記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
脳卒中は、脳内の一部に血液が流れなくなったり、出血したりするために起きる病気です。脳卒中を発症すると、脳の損傷が起こり、場合によっては手足や顔など、体のほかの部位に後遺症が残るリスクがあります。治療を始めるタイミングが早ければ早いほど、後遺症が残る可能性は低くなります。
脳卒中の主な症状は、ファスト(FAST:Face-Arms-Speech-Time)という言葉で覚えることができます。
顔の片側が動かなくなります。たとえばどちらか一方の口角が上がらなくなったり、笑顔ができなくなったり、片方の目の位置が下がっている可能性があったりします。
脳卒中の疑いがある人は、どちらか一方の腕の力が抜けたり、しびれたりします。また、両腕を上げ続けることができなくなったりします。
発話がスムーズに出なかったり、しどろもどろになったりします。あるいは、起きているはずなのに言葉が出てこなかったり、意味不明な言葉を発話したりすることもあります。
上記3つのうち、どれか1つでも症状が出ていることに気づいたら、すぐ救急車を呼びましょう。
体内のあらゆる臓器と同じように、脳も機能するために酸素と栄養素が必要です。酸素や栄養素は血液によって提供されるため、血液の流れがとどこおったり、止まったりすると、脳細胞が死滅しはじめます。この状態が脳に障害を与え、最悪の場合死に至る可能性を高めます。
脳卒中の主な原因は、以下の2つです。
血液が固まって酸素供給が止まってしまうため、脳卒中が発症します。
虚血性の疾患が原因で発症する脳卒中は、全体の約65%を占めています。
脳の血管が老化によって破綻した結果、脳内で出血が起こり脳卒中を発症します。
また、関連する症状として、一過性虚血発作(TIA)と呼ばれる症状もあります。症状は脳卒中とほぼ同じですが、脳への血液供給が一時的に中断されるだけなので、症状が持続するのが短い(数分から数時間程度)のが特徴です。TIAは近い将来、脳卒中を発症する危険性がある、という重要なサインなので、症状が消えたからといって安心してはいけません。必ず医師の診察を受けましょう。
また、以下のような症状や病歴がある場合、脳卒中のリスクが高くなります。
・高血圧
・高コレステロール
・心房細動
・糖尿病
脳卒中の治療は、損傷を受けた脳の部位や脳卒中を引き起こした原因などによって異なります。
脳卒中は投薬で治療するのが一般的です。治療薬の中には、血栓を予防もしくは除去するものや血圧降下剤、もしくはコレステロール値を下げる低下させるための薬などが含まれます。ただし、出血性脳卒中の場合、脳の腫瘍を治療したり、さらなる出血のリスクを低下させたりするために、手術をすることがあります。
脳卒中から回復した人は、脳が損傷したことによる後遺症が残ることがあります。このため、以前と変わらない生活を送ることができるよう、長期にわたってリハビリに取り組みます。リハビリによって元通りの状態に戻る人もいますが、多くは完全には回復せず、不自由な状態を抱えながらの生活に慣れる必要があります。
このような人の中には、日常生活の援助を受けている方もいます。たとえば、ケアワーカーが患者の家を訪問し、洗濯や掃除、衣服の着用を手伝ってくれたり、話し相手になってくれたりすることがあります。
健康的な生活を送ることで、脳卒中を発症するリスクを大幅に下げることができます。
・健康的な食事を摂る
・定期的に運動をする
・飲酒は適量にとどめる
・禁煙する
たとえば高血圧や糖尿病など、脳卒中のリスクを高める病気を患っている場合は、できるだけ正常な数値を維持するよう体調管理することが重要です。また、以前にも脳卒中を患ったり、一過性虚血性発作(TIA)を患ったことがある人は、特に体調管理に気をつけてください。
脳卒中を発症している場合、すばやく原因を特定し、適切な治療をして深刻な後遺症が残らないようにすることが重要です。周囲に「ファスト」の症状が出ている人をみかけたら、すぐに救急車を呼んでください。