記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/26 記事改定日: 2019/11/27
記事改定回数:1回
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
腸内環境を整えるのに、納豆などの発酵食品やヨーグルトは心強い味方とされていますが、過敏性腸症候群(IBS)の人はこれらの食べ物を食べると、かえって症状が悪化する恐れがあるという話があります。その理由について、以降で詳しく解説します。
下痢や便秘、腹痛などの下腹部症状をもたらす過敏性腸症候群(IBS)の原因ははっきりわかっていません。
主流とされている説としては、精神的なストレスと食生活の乱れ、腸内環境の乱れなどが挙げられます。
便秘型IBSの人のなかには、便秘解消のためにヨーグルトや納豆を多めに摂って腸内環境を整えようと考える人もいるかもしれませんね。
ただ、近年このヨーグルトや納豆の摂取が、IBSの症状を悪化させるという見解が出始めています。これはオーストラリアのモナッシュ大学で発見された「高FODMAP(フォドマップ)食」についての研究に基づくものです。
「高FODMAP(フォドマップ)食」は小腸で十分に吸収されずに大腸に入ると大腸内で発酵し、腹痛や下痢などを起こす原因になることが示唆されています。
高FODMAP食とは、下記のような食べ物のことです。
高FODMAP食品に該当するものをまず3週間やめてみて、それ以降は1週間ごとに1つ1つ高FODMAP食品を試しに摂取し、排便の状態をみてみると、本当に合わない食品も見つかりやすくなります。
なお、こうした食べ物を除いた食事は「低FODMAP食」と呼ばれ、いまでは欧米の大学病院を中心にこの食事療法が多く取り入れられています。
上記で紹介しただけでも制限が必要な食べ物がたくさん存在するので、「何にも食べられなさそう」と思われるかもしれませんが、これらに該当しない食べ物は基本的に食べても問題ありませんので、工夫が必要にはなりますが食事を楽しむことは十分できるでしょう。
例えば、お米やおそば、グルテンフリーのパスタ、ビーフン、茄子やにんじん、じゃがいも、きゅうり、ピーマン、キャベツなどは食べることができます。
また乳製品であってもバターやカマンベールチーズ、チェダーチーズなど、種類によっては摂取してOKのものも存在します。
低FODMAP食は、過敏性腸症候群の症状を緩和することが解明されつつあります。
しかし、長期間に渡って過度な食事制限を続けると腸内環境が乱れ、かえって過敏性腸症候群の症状がひどくなったり、高コレステロール血症などの生活習慣病にかかりやすくなったりすることも指摘されています。
既に治療をしている方は必ず主治医の確認を取ってから始めるようにしましょう。また、繰り返す下痢や便秘などの症状から自分で過敏性腸症候群と判断するのは危険です。
なかには大腸がんやクローン病などの炎症性腸疾患が背景にある場合もありますので、できるだけ早く医師の診断を受けるようにしましょう。
健康のためにヨーグルトや納豆を食べていたIBS患者さんにとっては、少しショッキングな記事だったかもしれませんね。
ただ、「低FODMAP食」という食事療法は近年発見されたものであり、医師の間でも賛否が別れていますので、実践する前には必ず主治医の確認をとるようにしてください。
この記事の続きはこちら