記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/11/1 記事改定日: 2020/7/8
記事改定回数:1回
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MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
十二指腸に炎症が起こる十二指腸炎は、消化管の疾患の一つです。十二指腸炎にはびらん型のような種類があります。十二指腸炎の症状の出方や発症の原因、食事習慣改善などセルフケアと治療法について紹介します。
十二指腸炎とは、十二指腸の粘膜がただれて傷ついた状態のことをいいます。内視鏡診断によれば、以下の3タイプに分類されます。
びらん型は胃炎が治ると同時に治ることが多く、pHが低い酸性環境にあることがわかっています。また、粗ぞう型は内視鏡による検査において、時間が経ってもそれほど変化することがなく、低い酸性の環境にあることがわかっています。
いずれの場合にも、軽症の場合には無症状であることが多いですが、症状が進行してくると主に以下のような症状が現れてきます。
消化管の疾患の多くに共通した症状として、吐き気や不快感が生じます。また、十二指腸は体の背側に位置するため、十二指腸の炎症が背中の痛みとしてあらわれることがあります。
十二指腸炎の原因としては、以下のようなことが考えられます。
ピロリ菌は、ヘリコバクター・ピロリという細菌で、十二指腸のみならず胃炎や小腸炎に関わる細菌です。アンモニアを産生して胃酸を中和することで、胃の粘膜の中に住みついています。ただし研究報告によれば、十二指腸炎は十二指腸潰瘍と比べてピロリ菌が原因となることは少ないといわれています。
ロキソニン®・アスピリンなどの消炎鎮痛剤は、NSAIDsといわれる非ステロイド性抗炎症薬です。これらの薬剤は、胃腸の粘膜に対して保護効果のある因子を減少させてしまうため、結果として胃腸の粘膜に負担がかかりやすくなってしまうと考えられています。また、経口投与の場合に胃に直接接触するため、局所刺激となることも原因の一つではないかとも考えられています。
活性酸素はさまざまな細胞でDNAを損傷し、生体を障害することが知られています。ラットによる実験などで、十二指腸炎にも活性酸素が関わっていることがわかっています。
ストレスは自律神経バランスに異常を来し、胃酸分泌を過剰に促すことがあります。上で述べた通り、過剰な胃酸は十二指腸の粘膜にダメージを与え、十二指腸炎を引き起こすことがあります。
また、自律神経バランスの異常は、血管の収縮を促すことで血行を悪化させることもあります。その結果、胃の粘膜の血行も悪くなり、ダメージを受けた粘膜が治りにくく、さらに炎症が悪化していくという悪循環に陥ることがあります。
どのようなストレスが十二指腸炎の原因になるかは個人差がありますが、次のようなものが挙げらるでしょう。
十二指腸炎の主な治療法は、「生活習慣の改善」または「薬物治療」です。無症状で、胃カメラなどでたまたま見つかっただけの小さな炎症であれば、自然治癒の可能性も考慮し、様子を見るという判断になることもあります。しかし、みぞおちや背中の痛みなど、苦痛を伴う症状が出ている場合には治療の対象となります。
食事は柔らかく消化の良いものを中心に、少量ずつ数回に分けて摂取するようにしましょう。また、ミルクやバニラアイスクリームには胃酸を中和する働きがあって栄養分が多いため、主に欧米などで少量摂取することがすすめられています。
胃酸の分泌を抑える制酸剤、腸壁の粘膜を保護する粘膜保護剤などが治療に使われます。また、NSAIDs薬剤(非ステロイド性抗炎症薬)による炎症が原因とされる場合は、薬物投与は治療と並行して慎重に行われます。
制酸剤のうち、最もよく使われるのはPPI(プロトンポンプ阻害薬)です。H2ブロッカーという薬剤が使われることもありますが、とくに十二指腸炎や十二指腸潰瘍において、H2ブロッカーの治療効果が乏しい症例は少なくないことが研究報告によって指摘されています。
十二指腸炎は、従来からいわれてきたストレスによる胃酸分泌の過多は主原因ではないことがわかっています。ヘリコバクター・ピロリ菌やNSAIDs薬剤などが原因で起こることが多く、生活習慣や薬剤投与で十分に治療することが可能です。胃に負担をかけすぎないよう、刺激物はできるだけ避けましょう。
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