腎臓病が原因で貧血になったらどんな症状が出てくる?治療法は?

2018/11/13

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

貧血といえば鉄分不足や生理がきっかけで起こるイメージが強いですが、腎臓病が原因で貧血になったらどのような症状が起こるのでしょうか?また、どのような治療を行うのでしょうか?

腎臓病が原因の貧血「腎性貧血」とは

腎臓には様々なホルモンを分泌する働きがあり、その中にエリスロポエチンと呼ばれる赤血球の産生を促進させるホルモンがあります。しかし腎臓機能が低下すると、腎臓からのエリスロポエチンの分泌減少に伴い、赤血球を産生する働きが低下し、貧血が引き起こされます

このような貧血は腎性貧血と呼ばれており、慢性腎臓病(CKD)が進行した患者さんの多くに見られるとされています。ただし、CKD患者さんに見られる貧血の原因は腎性貧血とは限らず、鉄欠乏、炎症、尿毒症性毒素による赤血球寿命の低下なども考えられ、様々な要因が関係して生じることがわかっています。

慢性貧血になると、どんな症状が出てくるの?

体中に酸素を運搬する働きのある赤血球が減少すると慢性貧血になり、疲れやすい、動悸、息切れ、めまいなどの症状が引き起こされたり、貧血状態の全身の酸素不足を補うために心臓への負担が大きくなります。しかし、貧血の進行に伴い体がその状態に慣れてしまうと、これらの症状に気付かないこともあるため注意が必要です。
慢性腎臓病(CKD)患者さんは貧血の有無を確認するため、定期検査で行われる血液検査でヘモグロビン値を調べ、病態が悪化する前に適切な治療を受けるようにしましょう。

「腎性貧血」は、体の鉄不足によりヘモグロビンの産生が不十分となる「鉄欠乏性貧血」とは原因や治療法が異なり、鉄剤のみを摂取しても症状は改善しないため注意が必要です。

腎性貧血になったら、どうやって治療するの?

1990年に造血ホルモン剤が発売される前は、腎性貧血に効果的な治療法というものはなく、Hb値8~9g/dLほどの重度の貧血状態の生活を余儀なくされたり、定期的な輸血を必要とする患者さんも少なくありませんでした。

しかし造血ホルモン剤が発売されてからは、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を用いた薬物治療によりエリスロポエチンの分泌不足を補うことができるようになり、CKD患者さんも効果的な治療を受けることが可能になりました。
また、治療では薬物治療に加えて食事療法や鉄剤の投与なども行われます。

腎性貧血の治療を受けることにより、疲れやすい、動悸、息切れなどの症状の改善や、心臓の働きの改善ができます。また、早期に貧血治療をすることでCKDの進行を抑え末期腎不全の予防効果も期待できます。

目標のHb(ヘモグロビン)値

慢性腎臓病(CKD)患者さんの目安となる治療目標値は、ヘモグロビン値11g/dL~13g/dL
とされており、これを超える数値を示す場合は、腎性貧血治療薬の減薬や休薬を行う必要があります。

ただし、心臓や血管などに重篤な疾患が見られる患者さんや、医学的に必要と判断された患者さんの場合は、ヘモグロビン値12g/dLを超える数値を示す場合に、腎性貧血治療薬の減薬や休薬を行うことがあります。
また数値が高くなりすぎるのも問題ですが、Hb値が低すぎると貧血症状のみならず、腎機能の急速な低下が起こり透析や腎移植が早急に必要となることがあるため注意が必要です。

おわりに:腎性貧血は造血ホルモン剤による治療が可能

腎臓機能が低下すると腎臓からのエリスロポエチンの分泌減少に伴い、赤血球を産生する働きが低下し、貧血が起きやすくなります。それにより、疲れやすい、動悸、息切れ、めまいなどの症状が引き起こされたり、心臓への負担が大きくなります。治療では、赤血球造血刺激因子製剤(ESA)を用いた薬物治療に加えて、食事療法や鉄剤の投与などを行います。

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