のほとんどは、治療をしなくても恐怖を感じる対象を避けるだけでその恐怖をコントロールすることができます。しかし特定のものに恐怖を抱く恐怖症では、医師による治療がなければ、その恐怖を取り除くことは難しいでしょう。
ここでは、恐怖症のさまざまな治療法について解説します。
恐怖症は、治療することで改善します。恐怖症の治療は、単一の治療法でなく異なる治療法の組み合わせが推奨されます。
主な治療の種類は次のとおりです。
・セルフヘルプテクニック
・対話療法
・投薬治療
カウンセリングや心理療法などの対話療法は、恐怖症を治療するために非常に効果的な方法です。特に、認知行動療法(CBT)と自分のからだや気持ちに気づく力を育むこころの
エクササイズ「マインドフルネス」は、恐怖症を治療する非常に有効な方法であることがわかっています。
認知行動療法(CBT)は、思考や行動の仕方を変えることによって問題を管理するのに役立つカウンセリングです。単純恐怖症を治療するためによく使われるCBT治療プロセスの一部は、徐々に恐怖に対する曝露を伴うことにより、恐怖を感じなくなっていきます。これは脱感作療法または曝露療法として知られています。
たとえば、蛇に対する恐怖(ヘビ恐怖症)があるときは蛇に関する絵をみせ、次に実際に動物園などでヘビをみせ、最後のステップで蛇に触れさせます。曝露療法は、徐々に恐怖への曝露レベルを上げることによって作用するもので、患者がその恐怖症をコントロールできるようにしていきます。治療が進むにつれて、恐怖をもつ対象に対する不安を気にすることが少なくなります。
投薬治療は、恐怖症の治療には使われません。しかし、不安などの恐怖による影響を治療するために短期的に薬が処方されることがあります。
不安の治療には、以下の薬が使われます。
・抗うつ薬
・ベンゾチアジピン系抗不安薬
抗うつ薬はしばしば不安を軽減するために処方されています。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、不安症、社会恐怖またはパニック障害を治療するために使われます。現在、日本では以下の4種類のSSRIが認可されています。
・フルボキサミン(商品名:ルボックス、デプロメール)
・パロキセチン(商品名:パキシル)
・セルトラリン(商品名:ジェイゾロフト)
・エスシタロプラム(商品名:レクサプロ)
これらの抗うつ薬には、吐き気、頭痛、睡眠障害、胃がムカムカするなどの副作用がみられることがあります。また、最初は不安が悪化したり、性的な問題を起こす可能性があるかもしれません。
三環系抗うつ薬(TCA)のクロミプラミン塩酸塩(商品名:アナフラニール)には、以下のような副作用がみられることがあります。
・ドライマウス
・眠気
・視界がぼやける
・振戦(ふるえ)
・心悸亢進(しんきこうしん)
・便秘
・排尿困難
以下のようなベンゾジアゼピン系抗不安薬が使われます。
・ロラゼパム(商品名:ワイパックス)
・アルムラゾラム(商品名:ソラナックス、コンスタン)
・ブロマゼパム(商品名:レキソタン、セニラン)
・ジアゼパム(商品名:セルシン、ホリゾン)
・クロチアゼパム(商品名:リーゼ)
・エチゾラム(商品名:デパス)
・ロフラゼプ酸エチル(商品名:メイラックス)
抗うつ薬を処方されている場合は、勝手に服用をやめないことが非常に重要です。突然服用を止めると離脱症状を起こすことがあります。やめるときは医師の指示のもと、徐々に服用量を下げなくてはなりません。
β遮断薬は、高血圧などの心血管疾患を治療するためによく使用されます。心拍数を低下させ、血圧を下げ、動悸(どうき)などの不安症状を軽減するために処方されることもあります。プロプラノロール(商品名:インデラル)は、不安を治療するために一般的に使用されるβ遮断薬です。以下のような副作用がみられることがあります。
・胃の問題
・指先の冷え
・疲労
・睡眠障害
恐怖症の治療は、対話療法やCBTが中心です。投薬治療は、恐怖症による不安を和らげるためのものであることを覚えておいてください。
いずれにしても、恐怖症はひとりで悩まず、医師やカウンセラーといっしょに、ゆっくり時間をかけて治していくことが必要ですね。