子供のHSCは治すべき? 子育てのポイントは?

2018/11/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

友達が叱られているのを見ると自分もダメージを受け、疲れ果ててしまうこともある「HSC」の子供。繊細なために学校生活で生きづらさを感じることも多いですが、HSCは治すべきなのでしょうか。また、HSCの子供に対しては、どのように子育てをしていくことが大切なのでしょうか。

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子供のHSCは、病気や障害ではない

HSC」とはHighly Sensitive Childの頭文字で、とても敏感な子供、繊細で感受性が豊かな子供のことです。アメリカの心理学者・エレイン=アーロン博士が名づけた概念になります。

このHSCを発達障害と混同している方もいるようですが、HSCは障害や病気ではなく、その子の生まれもった気質・特性です。なので治す必要はありません。
むしろHSCの子供は、感受性が高いばかりに外的刺激を受けやすく、傷つき疲れやすいという特徴をもちます。それを「そんなにくよくよするな」などと否定し、無理やり治そうとしてしまうと、それすらもダメージになる恐れがあります。必要なのは、保護者の方を含めた周囲からの理解、そして適切なアプローチです。

HSCは「毒親」が原因なの?

HSCはその子が生まれ持った気質ではありますが、いわゆる「毒親(毒と比喩されるような悪影響を子供に及ぼす親)」によって否定的な言動を浴び続けると、生きづらさが強まってしまう可能性はあります。

HSCの子供はもともと、目の前で起きた状況をじっくり観察し、それを過去の経験と照らし合わせ、安全であるかどうかを徹底的に検証した上で行動するという特性をもちます。また、感受性が高いためにさまざまなストレス反応(腹痛やじんましん、すぐ泣くなど)が出たり、また学校での人間関係に強いストレスを感じ、不適応を起こしてしまうこともあります。

それに対して保護者の方が「精神的に弱すぎると、この先やっていけないよ」「学校を休むとおちこぼれるよ」などと否定的な言葉をかけてしまうと、HSCの子供は強い自己否定感を抱くようになります。その結果、引っ込み思案で臆病な子供になってしまう可能性はあるでしょう。

HSCの子育てのポイント

「すぐに傷つく弱い子」などとHSCをネガティブに捉えてしまう保護者の方もいますが、HSCの子供はほかの子は気づかないちょっとした機微に気づく、優しい心を持った子であり、危険予知にも優れています。そういった素晴らしい感性をもったお子さんであると、まずは捉え方を変えるところからスタートです。

そしてHSCの子育てで非常に重要なのが、「本人の感じ方を尊重すること」。少し大きな音が鳴った、相手の表情が少し曇ったなど、そういったわずかな変化に対してもHSCの子は気づき、反応します。保護者の方にとっては小さなことに思えるかもしれませんが、本人にとっては決して小さなことではありません。「そんな小さなことで…」と決めつけず、「びっくりしたんだね」「怖かったんだね」と気持ちを受け入れてあげましょう。

そして本人の気質に合わせ、その子らしさを伸ばしていける家庭環境を整えていってください。教育方針や就職に関しても、一般的な基準にとらわれず、子供の個性が生きるような環境を選択させてあげるようにしましょう。無理強いせず、そっと背中を押すという姿勢がポイントです。

おわりに:HSCならではの長所を伸ばしてあげよう

HSCの子供は生まれつき感受性が高いので、保護者の方が否定するような言動を浴びせてしまうと、傷つき、悪い影響を与えてしまう恐れがあります。HSCという特性がどんなものかよく理解し、その子の感性を信じて、後ろから優しく見守ってあげましょう。

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